魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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魔法と曲芸がコラボした芸をどうぞ!!

というと、かなりの演出をしないと…。上手く表現できるかな?


魔法の魅力

 

 

 

 

 ホームズの持ってきた幸運により、ROSEみんなは大人気曲芸一座”カバルレ・サマダ大サーカス”の特別席で迫る開演を心待ちしていた。

 

 曲芸一座のパフォーマンスが見れるテントの中の会場は既に人で埋め尽くされていた。会場は階段状に設置された客席がぐるっと円形の形をしており、その中央に開かれた場所が曲芸一座がパフォーマンスするステージ、舞台となっている。その舞台での曲芸を一番綺麗に、近くで見れる特別席にROSEみんなが座っていた。

 

 来るまでの怒涛の戦闘や掃除で今日は地獄を見たため、最後くらいは最高のショーを見て穏やかに眠りにつくのだとなぜか意義込む。しかし元を垂らせば、その原因はみんなにあるとは思うけどね。

 ホームズも本当の事を話せば、あの争奪戦は起きなかったかもしれない。あの時、偶然にも一回のルーレットで当てたと鼻高々に言っていたけど、本当は当たるまで何回もルーレットを回したのだ。後ろのルーレット待ちの長蛇の列ができ、待ち人の不満や罵声を受けてもなお、回し続けた。そしてようやく手に入れた物だった。

 そうした理由もくろちゃん達と話していた曲芸一座にみんなで一緒に見に行こうって言っていた約束を叶えるため…。

 

 だから、気恥ずかしいからと嘘つかなくてもよかったのに…!!でも、みんなのためにいつも一肌脱いでくれるホームズだからね。ホームズは言う気はないみたいだし、寝た子を起こすっていうのも悪いから黙っておこう。

 

 

 話が逸れてしまったが、その甲斐あって、開演時間になり、今まで客席を照らしていたライトが消えた。そして、ぼんやりと光る中央のステージの光だけは暗闇になった会場で客席から無数のほんのり温かみのある小さな光が飛び上がり、暗闇の中を華麗に舞いながら、中央のステージに向かう半数の光が集結していき、光のオプシェを作った時、弾けた光の中からこの曲芸一座の団長であるカバルレ・サマダがお辞儀をして現れた。弾けた光玉は客席側にある天井スタンドに真っ直ぐと吸い込まれるように入っていき、灯りをともす。

 

 

 「今宵お集まりくださいました紳士淑女の皆様、ご来場誠にありがとうございます。皆様はテレビ等で御存じかもしれませんが、『実は私…、テレビは見ないんです!!』という方がいるかもしれないので、自己紹介させていただきます。

 私、この曲芸一座”カバレル・サマダ大サーカス”の団長、カバレル・サマダと申します。一座の名称に自分の名を入れているではないかと突っ込まれると恥ずかしい限りです。

 ですが、一座に自分の名を付けたくなるほど、これから皆様に魅せるショーに自信がるのです!!

 その自信を今から証明いたしますので、どうぞ最後までご堪能ください!」

 

 

 団長の前座の挨拶で観客の心を手繰り寄せる。

 

 

 「団長、中々の策士だな。何気ない仕草と言葉で観客に期待させるとは。」

 

 

 「さてさて、どんなのが出るのかな!楽しみだな~!!」

 

 

 みんなもうんうんと頷いて、団長が被る帽子から鳥型CADロボットが現れ、軽く団長と漫才をして、パッと消えた。そしてその後に出てきた曲芸魔法師や道化魔法師が物凄い演出込みでサーカスを盛り上げ、観客はその魅力に取り込まれ、喝采を投げる。

 

 

 

 

 その喝采はサーカスが終わっても熱気を帯び、興奮した観客はアンコールを何度もするくらい。そしてナイトショーが終わって、観客が帰路につくとき、皆々が先程の曲芸の話で盛り上がりながら歩き出していた。それはROSEのみんなも例外ではなく…。

 

 

 「もう最高!!特に炎獣使いのドレーナさんはもう感動的なパフォーマンスだったし、虜になっちゃった!!なんだって、炎で猛獣を作り出して、ループを潜り抜けてたり、踊りだしたりするもんね!!それにそれに!!炎獣の中でも一際目立ってた、あれはエースだね!最後の締めくくりに出した火炎放射での花火は迫力満点で、凄かった!!」

 

 

 「いや~、俺はその後に出てきた水バルーンのウォンとターン双子の水中曲芸がよかったな~。双子だから息ぴったりとあっててさ。テント中にたくさんの水玉作ってさ~。あれは振動・収束系魔法かな?まぁ、とにかくその水玉を行き来したり、水で風船芸を披露するみたいに観客の要望を即席の歌付きで作り出すもんな。あれで子供たちのハートはゲットだぜ!!他にも水玉を転がしながらその上を歩いて、水玉でジャグリングするしよ!!」

 

 

 「僕は観客が瞬間移動した後に、整形したんじゃないかってくらいのメイクと衣装で現れた時はビックリした。」

 

 

 「私は全ての構成に驚きと感心に満ち溢れたよ。最初から最後までがストーリ仕立てになっていて、最後は観客をも参加させて一体感を作り出すあの雰囲気作りに見習わないとって思ったね。」

 

 

 みんな自分の感想を言い合って魔法にも色々な使い方があり、人々を幸せにすることもできると改めて感じ、魔法の魅力を実感したのだった。

 

 しかし、そんなワイワイできる時は終わりを迎える。なぜなら・・・

 

 

 

 

 

 「だ、だずけて~~~~!!!」

 

 

 ギルドに戻る道を歩くみんなは子供の助けを求める声を聞き、辺りを見渡す。そして、正面から足音がどんどん大きくなってきて、全員目を向けると、曲がり角からまだ幼い男の子が現れ、こっちに向かってくる。血相を変えて走り寄ってくる子供を胸の中で抱きしめる。ミナホはしゃがんで、男の子の様子を観察する。他のみんなは男の子が現れた曲がり角を凝視し、CADに手を置き、すぐに迎撃できるように構える。

 

 

 「僕?大丈夫?何かあったか話せる?」

 

 

 声のトーンを柔らかくして、優しく微笑み、男の子を落ち着かせて助けを求める理由を尋ねる。すると、男の子から衝撃的発言を聞くとともに、曲がり角から人影が現れる。

 現れたのは30代半ばくらいの顎髭が少し生えていて、痩せこげた男だった。その男の手には包丁が握られている。しかし、目は生気がない。

 

 

 「ぼく……、ぼく!!ぼくのパパが!!おかしくなっちゃった!!

  ぼくを…、こ、こ、こ、こ、殺すって!!」

 

 

 

 ROSEのみんなは突然起こったこの事態にどう対処するか躊躇い、額に汗をにぎみ出すのだった。





楽しい事もすぐに終わって、巻き込まれる…。これはお決まりになってるね。

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