魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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いや、まさかの流れだね。


うちでもびっくりだもの。


突然の別れ

 

 

 

 

 殺到の仕事の依頼がいまだに続くROSEは前代未聞の慌ただしさがギルド内で起こっていた。

 

 

 「ちょっと~!!ホムラっち!! 指名の分以外は他のギルドに回すって言ってたよね!?なのに何でこんなに仕事が来ちゃうわけ~!?これじゃ、イベントどころか魔法試合でも出られないよ~。」

 

 

 仕事の依頼を片付けながら、愚痴るミナホはホムラに抗議する。

 

 

 「私だって何でこうなるのかわからないよ!指名以外の依頼は他に回したら、それが今度は指名付きで舞い戻ってきたんだよ。こうなると、下手に断る事が出来ないし…。私だって困っているんだってば。」

 

 

 目の下にクマを作り、反論するホムラ。ギルドのみんなも同じく、目の下にクマを作り、ふらふらしながら歩いたり、仕事の書類管理に追われたりで手は動きながらも、誰にでもない愚痴をブツブツと念仏のように呟いて、気分発散していた。

 

 だから、外から帰ってきたマサユキはギルド内の異様な光景に思わずギョッと背筋を震えさせ、無意識というか反射的に後退りしてしまうほどだった。

 

 

 「みんな、一旦休憩しよう!!美味しいケーキを買ってきたから!!」

 

 

 マサユキの何気なく行ったこの言葉はギルドのみんなの全意識を向かせた。そしてマサユキはこの後、後悔する事になる。

 

 何も食べずに、しかも一睡にせずに完徹が続いたみんなはマサユキが手に持つケーキに視線を固定させ、ゾンビのように立ち上がり、数歩歩いたかと思ったら、勢いよくケーキに飛びかかる。目が異様なほど光って不気味に笑うみんなが一斉に飛びかかってきたことでマサユキは踏みつけされ、殴られて、飛ばされてと恐怖に駆られる事になったからだ。

 

 

 「はぁ~!!もう、最高っ!!久しぶりに食べた!!」

 

 

 「このケーキ、今評判のクリーミーデンジャラスケーキだよね!?」

 

 

 「なんだか、そこのお店のネーミングセンスを疑いたくなるね…。」

 

 

 「でも、糖分取ったからか、頭痛いの、治った気がする!!」

 

 

 「ああ、イライラしている時とか甘い物摂取したら、リフレッシュするっていうもんね~!」

 

 

 「おかげで随分気分いいよね!!?」

 

 

 「これも、マサユキのお蔭だね、ありがとう~、相談役~!!…あれ?」

 

 

 ケーキを食べ終わり、満足になったみんなはマサユキにお礼を言おうとしたら、マサユキは床に倒れて、気を失っていた。

 

 

 「ホント、困った相談役だな~。こんなところで寝なくてもいいのに。」

 

 

 「そうだな。寝転がるなら、外でしろ。」

 

 

 暁彰は布団で気を失っているマサユキを簀巻きにし、外に投げ飛ばした。

 

 

 「よし、これで邪魔な荷物はなくなったな。」

 

 

 「……ごゆっくりと寝てください。」

 

 

 みんなでマサユキに手を合わせて合掌する。

 マサユキが起きていたら、『死んでないから!!てかこの簀巻きを解いてくれ~~!!そして私にもケーキを食わせろ~~!!』とただ捏ねるだろう。そして、ほっておくと、芋虫のようにギルド内に入ってくるだろうが。

 

 

 

 そしてみんなが寝静まった深夜、大きな荷物を持ってギルドを後にしようとするマサユキの姿があった。

 マサユキはモニターに置手紙を残し、悲しそうに微笑みながら、玄関に向かって歩き出した。そして玄関のドアを開けようと手を翳した時だった。

 

 

 

 「………もう行くのか?マサユキ。」

 

 

 「出るにはタイミング悪いよ~。」

 

 

 「何もこんな時間に行かなくても…、ふはぁぁ~。ねむっ…。」

 

 

 「あれ?起こしちゃった?ごめん、暁彰、huka、ホームズ。」

 

 

 「起こすも何も、俺達はずっと起きてたぜ。マサユキを見送るためにな。ふはああぁぁ~。」

 

 

 あくびをして、眠さを必死に堪えるホームズをマサユキと暁彰、hukaは含み笑いする。

 そして真剣な顔に皆が戻り、マサユキに次々と見舞い品を渡す。

 

 

 「みんな…。ありがとう。でもさ、寂しいから行かないでって言ってくれないの~!」

 

 

 「……確かにマサユキがいなくなったら面白味がなくなるけどさ。」

 

 

 「そうそう、バカを正す事も出来ないし。」

 

 

 「……それって酷くない?」

 

 

 「褒め言葉だ。ありがたく受け取っておけ。…別にギルドにいなくても俺達の仲間であることには変わらない。ROSEはそういうものだろ?

  あと、マサユキは必要だから出ていくんだ。」

 

 

 拗ね顔していたマサユキは暁彰の言葉でふざけていた雰囲気を元に戻す。

 

 

 「みんなには言わないでほしい。」

 

 

 「わかってるよ。」

 

 

 「行ってら!!」

 

 

 「早く行けっ!! ……身体には気を付けろよ。」

 

 

 激励?を送り、マサユキを見送る三人の顔には泣くものか!と涙を堪える表情だった。

 そんな三人の見送りを受け、マサユキは寝静まり、人の気配もない暗闇の帝都の中へ消えていき、ROSEを去っていった。

 

 

 

 

 

 

 翌日になり、みんなは久しぶりに寝たため、昼になっても起きてこず、夕方になってから背伸びをしたりして清々しく起きてきた。

 

 そして、マサユキが残した置手紙と暁彰の説明でマサユキの不在を知らせる。その置手紙には次のように書かれていた。

 

 

 

 『みんなの仕事全部、いただいていく!! まぁ、消化するのはいつになるか分からないけど、地道に頑張ってくるからっ!!

  私がいなくて寂しいかもしれないけど、大丈夫。何かあったら大声で呼んでくれっ!!

  カメラを持って、這って帰るから!! ●REC

                         マサユキ      』

 

 

 それを読んだみんなはマサユキの残した置手紙をビリビリに破いて、加熱系魔法で一気に燃やした。

 

 





マサユキの扱い、こんなんでごめん。

でも、みんなの盛り上げ役のマサユキだからと話を書くと、こうなってしまう。


マサユキ「は!!そういえば、私が買ってきたケーキ、まだ食べてない!!今からでも食べに帰ろうか、いやいや、既に出てしまったし戻れん!!どうしようか!!」


 ……店に行けばいいじゃん!!

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