達也たちは沖縄での任務を終え、ほのかと雫と一緒に久米島遊覧を満喫している中、話題が今年の新入生の話になった。
「今年の総代は、また女の子なんだよね?」
「そうよ。」
「十師族なんだっけ?」
「ええ。三矢詩奈さん。三矢家の末の御嬢さんよ。まだお会いしたことは無いのだけど。」
「そうなんだ。だったら猶更、あまりゆっくりはしていられないね。」
「そうね。残念だけど。」
深雪がそう言った時、深雪だけでなくほのかも気落ちしたお顔をしていた。ほのかも生徒会役員だから、入学式の準備に取り掛かる必要があるからだ。
「……とにかく、こっちにいる間はのんびりしましょう!海は少し早いですけど、私達が泊まっているホテルのプールで泳ぎませんか?結構広いんですよ!」
気を取り直したほのかが、達也に迫っている。
それを見ている深雪の表情から少し余裕がなくなってきた、と深雪と話をしていた雫は思った。
そして、ほのかに迫られている達也は今回の旅行でかなり迫ってくるほのかの対処にどう向き合うべきが未だに思案しながら付き合うのだった。
それから深雪とほのかの達也の取り合いが始まる訳だが、この時深雪もほのかも今年は更に波乱な新学期を迎えるとは思わなかった。
★★★
一方、達也たちが沖縄で遊覧を楽しんでいる頃、神奈川県厚木に屋敷を構える十師族の一人、三矢家では達也たちの話題にもなった少女、三矢詩奈が先程届いた荷物を開け、満面の笑みを浮かべていた。
「見て見て見て見て!! やっと届いたわ!第一高校の制服~~!!…どう?」
「そうですか、俺も一応届きましたけどね。お嬢様と同じ第一高校の制服が。」
「あんたの事はどうでもいいのよ!あんたは私の使用人なんだから!それよりも主人が”どう?”って聞いてるんだから、答えてよ~~!!」
詩奈は傍に控えていた同じ年齢層である使用人に届いた荷物から制服を取りだし、その制服を自分の身体に当てて、似合うかどうか問いかける。それをざっと見た使用人の少年は、一回だけ頷くと、返答する。
「いいんじゃないですか? ガサツな部分があるお嬢様を清楚に見せてくれる逸品だと思います。」
「ちょっと!!何よ、それ~~!!生意気な口をきくんじゃないわよ!」
「本当のことを言っているだけですが、何か?」
「その減らず口が嫌なのよ~~!! もう、何でこいつが私の使用人なのよ~~!!幼馴染じゃなかったら、今頃クビよ~~!!」
「その幼馴染として忠告しておきますけど、学校ではお淑やかにしておいた方がいいと思いますよ?少なくとも、あの人の前では…。」
急に少年が意味深な言葉を口にしたかと思ったら、詩奈は顔を真っ赤にして、頭から湯気を出す。
「う……、分かってるわよ…。あんたなんかに言われなくても、そのつもり!
……こんな事で嫌われたり、距離を置かれたりされるのは嫌だもの!だから…、くれぐれも学校では私に生意気な言動は振ってこないでよね!」
「それはどうでしょうかね? 俺、基本お嬢様の近くにいますんで。」
「しないでよね…?」
「…………善処します。」
詩奈が魔法を発動しようとCADに手を翳したのをみて、慌てて言葉を慎む。反論しなくなった使用人を見て、邪魔はしてこないと悟った詩奈は会いたくてしょうがない人物を思い浮かべ、スキップする。
「ふふふ♥ ようやく私も一高生…!この日をどれだけ待ち望んできた事か…!
早く、早く…、逢いたいですわ~!
……………司波、達也様~~♥」
恋焦がれる主人の後姿をポーカーフェイスで見つめる少年は、しばらく夢から覚めないと踏んで、詩奈の私室を後にするのだった。
はい…、新入生総代の詩奈ちゃんを達也LOVEという設定にしてみました。そして詩奈の幼馴染を使用人にして、二人で入学するという、原作沿いの設定を知っている限りで披露してみました!