魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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さぁ吐いちまえよ~! 田舎の母ちゃんが泣いてるぞ~。

 (ライト攻撃)


置き土産

 

 

 

 

 

 「黒幕ですか?いきなりですね~。」

 

 

 「お前だけで計画した物ではないはずだ。そしてお前より格がある奴だろう?」

 

 

 「………それを言ったとして私にはなんも得がありませんね~。拷問されたとしても私は拷問するのも好きですが、されるのも好きなんです。そう簡単に口は割りませんよ。」

 

 

 涼しい顔で話をはぐらかそうとするカバリンにマサユキが視線で合図し、ホムラは頷いてCADを操作する。すると、縛り上げているロープから雷撃が放たれ、カバリンは

骨の髄まで雷撃を浴びた。

 

 

 「もう一度だけ聞くから、耳の穴を広げてよお~く聞いとけっ!!

  黒幕は誰だっ!!」

 

 

 マサユキは憤りを隠そうとせずにカバリンに黒幕の正体を問いただす。

 

 しかし、カバリンは答えようとはしない。むしろ無駄だと言わんばかりにずっと笑っている。

 

 

 「あなたもおかしな人ですよ~。私が黒幕の事を言わないなんてわかっているはずです。あなただけでなく、そこのお嬢様たち以外の皆全員。

  私の事をずっと調べていたあなた達ならすでに見当がついているのでは?

  そして私もまた簡単に斬り落とされる身であると。

  それを分かった上でなぜこんな無駄な事をするのか私には理解できませんね~。」

 

 

 カバリンの言葉にくろちゃんとちゃにゃんは驚く。自分たち以外のROSEメンバー全員がこの事を知っていた!?

 

 その事実に驚いていると、マサユキがカバリンに更に雷撃を浴びさせる。

 

 

 「その通りだよ。お前は黒幕を吐かない。だが、今までお前は失態を繰り返している。そんなお前に何も対策を取らないでいるはずがない。少なくとも、お前の動きを監視する者がどこかに潜んでいるはずだ。そいつを使って黒幕を誘き出せればそれで今はいい。」

 

 

 「おやおや、私は囮ですか? それは考えましたね~。

  ですが、それは苦策だと思いますよ?」

 

 

 「別にいい。ある程度の事は把握しているつもりだし、覚悟はしている。」

 

 

 「そうですか…。なら、私も最高の置き土産を残してあげましょう。」

 

 

 すると、ちゃにゃんの方を見て、にんまりと微笑む。ちゃにゃんは本能的に感じた。

 聞いてはいけないと頭が警鐘を鳴らしていた。

 

 

 「私は今まで実験体を使って様々な研究をしてましてね~。中には巨大化だったり、モンスター化だったりと積み重ねていきました。

  ですがある時、その実験体の一つが逃げ出しましてね。回収しようとしたところを倒されてしまったんですよ~。あなた方に。」

 

 

 「だめだっ!!聞いてはいけないっ!!」

 

 

 暁彰がちゃにゃんの耳を塞ぐが、カバリンの魔法なのか耳を塞いでも頭の奥に言葉が伝わってくる。

 

 

 「実験していけば、自我は消えていくんですけど、どうやら自我を失わずに身げ出したみたいです。ですがやはり実験のために投薬していた薬で身体を持たせていたんで、日が経つにつれ、自我も徐々に消えていったようです。

  まぁ、止めを刺され、ほっとしたでしょう。最期にあなたに会えて本望でしょう!

  ガハハハハハハハハハハハ!!!!!」

 

 

 ちゃにゃんは涙を流した。カバリンの意味は理解できなかったが、なぜか意識の奥では何を言っているのか直感で感じていた。

 足はがくがくと震え、立っていられなくなった。地面に座り込んだちゃにゃんにくろちゃんが駆け寄る。

 

 

 「ええ、そうですよ? あなたが考えている通りの事です。

  それをこの方々は知っています。

  じっくり聞いてみる事でしょう。ふふふふふ。

  では私は今度こそ退散させていただきます。」

 

 

 「よくもっ!! 逃がさないぞっ!!」

 

 

 「動けないように縛りつけているから逃げられないわよっ!!」

 

 

 「それはどうでしょうか?」

 

 

 そういうと、障壁魔法の中で雷撃ロープに縛りつけられているカバリンにラグが生じる。そして、そこにいたのはカバリンではなく、指名手配されていた強盗犯だった。

 

 

 「これはっ!! まさか『仮装行列』!!」

 

 

 「改良版みたいね!」

 

 

 突如として変化した姿に驚愕しながら辺りを見回すと、空中で直立し、見下ろすカバリンがいた。

 

 

 「それでは、今日のショーはとてもよかったです! またの機会ではぜひ共演いたしましょう!!」

 

 

 そういうと、紳士の帽子を取り、中に手を入れると玉が出てきて、その玉が破裂し、カバリンを煙で包む。

 

 ホムラが突風で煙を晴らすが、そこにはもうカバリンの姿は消えていた。

 

 

 「くそっ! 逃がしたか…!」

 

 

 「これでいよいよ始まった訳だね。」

 

 

 マサユキとホムラが会話しながら、くろちゃん達の元へやってきた。

 

 

 そして崩れ座るちゃにゃんに手を貸してマサユキは苦笑して言う。

 

 

 「…さぁ、帰ろうか。 ROSEへ。」

 

 

 その言葉にくろちゃんは頷くが、ちゃにゃんは俯いたまま立ち、暁彰に背負ってもらったまま、ギルドへと帰る。

 

 

 

 

 

 

 こうして、楽しかったはずの帝国開国祭が一変し、シンバの裏切りと死、カバリンの爆弾発言によってROSEに火種を蒔く事になった。

 

 

 





こら逃げるな!バカリ~~~ン!!

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