魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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うちはエリカの猫バージョンも女豹バージョンも好きですな~。


女豹、現る。

 

 

 

 

 

 

 教室に緊張が走る中、エリカが千秋に向かって歩き出し、二人の間に差が埋まっていく。その一歩ずつにエリカの苛立ちと怒りが強くなっている感覚を傍観者として今この場を見守っている(下手に自分達が出ていけば巻き添えになるため。)クラスメイト達は、恐怖も感じながらハラハラしていた。

 千秋も意固地が止められずに席を立って、正面からエリカを迎え撃とうとしている。しかし顔や身体に震えがあり、無理をしているのは明らかだ。

 どう見ても、勝敗は既に決まっているのは分かりきっている。それなのにこの場に居合わせているクラスメイト全員何もしないし、言わない。いや、言えないのだ。この状況を止めるだけの時間はあるはずなのに、エリカの発する怒気や邪魔する事を許さないという空気が直接肌で感じるくらいの勢いに気圧されて、割りこめないのだ。

 

 その中で唯一気圧されずにいる人物である達也にクラスメイト達が視線で仲介に入ってほしいと訴える。二人が今にも決闘とも言える空気で対峙する理由の内に、達也も入っているのだから。

 

 しかし、達也はクラスメイト達の視線を一身に受けている事も知っているが、エリカを止めようともしない。寧ろ傍観者になる事を徹底している姿勢を見せている。足を組んで、エリカの背中を見届けている。完全に臨みが消え、落ち込むクラスメイト達を見て、達也はポーカーフェイスの裏で彼らの行動に訝しむ。達也にとっては、クラスメイト達が自分に助けを求めてきた事が理解に乏しかった。そもそも本来放課後のこの時間帯は部活動なり、図書館で勉強するなりするために、教室はもぬけの殻状態になるのだが、なぜか今日はほぼ全員残っている。この後は授業もない。自らの意志でなぜか教室に残っているのだ。なら、この場に居合わせてしまったからと言って自分に助けを求めてくるくらいなら、場所を移せばいいのではないか?という思考が頭に過る。だが、そんな事より、エリカの鋭くなった目と迫力に興味を持った達也は、今のエリカをもっと見てみたいと思い、止めずに流れを見守る方向で決めたのであった。

 一方で、レオは呆れ顔を作りながらも、気持ち的にはエリカが喧嘩を買おうとする訳も分かるので、達也と同様に傍観者になる事を選択する。美月は、エリカと千秋のこのやり取りも見てきているので、もう慣れてきたが、達也達が何もしない事で、完全に止めるタイミングを見逃し、無事に蹴りがつく事を祈るように、手を組んで見守るのだった。

 

 

 教室内にいる生徒達の視線を浴びるエリカは気にせず、千秋を見返す。だが、千秋は元々陰湿な性格のため、注目される事に慣れていない。視線が気になって、目が度々周りのクラスメイト達の方を向くが、後に引く事は出来ない。千秋は自分に喝を入れ、(というより意地になって?)エリカとついに対峙する。

 

 

 「それで? 何か用なら話聞くわよ? ……ただしちゃんと考えて言いなさい。」

 

 

 口調も声色もいつものお気軽なからかうようなものではなく、獲物を見据え、真っ直ぐに標的をロックオンにした剣士としてのエリカがそこにいた。いつもは猫のようなマイペースなエリカを傍から見ていた千秋は、明らかに学校では見せないエリカの本性を垣間見たような気になり、思わず心の中で自分に突っかかった。

 

 

 (め、女豹が出た…! 怖……くないんだから!こんな女!!)

 

 

 




千秋、大丈夫かよって突っ込みたくなる自分がいる…。

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