魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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これが目に入ったら、達也もたじろくわ~


予想外の遭遇

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 

 「それでお兄様はお受けになったのですか?」

 

 

 「ああ、だから先に俺は上がらせてもらう。終わる頃にまた迎えに来るから。」

 

 

 「そうですか…、畏まりました。お勤め頑張ってくださいね、お兄様。」

 

 

 「いや、そんなに大層な事ではないぞ?ただエリカ達の勉強を見てやるだけだ。」

 

 

 「そんな事はありません! お兄様に勉強を教えてもらえるなんて贅沢な一時です!お兄様に教えてもらえるだけでどれだけ身に入るか…!」

 

 

 「そうです!達也さんに私も教えてもらい……、筆記試験ダントツトップの達也さんに教えてもらえれば怖いものなしですよ!」

 

 

 「二人とも落ち着け。泉美が驚いているぞ。」

 

 

 「い、いえ私は大丈夫ですので。」

 

 

 ここは生徒会室で、まさに今明日に控えた九校戦出場選手の割り出しとリストを作成している最中だった。その中で全く関係ない話をしていたわけだが、全員手を止めずに会話していた。ただ興奮して立ち上がって思いを訴えた深雪とほのかに新メンバーの泉美の身体が跳ねたのは根を詰めて作業していた他のメンバーのいい気分転換にもなったので、目に瞑るとする。だが、達也的にはこの後、泉美がこっそりと自分に嫉妬の眼差しを向けて来られたので、今のどこにそんな要素があったというのか…、疑問に思うのだったが。

 

 そんな考えも浮かんだが、深雪に事情を言っておいたので、終わり次第教室に戻れるようにいつもの倍ほどに控えておきながらもタイピングスピードを上げて、割り出しされた選手候補のデータを事細かくまとめていく。そうして完成したのは、生徒会業務を始めてまだ一時間も経たないうちだった。

 完成した資料を生徒会長であるあずさのデスク端末に送信し、チェックを受けるため、あずさの元へ歩く。その姿を目にしたあずさは、小動物のように若干怯えた仕草をするが、そばにいた五十里に視線で励まされ、立ち直る。それを見た達也は、苦笑したくなるのを堪えるのであった。

 

 

 「会長、頼まれていたデータが出来上がりましたので、チェックをお願いします。」

 

 

 「は、はい。…司波君が全てしても構わないんですよ?」

 

 

 あずさは仕事を投げ飛ばしているつもりはなく、ただ達也が作ったのなら自分がチェックしなくても問題ないのでは?と思っているのだ。

 しかし、達也はそうは思わない。明日は部活連と合同で九校戦出場選手の選出会議がある。それには選手候補としてあげられている生徒の事をある程度は知っておいた方が発言力も説得力も高まるだろう。自分一人が知っていればいいというものではない。特に生徒会長であるあずさが会議を動かしていく以上、それなりに目を通してもらっていた方が達也自身も正直有難いのだ。

 

 

 「いえ、会長にチェックをお願いします。それでは本日は失礼いたします。」

 

 

 「うん、今日もお疲れ様。司波君。」

 

 

 あずさと五十里に頼まれて、仕事量が終われば、早く帰る事が出来る達也は、本来の高校ライフを満喫できることができるため、大賛成だ。明日には大掛かりな会議に達也自身も参加しないといけないのだが、ようやく自分が思い描いた学校生活を送れるのはやはり達也も嬉しかった。まぁ、今日はエリカ達に勉強を教える事になっているが。

 

 

 深雪と別れ、生徒会室を後にした達也は、自分の教室へと戻る。教室から離れてちょうど一時間になろうとしているのを情報端末で確認し、達也は戻るにはちょうどいい頃合いだと思った。達也には苦ではないが、長時間の勉強は一般的な人間には酷なものらしく、逆に身に入らないという事を友人達の会話から聞かされていた。最近は特に達也も友人達との感覚のズレを認識される事があり、その度に「そういうものなのか?」と考える様になったので、定期的に休憩もとりつつ成果のある教え方をしようと脳内で計画を練るのだった。

 

 そうして計画を練り終わるのと同時に教室に辿り着いた達也は、待っているであろう友人達に声を掛けようと扉を開けようとした所で、立ち止まる。なぜなら扉の向こうから友人達以外の気配も多数感じ取れるからだ。

 

 

 (なんだ?なぜこんなに人が残っているんだ?今頃なら普段は誰もいない筈なんだが?)

 

 

 訝しく思うもののいつまでも廊下で立ち尽くしているのもおかしいと気づいた達也は、浮かんだ疑問をとにかく頭の隅に置き、教室の扉を開ける。するとそこにはまだクラスメイト達が過半数残っている事が判明したのだった。クラスメイト達も達也が戻ったのを顔を向けて確認し、何やら他のクラスメイトとこそこそ話し始める。

 

 いつもの違う予想外の遭遇に状況を呑み込めない達也。

 

 

 達也の頭の中では今、?が過っているのであった。

 

 




もういないと思っていた人達がしばらくして戻ってみたらまだいるって状況に遭遇すると、「え?」ってなるよね?

うちはまさにこの状況に遭遇した時、頭の中で「え?なんか集まりとかあったっけ?」って思ったな~。

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