魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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さてさて、学生ライフは過ごせるんだろうか。


達也先生、教えて!!

 

 

 

 

 

 今日の授業はすべて終わり、達也のクラスの教室だけでなく、他の教室からも授業からの解放感からか、放課後の賑やかさを作りだしてた。

 昔のように担任教師が授業後に明日の連絡等の終礼時間もなく、授業が終われば各自で終われる為、早々に部活に赴いたり、友人と他愛無い話をして盛り上がったり…という光景が広がっていた。

 

 その中で達也は自分の席から一歩も立ち上がる事なく、キーボードの上に指を走らせながら、膨大な数列が流れる端末の画面を真剣に見て、作業していた。それと同時に生徒会室外でも執り行える事務処理をてきぱきとこなしていた。見る限り、もうその姿は掛け持ちしている仕事に没頭している昔のサラリーマンと言われた社会人のようだった。

 それを隣で同じく自分の席に座っている美月がオドオドした表情で見守っていた。

 

 そこに窓を開け、元気良いと言っても過言ではない勢いで身を乗り出して、満面の笑みを達也に向けて、現れたのは、エリカだった。その少し距離を空けて窓枠に肘を置いて顔を覗かせているのは、レオだった。

 

 

 「達也君、相変わらず早いね~。何をしているの?」

 

 

 「簡単な事務作業だ。別に大したことではない。」

 

 

 「……そう見えないんだけど?それって、九校戦のデータじゃない?」

 

 

 「ああ、そろそろ九校戦の準備に取り掛からないといけないからな。選手決めする前に各競技に適応した選手をするための好条件を割り出している段階だ。これはそのための各競技のルールや過去のデータを見ているだけだ。」

 

 

 ただ資料を見ているだけだから話しかけてきても問題ないという顔で、画面に視線を固定したまま、そう回答する達也にレオもエリカも呆れ顔になる。二人とも過去何年ものデータを遡って、高速で文字を流し、速読し続けている達也の返答から、どこが問題ないんだと突っ込みたいが、達也に突っ込みを入れるなんて真似をするにはかなりの勇気が必要なため、自分の顔に表れたのだ。例え突っ込んだとしても、達也には勝てないと理解しているため…。

 そんな二人の空気を悟った美月は、話を切り出す。

 

 

 「あ、それでエリカちゃん。なにか話があるんじゃない? よかったら聞きますよ?」

 

 

 「あ、忘れるところだったわ~。ありがとう、美月。え~っとね、達也君に頼みがあるんだけど…。」

 

 

 「俺にか?美月ではなく?」

 

 

 ちょうどきりの良い所で終わった達也は、情報端末を閉じ、窓枠から乗り出しているエリカに顔を向ける。達也としては美月の付添でいたつもりだったので、第三者の面持ちがあった。

 エリカとしてはあの時、美月ではなく達也に言いたい事があったのだが、どうにも言い出しにくかったため、遠まわしに放課後残っていてほしいと言ったのだった。それを美月もなんとなくわかったため、チャイムが鳴り、授業が終わった後、生徒会室に行く前に深雪を迎えに行っていて、今日も向かおうとしていた達也を呼び止めておいたのだった。

 

 

 「う、うん…、そう、達也君にお願いがあるんだけど。」

 

 

 「何だ、エリカ?」

 

 

 「…達也君、私にも勉強教えて~!!」

 

 

 「あ、ずるいぜ、それ~!」

 

 

 「…………それだけか?」

 

 

 「何、達也君?私これでも結構本気なんだけど?」

 

 

 「いや、エリカなら直球で言ってきそうだと思っていたからな。少し意外だったな。」

 

 

 「あのね、あたしだって頼みごと言う時くらい、様子を窺ったりするわよ。」

 

 

 「悪かった。それで、それはいつなんだ?」

 

 

 達也は断る事はせず、日程を聞く。ハードスケジュールの中から空き時間を見つけ出し、予定を入れるために。しかしエリカは目を丸くして、首を傾げる。

 

 

 「え?今だけど?だって試験までもう時間ないんだから!」

 

 

 「なぁ~、達也。俺にも教えてくれ~!!頼む!!俺も前の試験より成績良くないとまずいんだ!!」

 

 

 達也に教えてもらう事は当たり前として語る二人に達也は頭が痛くなりそうな幻覚を覚えたが、既に引き受けた以上言葉を取り消す訳にはいかない。

 

 

 「わかった、だが今俺は生徒会役員だ。生徒会業務をサボる訳にはいかないからな。悪いが、それが終わり次第になるが、それでもいいなら…」

 

 

 「「それでもいい(わ!/ぜ!)」」

 

 

 達也が言い終わらないうちにエリカとレオがハモる。いつもならハモるだけでも「あんたと意見が合うなんて嫌なんだけど。」「なんか言ったか、このアマが!」とじゃれ合うのだが、それを一切見せる事がないだけあって、二人がどれだけ切羽詰っているのかが分かる。それに隣で聞いていた美月もうんうんと強く頷いて二人に同意している。どうやら美月も二人と同じく勉強を見てもらいたいようだ。

 二人の返事の良い回答を得たので、達也は「いいコンビだな。」という言葉を呑み込んで、席を立つ。

 

 

 「じゃあ、俺は生徒会室に行くから、俺が戻って来るまでに聞きたい問題はチェックしておいてくれ。……あとなるべく自力で解いておいてくれ。」

 

 

 「ああ!! 達也、サンキュー!!」

 

 

 「ありがとう達也先生~? 」

 

 

 「はい、達也さん、行ってらっしゃい。」

 

 

 三人から見送られながら、達也は少し足早に教室を後にし、待たせている深雪の元へと向かったのであった。

 

 

 




達也は先生にもなれると思う。というより、うちは達也の説明は分かりやすいからね!!

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