魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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久々に出してみた、この男。


邪な怪談(下)

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そこまでいうとはね~。信じられないって言うのが本音だが、長年の付き合いでもあるあんたの勘が外れるとは俺も思っていない。そんなに動揺しているあんたを見るのは出会ったころ以来だからな。」

 

 

 「…ふっ、俺も老いたという事か。この俺が今になって恐怖に駆られるとはな。しかも俺よりまだ半分も生きていない若造の発する底知れない気配で、な。」

 

 

 二人とも気心が知れた間柄と言っても一定間の距離を持って話していたが、かつてない動揺を見せる男の言動をきっかけに徐々に口調や呼称まで変わっていく。

 

 

 「俺も会った事はあるが、そこまでの印象は受けなかった。あの時は生意気なガキだという印象が強かったんだがな~。」

 

 

 「その印象は確かにある。実際に収録の際も気怠そうに誰とも親しくなろうとはせずにただ座っていた。終いには寝ようとする始末だ。まぁ、奴のマネージャーが気を引き締めるように何事か言っていたようだが、その後のトークタイムでは詮索をするなというオーラが全開だった。」

 

 

 「なるほど…。今のでなんとなくわかった気がするよ。彼には何か裏があるという事が。」

 

 

 「ああ…、だからもし引きこむ気があるなら気を付ける事だ。俺もできる事なら今まで通り手を貸すが、もしもの場合は…」

 

 

 「分かってる、そん時はお前の言わねぇ~よ。お前は俺の大事な取引役だからな。」

 

 

 「それならもういい。俺はそろそろ退散させてもらう。次の収録が詰まっているんでね。」

 

 

 「おお、ハードスケジュールだな。まぁせいぜい視聴率上昇に貢献してくれよ、敏腕MCさん?」

 

 

 「誰に口を聞いてるんだ?俺のMCスキルを嘗めるんじゃない。」

 

 

 言われなくてもそのつもりだと、顔で分かるくらい笑みを浮かべると部屋の扉が外から自動的に開き(外に控えていたMCの部下がタイミングを計っていたように扉を開けたから)、誰もいない廊下を監視カメラの死角を渡りながら部屋を後にしていった。

 

 

 それを見送り、部屋に残った男はテーブルに置いていたワイングラスを手にすると、それを身体の横に掲げる。するといつの間に後ろに付き従っていたのか、眼鏡をかけた秘書的な雰囲気ときっちりとスーツを着た男性が高級ワイン瓶を持って、現れた。そして自然な動きで男が掲げたワイングラスにワインを注いでいく。

 その注がれたワインをグラスを回しながら見つめ、一口口にする。

 

 そして口の中で味わい終わると、後ろに控える男性に向けて、背中を見せた状態で命令した。

 

 

 「”RYU"について、あいつに調べるように言っておけ。くれぐれも慎重にな。」

 

 

 「はい、畏まりました。榊様。」

 

 

 命令を受けた男性は、音もなく後退りしていき、姿を消す。

 

 それを気配で感じ取った榊は、つい先日自分から榊に売りに来た男の顔を思い浮かべ、不敵な笑みを浮かべる。

 

 

 「さて、使い物になるか、お手並み拝見だ…。」

 

 

 




榊とMCでした~。

やはり榊は芸能界の裏社会に生きる奴だった~。

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