魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

439 / 453
ここで物語を戻しておかないとな~…。


会話する中の状況

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回の任務の真の目的を知り、八雲の忠告や真夜からのこれまでの任務内容との違い、国防軍との連携…等々の疑問が拭えた。しかし達也は自分の予想と変わらなかった結果に若干ため息を吐きたい気分になった。何もかも予想通りだと答えが分かりきっているので、「ああ、やっぱりな」感がどうしても抱いてしまうのだ。しかも、今まで騒ぎの影に隠れていた黒幕がまた何かをやらかそうとしていると思うと、それが自分と深雪の身の回りに厄介事が舞い込んでこなければいいのにな…、面倒事の予感がして余計にため息を吐きたくなるのであった。

 

 

 (おそらくその黒幕の今回の狙いは、メディアを通して反魔法師運動を活発させ、魔法師への嫌悪やイメージダウンを狙い、魔法師と非魔法師との溝を深めさせ、内乱でも起こすつもりなんだろう…。)

 

 

 限られた情報から黒幕の手を読む達也の思考が既に黒幕の思い描くプランそのもののため、もし今達也の心を読む事が出来たなら、激しい危機感と焦りを抱いていただろう。

 だが達也は、ただ相手の思考を読むだけでそれを止めるための手段を瞬時に編み出す訳ではなく、何も知らずに家にいる深雪がいつものようにコーヒーをくれる時間までに戻らなければという思考しかなかった。達也にとって、黒幕が世間を騒がせようと、それによって犠牲が出たとしてもただそんな出来事があったという認識しか抱かない。まぁ、多少は不機嫌にはなるだろうが、それでも名前も知らない他人のために、今のうちに対処したいという気持ちは持ち合わせていない。

 

 何より大事なのは、この世界でたった一人、深雪だけなのだから…。

 

 それでもこうして任務にあたっているのは、一度受けた任務を断って、真夜に借りを作る訳にはいかないし、何かの拍子に深雪に害が降りかかるのを防ぐためだ。

 達也はこの時、まだ事態を重苦しく受け止めてはいなかった。(仁徳に対する感情が欠如している結果とも言える。)

 

 

 そんな考えを内に秘めている事を窺わせない様子で、達也は運転する響子に別件の話をする。…と言っても、本筋を辿ると今回の事と繋がってはいるが、達也は黒幕の事とは切り離して扱った。なぜなら案件の重要度や貴重性を考慮すると、価値が違い過ぎるからだ。

 

 

 「響子さん、そろそろ俺の家に向かってもいいです。響子さんのナビ情報とハッキングでどうやら撒けたようですから。」

 

 

 サイドミラー越しに後ろの車道を観察しながら達也が言うと、響子は苦笑しながら達也の言葉にうなずく。

 

 

 「本当?達也君が言うなら間違いないわね、じゃ遅くなってごめんなさい。今度こそ送ってあげるから。」

 

 

 「響子さんが謝る必要はありません。元々テレビ局を出た時から尾行はされていましたから。響子さんが気分転換と言って、ルートを変更し、街中を回っていたのは分かりましたし。」

 

 

 達也が言ったとおり、今までずっと達也たちの車の後ろを付いてくる車の尾行があったのだ。このまま帰宅すれば達也の居場所も知られ、正体もバレていた。それを回避するために響子は街中を運転して、細道や死角になるルートを使ったり、尾行車のナビにハッキングし、同じタイプの車にロックさせ、誘導したりしていたのだった。その気合の入った対策のお蔭で、尾行車の追跡を躱し、尾行されていない事を達也は精霊の眼でも確認して告げたのだ。

 

 

 「それにしても達也君に私は”尾行されている”なんて一言も言っていなかったわよね?」

 

 

 「言ってません。ですが俺と響子さんを陰から様子を窺っている人物は気付いていたので。響子さんも気づいていたようですし、既に尾行を撒こうとやんちゃになられていたので口出すのは止めた方がいいかと言いませんでした。」

 

 

 「私はやんちゃになんてなっていないわ。」

 

 

 「しかし『腕が鳴るわ~。面白くなってきた」と言っていましたよね?」

 

 

 小声で呟いた台詞を聞かれていた事実に顔を赤くし、恥ずかしく思う響子は達也を睨むが、達也に一矢報いる事は叶わなかった。

 

 

 (何よ、達也君!本当に君って高校生~!!)

 

 

 心の中で、羞恥心と悔しさを滲ませ、達也への不満を吐露しながら、結局達也のために自宅まで送迎する響子だった。

 

 

 




本文では達也は言っていなかったけど、尾行されて、撒くまでの時間。帰宅までゆとりができたため、前から気になっていた任務の真の目的を暇つぶしがてらに響子に問いただしたのであった。

そんな暇つぶしで話しできるほどの話題でもないんだけどね…。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。