「実は国防軍は、ある人間を追っているんだけど、なかなかしぶとくて厄介な狐なのよ。手掛かりはいくつか手に入ったけど、決定打に欠けていて、ことごとく尻尾を掴み損ねるの。」
「…意外です、響子さんや少佐達が調べているのに…、ですか?」
「そうよ、悔しい事にね。やっとネタが上がって、突入すればもぬけの殻だったり、雑魚連中の拘束だったり、まるでトカゲのしっぽきりに利用されている気分よ。」
「……あら家事間違っていないかもしれませんよ。」
「ん?達也君なんか言った?」
「いえ特に。…どうぞ。」
「え、ええ…、その狐は大亜連合の脱走者みたいで、今までの達也君の身の回りの事件も彼が黒幕ではないかと私達は突き止めたのよ。その彼が今度は標的として、芸能界…、まぁ言うならばメディア界で一悶着起こそうとしているから、それを阻止したいのと一刻も早く身柄を拘束しないといけないの。そこで四葉と我々独立魔装大隊が手を組んで、捜索にあたっているって訳。私は達也君と一緒に芸能界に身を置く事で、狐の尻尾を掴めるんじゃないかって事で、この任務に了承したのよ。…これでいい?」
「ええ、理解はしました。それより俺が気になったのは、その狐を拘束…でいいのかという事ですが。」
達也は言葉通りに了承した顔をしていた。しかし、まだ懸念が消えたわけではない。今まで身に起きた事と言えば、ブランジュとの争い、無頭竜の九校戦乱入により壊滅、横浜事変、吸血鬼事件…。数えてみればたった一年の間だけで高校生らしからぬ生活を送っている。そんな中、これらの事件の黒幕がようやく見え隠れし出したのだ。黒幕の行動を分析するなら、裏から駒を動かすような奴だ。しかもそれなりの人員を割いて、大事を引き起こしている。そのような奴を身柄拘束だけという生ぬるい対処で良いのか…と。
確かに四葉と手を組めば、黒幕を探す事は通常の情報操作での収穫より明らかに見つかる頻度と時間は上がる。達也自身も四葉のバッグアップを受けながら、仕事をこなした事があるため、手を組むという案は納得している。(実際に達也が仕事がこなしたものは世間では一般に公開され手はいけないレベルのものだが。)
「そのこと?問題ないわ。一応拘束という名目は立てているけど、向こうが反撃しようものならすぐに動きを止めてもいいって事になっているから。」
つまり、黒幕が絶対なる黒だと裏付けされれば、処分しても問題ないと言う事。
「それなら確かに問題なさそうですね。
………さすがだな。」
響子から今回の任務の受託した…、四葉の依頼を受け、共闘した理由を知った達也は、車の窓に視線を向け、本当に声を発したがどうか分からないほど小さな声で、最後の一言を呟いた。
その最後の一言は、ここにはいない、先を見通してこの任務を言い渡し、国防軍をも動かした(利用した)真夜の当主としての威厳や対処の仕方に危機感と警戒心を滲ませながら、見事に四葉の力を使い切っているのを少しだけ敬うのであった。
そんな理由があったとは~!! ただアイドルをさせたかったという訳ではないんだぜ。(乾いた笑い)(汗)