ステージに立ったRYUは、何十人もの視線を浴びながら、カメラが回り出すのをじっと待つ。
この時のために真夜に確認取りながら、カメラ写りの良い姿勢や角度までも記憶してきた。(”身体に沁みこませてきた”ではないのは、そこまで練習しなくても一度覚えてしまうとそれを身体を使って再生すれば、すぐに形になってしまうからだ。)
まぁ…、このレッスンの際、真夜がやけに目を輝かせていたが、あまり気にするようなことは無いと思う事でRYUの意識から消す。
それよりも不安が残るのは、”歌えるか”だ。
声を出して、メロディーに沿って音程やビブラート、コブシ等を調整して”歌う”ならRYUにとって造作もない。日頃からしっかりと聞こえるくらい鍛えられた何とも耳を傾けずにはいられない大人な声をしているから、声量にも問題はない。
しかし、その歌声に『感情』を込めた状態で”歌えるか”となると、評価は違ってくる。この番組出演が決まってから地下室で防音障壁を張って、何度もレッスンし、その旨を記録した映像を暗号化して真夜に送信したが、帰ってくる返答と言えば、『響かないわね。全く伝わってこないわ。』…だった。
元々感情が消されてしまっている達也にとって、感情を乗せて歌うという事は無理な話なのだ。一定以上の感情を持たない以上、人に感動や共感を与えるくらいの影響をもたらすような感情を込めた歌を歌う事はできない。これは真夜も十分分かっている。それでも真夜がこの番組に出るように仕組んだのは、達也ならできると判断したからだ。
(理屈としては上手くいくかもしれない。実際にやってみたら、叔母上の反応も無反応ではなかった。しかしやはりうまく歌えるか、俺には分からないからな。
この後の世間の反応がどうなるか…、想像できない。)
今までにない任務の一番の見せ場とあって、さすがのRYUも不安を隠しきれない。しかしその戸惑いもほんの数秒で、意識を切り替える。
(いや、できると信じてみるか。なぜならこれは俺が唯一歌える歌なのだから…。)
脳裏に浮かんだこの世界で最も愛しい存在に対し、笑みを浮かべ、曲が流れ始めるのを耳にとらえ、ヘッドマイクを調整し、いよいよステージで披露する時を迎えるのであった。
★★★
”Thank you"
いつも俺の傍にいてくれる
そんな君の温もりが嬉しい
でも近くにいても
伝えていない事がたくさんある
この胸に手を当てれば
きっとすぐに浮かぶ顔はonly you
だけどなんだか照れくさい
だからまだ言わないでいるこの秘密
Thank you
俺を好きでいてくれる君へ
I say
『出会えてよかった』って
Thank you,Thank you
歌にして伝えるよ この気持ち
I say thank you now
いつも俺の味方でいてくれる
そんな君の笑顔が微笑ましい
その感謝を言葉に
したい気持ちが溢れるんだ
こんな風にもっと素直に
伝えられたら君はどんな顔をするだろう
少し照れくさく感じる
だけど今日も言うよこの愛を
Thank you
俺を愛していてくれる君へ
I say
『生まれてくれてありがとう』って
Thank you、Thank you
歌にしたら言えるんだ この気持ち
I say thank you now
Thank you、Thank you 傍にいてくれて
Thank you、Thank you 笑顔でいてくれて
Thank you、Thank you 抱きしめてくれて
Thank you、Thank you 愛してくれて
季節は何度も巡っていく
その中で絶対に変わらないものがあるんだ
それは”君を愛し、護る事”
それだけは俺の本当の気持ちだから…
Thank you
俺を愛していてくれる君へ
I say
『生まれてくれてありがとう』って
Thank you、Thank you
歌にしたら言えるんだ この気持ち
I say thank you now
Thank you、Thank you 絶対に護るから
Thank you、Thank you これからもずっと
Thank you、Thank you 永遠にずっと
Thank you、Thank you 二人で歩こう
★★★
歌詞が完成~~!!
頑張った~!! 達也の気持ちが書けたかどうかは分からないけど、力を入れまくって頑張った~!!
以上、”Thank you"でした!!