魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

432 / 453
どくん…、どくん…!
うわぁ~、緊張してきた~!!(うちが出る訳じゃないのにね。)


ステージライトに照らされるまで

 

 

 

 

 

 

 

 

 RYUからの返答が当たり触りのない者だったため、MCは心の中で舌打ちをする。これまでの態度から見て、簡単に尻尾を掴ませる様な人物ではない事は理解していたが、いざ鎌をかけたり、気兼ねなく話せるように雰囲気を作っているのに、まるでそれを見透かされているかのような視線を向けてきて、次々と躱していく。

 交渉ごとに長けているような…、いやこの感じは脅しに長けているというレベルだ。MCは冷や汗を背中に掻きながらそう感じた。(実際に自分で脅迫の類は行っているため、敏感に察した。)

 

 

 (一体こいつは何者なんだ?)

 

 

 MCは心の中でそうRYUに問い掛けた。口で言えば、命がないのではないかという恐怖に駆られたからだ。もしそれがなかったとしても、直感的に触れてはいけない事だと判断しただろう。

 そんな事をもいながらも、生放送中の番組を進行し続けるこのMCは、並みならぬ精神力と状況判断力に長けているのかもしれない。

 

 一方で、RYUはMCが自分に恐怖を感じている事は察していた。今は上手く表情を隠しているが、初めに自分に向けた一瞬の頬の筋肉が引き攣ったところを見たからだ。その時以外顔には出ていないが、その時浮かべた表情が、任務の上での標的が最期に浮かべるものと同じだった。その際はまだ自分が何者か、どれくらいの力量なのかを知らない、知る事を放棄した場合、自棄を起こして自ら末路を迎える事になる。そんな雰囲気を感じたRYUは、『もしかしたらこいつも自暴自棄になるのではないか?』とややこしそうな印象を受けるのであった。

 

 それと同時になぜ、そこまで恐怖を感じられるのか意味が分からなかった。

 

 MCと会ったのは、ほんの数時間前の収録前の出演者挨拶の時が初めてだ。特に親しく話したわけでもない。そんな思いを抱いていたが、相手が何事もなく司会進行する者だから、RYUもこれ以上縺れる事はしまいと、会話に合わせていった。…と言っても、自分に関する事は封じているが。

 

 その事はMCも十分理解したので、RYUの個人情報を聞き出すのは止めて、デビュー曲の事を聞く事にした。

 

 

 「そうそう、デビュー曲だけど、RYU君が作詞作曲したんだってね~。この曲はどんな思いで書いたのかな?」

 

 

 「……とても大事な人のために作った。」

 

 

 そう答えたRYUの顔は、今まで苦笑しかしなかった表情に、優しい目をした笑みを浮かべたのであった。

 

 

 「それはもしや…!」

 

 

 まさかこれに食いついてくるとは思っていなかったMCは、すぐさま食いついてくる。しかし、RYUは誤解の余地がないようにすぐに付け加える。

 

 

 「俺の大事な家族のために感謝のつもりで書いた。」

 

 

 「そうなのかい? ならその思いは強いんだろうね。聞いてるだけで心が震えたからね~。」

 

 

 そう言われたRYUは、笑顔を浮かべようとしてうっかり綻んでしまった。ジj分が最も大事にしている思いを”強い”と捉えてくれたことになんだか少しだけ恥ずかしい思いをしたからだった。しかしそれもすぐに収まり、いつもの表情に戻る。

 

 それが合図になったのかは分からないが、CMの時間になった。この後、RYUがついにステージライトに浴びながらデビュー曲を披露する事になる。

 

 

 トークタイムを終え、RYUは席から立ち上がり、ステージへと向かって行く。

 

 

 




同じ世界にいるからこそ分かる独特な雰囲気か~。

いやはや、次はついに達也様が~~!!?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。