休憩が終わって、収録が始まる。
「さぁ! ここからは出演者の皆さんに話を聞いていきながら皆さんに歌をお届けしますよ!!
まずは、マグナムたちから行こうか!」
「「はぁ~い!!」」
二人で肩を組んでピースサインを作ってカメラに視線を送るマグナム。息があった動きと可愛らしさからか、観客席からは『可愛過ぎるっ!!』という声が聞こえてきていた。
「相変わらずの息があっているね、君達は。」
「本当ですか~。良かった!ウケてる~!!」
「みんなが笑顔になってくれて嬉しいな~。」
満面の笑顔で語るマグナムに観客席から拍手が起きる。MCと会話を弾ませるマグナムを出番をウズウズとして待っているハイスピードの内三人が今か今かと待ちわびていた。
「早く俺の出番がこねぇ~かな~。パァ~と、歌ってすっきりしたいぜ!!」
「さすがリーダーですよ!その意気、骨身にまで浸みました!!」
「カッコいい~!」
「………三人とも落ち着け。幼児園児か。」
「まぁまぁ、今は生収録だよ。僕たちの姿もばっちり映っているんだし、笑顔でやろうよ。…笑顔は得意よね?三人とも。」
「う…、わ、分かったって。大人しくしていればいいんだろ!?」
「ただ大人しく…、じゃだめだからね? しっかり先輩や後輩を応援しないと。」
(……こいつ、俺達が幼児園児並みだって事を全然否定してねぇ~。相変わらずの腹黒さだぜ。)
「今僕の悪口を言っていたよね?…翔琉?」
心を読まれた翔琉は、ドキッと身体を跳ねあがらせる。そしてそれを誤魔化そうとして席から立ち上がり、トークが終わり、ステージで歌を披露しているマグナムたちを応援する。
しかし、翔琉が何故出番を待ち遠しく思っていたのかは、突っ込みを入れた仲間も理解していた。口ではああいったが、翔琉と同じように心の中で思っていたからだ。
そうさせたのは、他でもない、RYUだ。
RYUの誰も想像してこなかった方法で、注目を浴び、まして頭脳にも優れている事が分かった。デビューしてからの瞬く間の大人気を得たのは、芸能界でのコネや他人の力だけで成り立ったわけでない事が痛いほど思い知らされた気分だった。収録前でも言ったとおり、RYUを見極めさせてもらうと言っていたため、RYUのフリースローには力を入れて、見ていた。その結果は想像よりはるかに上だった。
(認めるしかないだろうね…。彼は僕たちよりも上に立つアイドルになる、という事を。)
マグナムの歌も終わり、いよいよハイスピードたちのトークが始まる。観覧者達の席にも話しかけ、場を盛り上げていく。そんな中、彼らは決心していた。
(あいつが俺達よりも人気になっていくのは、否応なく思い知った。)
(だけどまだその時ではない。…なら)
(それまでの間に俺達がさらに上に君臨すればいい。)
(……そう簡単に抜かすことは無いからな。)
(高みからお前を待ってやる! もし追いついてきたなら、その時が本当の勝負だ!!)
気持ちを一身に、更なる野望(?)が生まれたハイスピードは、そのための一歩として、ステージへと足を運ぶ。この時のハイスピードの後姿は、なぜかかっこよく見えた。
息をのむほど、魅入る後姿を見せる彼らは、新たな目標を持って、駆けていく。
眠い、でも書けなかった分も挽回していくぜ!