魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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バトル大好きなみんなに…、精いっぱい努める事を誓います!


理由なき戦い~First~

 

 

 

 

 

 くろちゃんとちゃにゃんに目掛けてシンバは双剣を振り下ろす。それを、二人は横飛びして回避し、更に、後方へジャンプしてからシンバとの距離を取る。体勢を整え、魔法をいつでも発動できるようにCADに手を掛ける。

 

 くろちゃんはいきなりシンバが襲ってきた事が信じられなかったが、さっきの涙といい、言葉といい、シンバの意志で襲ってきたようには見えない。逆側でくろちゃんと同じくCADに手を掛けて魔法発動の準備しているちゃにゃんもシンバの意志ではないと考えていた。

 

 

 「シンバっ!! どうしたの!? シンバはこんな風に友達を傷つける人じゃないはずだよ!?」

 

 

 「誰かにやらされているんじゃない!? そうなんでしょ!? だったら、こんな事はやめなさい!」

 

 

 くろちゃんとちゃにゃんが説得するが、先程の攻撃を避けてからその場で立ち尽くし、双剣を地面に突き立てているシンバに反応はない。

 

 緊張感が張りつめる中、どう対処するべきか思考を巡らせていると、ふいにシンバが動き出す。しかしその動きは人間の動きとは思えないほどのものだった。関節があるのかと疑いたくなるくらい、腕や足がくねくねと動き、力が入っていないのに一歩踏み出す。まるで、糸で操られているマリオネットみたい。

 

 

 「くろちゃん! これって、もしかして…!」

 

 

 「うん、『セルフ・マリオネット』の改良版みたいな魔法で操られているのかも! 

  なら、起動式を破壊すれば!」

 

 

 『セルフ・マリオネット』とは、移動系魔法で自身の肉体を移動系魔法のみで動かす魔法で、普通は自分自身に掛ける事で、無意識に動かす事で、相手に予測を超える動きで攻める事ができる。まぁ、体の動きを魔法に任せる事になるから、咄嗟の相手の行動や魔法に対処ができないっていうデメリットもあるが。

 

 という事で、この魔法を使っても、大抵は自身の身体にマッチした動きを可能にする魔法だ。しかし先ほどのように関節があるのか疑う余地があるほどの動きをする魔法をシンバが自分で発動するわけがない。だから、その改良された魔法を掛けられて誰かに操られているか、組み込まれて操られたのかとくろちゃんは考えた。

 

 ちゃにゃんも同意し、起動式を破壊するために無系統魔法を展開する。いや、しようとした。

 

 ちゃにゃんが無系統魔法を展開しようとした時、シンバがちゃにゃんに高速で掛けてゆく。まるで、起動式を破壊されないようにするためのようだ。

 高速で動いているため、目で視認するのが難しい。あっという間にちゃにゃんの背後に回ったシンバが右手の剣を思い切りちゃにゃんに斬りかかる。

 

 

 「ちゃにゃん! 後ろ!! 避けて!」

 

 

 くろちゃんはちゃにゃんにシンバの位置を伝える。しかし、剣の軌道に加重系統魔法を重ねる事で更に斬れ味を出す一閃の方が速い。このままだと、ちゃにゃんは上半身と下半身を半分にされてしまう。この場に第三者がいれば、その光景が頭を過っただろう。しかし、当のちゃにゃんはもちろん、くろちゃんもそんな恐怖は微塵も顔に出ていない。出ているのは、不敵な笑みだった。

 

 

 「シンバ、私たちを舐めてもらったら困るよ。これでも一応、シンバの親友であり、ライバルだからねっ!!」

 

 

 「うんっ! そうだよ、シンバ!! こんなところで倒されるほど柔じゃないわっ!!」

 

 

 すると、ちゃにゃんは姿を消し、シンバの斬れ味の乗った横一閃は空を斬った。斬られた空気が風になり、離れているくろちゃんの所まで凄い風圧が襲う。もしまともにちゃにゃんが受けてたら、身体真っ二つで済まなかったとくろちゃんはその威力を噛み締めながら思った。そんなくろちゃんの思いとは違い、未だ涙を流し続けるシンバの首が傾げる。

 

 

 「あ~、危なかった。さすがにあれをまともに喰らってたらヤバかったね、くろちゃん?」

 

 

 くろちゃんとまったく同意見を口にして、くろちゃんの隣に現れたちゃにゃん。額に手を翳して、遠くを見る仕草をして自分がさっきまでいた所をまじまじと見る。

 くろちゃんは大丈夫と思ってても、やっぱり心配していたため、ちゃにゃんの無事に安堵の息を漏らす。

 

 

 「修得していてよかったね。」

 

 

 「シンバには負けられないから。」

 

 

 ちゃにゃんは近接戦闘魔法を修得していた。加速系魔法で、物体を特定方向へ向けて加速する『アクセル』を自分に掛けて、くろちゃんまで高速で走り抜いたのだった。

 くろちゃんとちゃにゃんはあのアスカ戦以降からシンバの近接戦闘魔法と技術に対抗するために、対策や魔法の特訓をしてきた。それがこんな形で披露するとは思わなかったが。

 

 

 自分の攻撃をまたもや躱されたシンバはちゃにゃんとくろちゃんの姿を目で確認すると、とてつもない笑みを浮かべた。

 

 その笑みに思わずくろちゃんとちゃにゃんはぞっとする。

 

 シンバの人懐っこい周りを明るくするいつもの笑みではなく、最高の獲物を見つけたというような獰猛な猛獣が狂気を逸した笑みだったからだ。

 

 

 「じゅじ~~~~ぅぅぅぅっぺ…!」

 

 

 その笑みをくろちゃん達に固定したまま、双剣を舐め回す。

 

 

 「ねぇええ!! 僕と遊ぼう~~~~!!ひひひひゃひゃ!!」

 

 

 狂った笑いが今、この場に響き渡る。

 

 





徐々にバトルを盛り上げていきたいなと思います。

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