魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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RYUじゃなくても同じだっただろうな~。


圧巻の勝利

 

 

 

 

 

 

 

 

 世にも不思議なものを見せられたような強い印象を持った観客や出演者達の視線を一身に浴びるRYUは、居心地悪そうな苦笑をして、頭を掻く。そのままアイドル達が自分を凝視するのを無視して一番後ろの席に座った。今もなお絶句する彼らだが、生放送されているのを思い出し、我に返った。そこからはすぐに笑顔を浮かべて、カメラに手を振っている。RYUは「さすがアイドルだな…。」と見事に瞬時に笑顔を浮かべられる彼らに感心するのであった。

 

 

 「いや~…、なんと言葉にしていいやら…。まさか番組史上最高得点が出るとはね~!しかもあんな方法は想像できなかった!! 良いものを見せてもらえたよ!」

 

 

 リアルタイムの視聴率をスタッフから耳にセットしているイヤホンから一気に鰻登りに更に上がったという知らせに、笑みがこぼれ捲るMC。しかし誰もその笑みが腹黒い笑みだとは気づかない。

 

 

 「私もびっくりです…。今まであのようなボールを連続的にゴールにシュートするなんて事はありませんでしたから。」

 

 

 アシスタントの女性も驚きのあまりまだ興奮が収まらず、大きく何度も深呼吸して安定させようとする。その言葉に多くの人達が大きく頷く。

 

 

 「しかしこれは最高得点と言っても、前例がないからね~。」

 

 

 MCは番組の視聴率があげてくれた事には感謝はしていたが、対決自体の前例のない事ばかりされたので、頭を悩ませることになった。いくら最高得点でもやり方が前例がないので判定をどうするか迷うのだ。もしこのまま認めてしまうなら、他のアイドル達の反感を買うだろうし、かといって今人気アイドルのRYUの得点を認めないと今この場にいるファンからは真っ先に罵声を浴びるだろう。

 

 その判断に決定を出さないといけないMCは、RYUに聞いてみる事にした。

 

 

 「RYU君、素晴らしいパフォーマンスをありがとう。しかし前例がないからね~。君はどうして……」

 

 

 『君はどうしてこのやり方をしたのか?』と問いかける言葉を言おうとしたが、逆に聞いていいのか戸惑う。こんな聞き方をしたら生放送で尋問しているように捉えられるのではと考えが過ったからだ。

 しかし、MCが戸惑っていたのも一瞬だった。聞こうとしていた事をRYU自ら話し出したので、救われたのだ。

 

 

 「このフリースロー対決のルールでは、時間内に指定の数のボールをゴールに入れる事だ。それぞれのゴールには必ず一回は入れないといけない。なら、全てのゴールに一度ボールを入れてからまた入れたとしてもルール違反にはならない。それに”一つのボールで一つのゴールに入れる事しか認めない”なんてルールはなかった。つまり一つのボールで複数のゴールを狙ってもいいって事だろ?」

 

 

 RYUのルールから導いた解釈にMCもついには口を開けたまま固まり、放心状態になる。しかしベテランの意地を働かせ、RYUのフリースロー対決の得点を認めた。これによりRYUは歴代フリースロー対決のトップ成績を刻み、圧巻の勝利を収める事になったのであった。

 

 

 




ルールの穴を突くのは達也の十八番と言っても過言ではない!

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