「本番までもう一時間切ったぞ。出演者たちに連絡しておけよ。それと前座もしておけ。」
プロデューサーが番組ADやカメラマンたちに掛け声をし、準備に力を入れさせる。その準備を見ていた本日の番組観覧者の方々もいよいよ始まる事に興奮が止まらなくなってきた。
本日のミュパラは応募者がこれまでの観覧希望者の応募人数を遥かに超えた人数が大量に送られてきた。まだ増える一方のこの応募に、その原因を作ったRYUが先着順で締め切ろうと決め、いつもより十人ほど観覧者を増やし、番組を盛り上げるため、下っ端スタッフが一生懸命観覧者の人達を笑かせに行く。
「でも、やっとRYU様に逢えると思うと、いまだに鳥肌が止まらないくらい嬉しい!」
「この観覧者の応募もこれまでの応募と違って、事例がなかったみたい。」
「それくらいRYU様の魅力が溢れているって事よ!!ああ~、早くRYU様を拝みたい…♥」
「そうね! 応募数の倍率かなり高かったみたいだし、ここに来れただけでも奇跡だもの!このチャンスは絶対に逃したら後悔どころじゃないわよ!」
「そう言えば、RYU様以外にもハイスピードやあの、”omega(オメガ)”も出演するんでしょ!? 今日は凄いよ!そしてそんなアイドルたちをこんな近くで見る事が出来るなんて…、もう堪らん!!」
「うんうん、来てよかった~~!!!」
スタッフが前座として話を盛り上げようと志すが、既に観覧者同士で盛り上がっており、初対面でも同じ目的でここにいて、なおかつ趣味も同じと言う事あって、早速友達となる場面が至る所で起きていた。完全にスタッフが盛り上げなくても勝手に観覧者達が話を盛り上げていて、逆にスタッフの話には誰も耳を傾けていなかった。この状況を経験したスタッフは、肩を落としてそっと退却するしかなかった。もしこのまま観覧者達の前で立っていられたとしても、心が折れている事が決定事項になる気がした。…いや、これでも十分に心が折れてはいるが。
お気に入りのアイドルを応援するために、観覧者の多くは好きなアイドルの写真を貼ったうちわやペンライト、Tシャツを着ている。これらはおよそ一世紀前から流行しているアイドル応援着であり、時代が変化したとしても、これらは強く残っている。
そういう訳で、みんなが応援する気MAXで、準備も整った所にこのミュパラの進行を行っているMCの中年男性が現場入りする。サングラスをかけ、スーツを若干着崩している男性は、プロデューサーとの打ち合わせでもベテランの雰囲気を醸し出し、長年この番組のMCを務めてきた貫禄を見せながら、本番に向けての調整をしていった。
そしてついに本番収録が迫る。生放送でもあるから、時間は絶対に厳守だ。
カメラが回る一分前、MCの男性は観覧席で始まる瞬間を、息を呑んで待ちわびる観覧者達に掛けていたサングラスをカッコ良く横に流れるように取り外し、カッコよく見れる計算された角度で目線を向ける。いわゆる流し目だ。
「さぁ、間もなく始まる。君達も大いに盛り上がってくれたまえ!」
「「「「「「キャ~~~~~~~♥♥♥」」」」」」
黄色い声が観覧者達から沸き起こる中、出演者登場を待つ彼らは鳴れているにも拘らず、熱狂的な声に驚くのであった。
アイドルというよりは、観覧者達の反応がメインだったね。
…投稿遅くなってごめんなさい。