楽屋でようやく二人きりになったRYUと響歌は、同時にため息を吐く。
「やっと言ったわね。」
「そうだな…、しかしかなり時間が経過してしまった。今から急いでアップしてもギリギリだな。」
モサモサの灰色の髪を掻いて、しょうがないという顔で、ヨガと空手が融合したような型やポーズをゆっくり時間が流れるように身体を動かす。その指先までしっかりと念入りしてストレッチしているRYUは見ているだけでも惚れるくらい、美しいものだった。楽屋の狭いスペースで器用に身を捻ったりしてストレッチを続けるRYUを見ながら、響歌は魔法を発動する。一般のテレビ局なのだが、表現の自由を掲げて世間に報道するテレビ局では、魔法の侵入、報道の書き換え、遠隔操作を受けたり、魔法師のテロリストによる襲撃、ハイジャックを受けないように魔法に対する監視や防御をあちらこちらに設置し、テレビ局での魔法使用を禁じている。まぁこれらの事は半数のテレビ局がそう発言し、税金によって監視費用やテロ対策費用を政府からもらっている。(これらを規定している局長や税金を使う事に許可をする政治家や官僚と言えば、反魔法師思想を持っている人が高い。だから魔法使用は局にいる限り使えないのだが、既に局内の魔法監視システムを制覇している響子が楽屋内で防音障壁魔法を発動しても問題なかった。
「それより、人気が凄いわね、達也君。」
「……凄いのがどうかはわかりませんんがお陰様でこの通りです。」
楽屋内の物音や話声が外に聞こえないように、響歌は障壁を張った。だから、響歌から本名で声を掛けられたRYUは、内心驚いたが、すぐに許容範囲の感情で収まり、響歌の心遣いに感謝する事にした。響歌もこの時だけは響子に戻って、達也と会話を楽しむ。
「そう言えば、あのハイスピードの子達から宣戦布告受けたわね。達也君の事だから対応に困るとは思うけど。」
「…え?宣戦布告していましたか?」
「……え?、…もしかしてだけど、達也君。あなた、実は気づいていなかったりするのかしら?」
「なにをです?彼らは収録の際に俺を観察すると言っていただけですし、何もありませんよ?確かに少し敵意を感じましたが、脅威になりそうな危険なものではないですが。」
「…はぁ~、達也君。それが宣戦布告だったのよ。
収録でただあなたを観察するだけで終わる訳がないでしょう?彼らは自分達の凄さを貴方に見せつけておきたいのだから。勝負を投げられたのよ、達也君。」
「…そうだったのですか。」
鈍感だとは言われている達也は、あからさまに殺意とは違った真っ直ぐな熱意を受け取った感覚があったのもあり、彼らの意図した宣戦布告を受け取る形になったのであった。
眠い~。達也は向けられる好意的な部分では鈍感ですから。