リーダーにしては、仲間達に弄られている翔琉は、鋭い突っ込みをするが、表情には若干笑いや照れがあるように見えた。本心から嫌がっていない分、本人もこの仲間達との遣り取りを受け入れているのだろう。
翔琉の仲間達も優しく見守るように笑っていた。
…しかし、彼らが騒ぐにしては場所が悪かった。彼らが話しているのは、他の出演者たちの楽屋が並んでいるスペース空間の廊下だ。その点を彼らは忘れていた。そして当然の流れだが、あまりにも大声で盛り上がっていたので、注意しようと彼らに接近する者達がいた。その人もミュパラに出演する人だ。万全の声で歌うために喉を鳴らして集中していたので、それを邪魔されてピリピリしている。
その様子に真っ先に気づいた翔琉は、ある行動に出るのであった。
「おい、お前ら! 早くこっちに入れ!」
「え、何で…、ああ~うん! ありがとう!」
「やばっ! 俺も入れてくれ!」
「君達落ち着いて、ここは正々堂々と謝るべきだよ。」
「…そう言っておきながらおまえもこっちに入ってきているじゃないか!」
「うん、そうだよ。だって謝るは謝るでも、それはリーダーの仕事だから。」
「こういう時だけ俺を祭り上げるんじゃねぇ~!!」
なんと翔琉は、勝手にRYUの楽屋の中へ仲間達を避難させてしまったのだ。これにはさすがのRYUも驚いた。しかしそれも一瞬でおさまるが、気分は優れない。
響歌も唐突に起きた出来事に鳩に豆鉄砲のような表情になっていた。
「…………ここを誰の楽屋だと思ってるんだ?」
RYUは翔琉の勝手な行動によって、振り回されようとされそうな現状に冷たい態度を取る。明らかにこの後巻き込まれそうな予感が離れないのだ。
「だって仕方ないだろ? ここに避難してなかったら、どんな目に遭っていた事か…!」
「知らん、俺を巻き込むな。迷惑極まりないぞ。」
「仲間達を助けたいとは思わないのかよ!」
「俺の仲間ではない。そもそもこうなったのはお前の大声が原因なんだ。責任取ってくるのは当たり前だ。」
翔琉が熱血に語りかけるが、距離を空けさせるような言い方で冷たい視線を送る。
RYUにとっては他人事なので、どうでもいいのだ。ただ速くここから出て行ってもらいたいという願いだけが他の気持ちと比べて勝っていた。
「てめぇ~! うちのリーダーに何言いやがるんだ!!」
「リーダーを侮辱するのは、許さないよ。」
「でも彼が言っている事も正しい…。」
RYUの仲間達も不愉快だと言う顔でいい返す。その様子を見守るのが響歌であり、収録が始まる前なんだから、大人しくしておいてほしいわとため息を吐いてそう思うのであった。
こ、これからどうするんだろう? RYUは苛立っているよ~?