ニュースで大々的に報じられ、トップニュースになり、検索キーワードナンバーワンに”RYU"、”ミュパラ”と出てくるほど、RYUがテレビに初生出演する事は世間の多くの人々の関心や興味、注目を浴びている事を窺わせていた。
その事が本人の耳に入ったのは、その翌日、つまり本番収録のある今日のまさに現場入りする少し前だった。
「…………よくたった一日でここまで盛り上がりを魅せましたね。絶句するしかないです。これは俺にとって遥かに予想外です。」
「あら、でも注目される事が任務での必須条件よ? 寧ろ色々と後ろ手を回さなくてよかったって考えたら?」
「それとこれとは違います。確かに注目されるのはあまり居心地は悪いですが、善処します。ですがだからと言って……、あんな事になるなんて、俺は聞いてもいないですし、望んでいません。」
こんな話聞いていませんと言うような表情で訴えるのは、既にRYUの姿に変装した達也で、スタジオ収録現場があるテレビ局の前の路地裏にいた。そこには達也だけでなく、マネージャーとなった響子がいた。 そして響子も同じことを想っていたのもあってか、苦笑を漏らす。
「私もやり過ぎな気がしない訳はないけど…、私達にとってあれを抜けないといけないのは変わらない事実よ。」
そう言いながら、笑顔を引き攣る響子の視線の先には、テレビ局の出入り口付近に向けられていた。もっと詳しく言うなら、そこに群がっているファンが固唾を呑んで待ち構えているのを、どうしたものかと眺めていたのだ。
応援してくれるのはいいが、血眼に目を見開いて今かと待ち構えている強壮とした表情で何人もの人に見つめられている状態で、出迎えられるのは気持ち的にやりたくない。
RYUの姿になっているものの、まだ人前には出ていないため、達也部分がまだ現れているせいか、元々注目を浴びる様な事は避ける達也の無意識な回避能力が発動し、他の出入り口からの現場入りを提案する達也だった。
しかし、そんな達也の案は却下される。
このテレビ局はかなり昔に建てられたこともあり、出入り口が二つしかなく、一つは老朽化で傷んだ水道管の点検やエレベーターチェック諸々の業者委託の作業が山のようにあり、出入り口を封鎖している。そのためにもう一つの出入り口から入るしかなく、達也の案はあっさりと調べていた響子に斬り捨てられるのであった。
「………はぁ~、分かりました。なるべく素通りできるように協力お願いします。」
「あら、ファンサービスはしないの?サインとか、握手とか。」
「一度すると、全員にしないといけませんし、余計に興奮状態にさせてしまって、取り囲まれてしまいます。
……俺は絶対にサービスはしませんよ。」
アイドルとは思えないファンの要望を応えないRYUの鋭い視線を受け、本気だという事を理解した響子は、確かにRYUの言う通りかもしれないと思う事にし、路地裏から姿を見せ、RYUと一緒にハイエナのような目をしたファン達の中へ飛び込んでいった。
本人の思う以上に注目浴びたRYUの現場入りはこの後、警備員がフル活動するほど、困難を極めたのは言うまでもない事が起きるが、それはまた……。
眠たくて、数分目を閉じるだけ~、だったのに!!いつのまにか数時間寝てた~~!!