魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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円滑にストーリーを進めるためにこうなった…


”RYU"の設定

 

 

 

 

 

 

 

 一通り目を通し終えた達也が、真夜に感想を述べる。

 

 

 「ここまで精密に設定しているとは思いませんでしたが、正直これならやっていけます。苦労したのではないのですか?」

 

 

 「達也さんが気にするような事ではありませんよ。達也さんの場合、こうした方がやりやすいだろうと思っただけです。」

 

 

 達也から労いを受け、真夜は内心、ズキュンッ…と萌えて嬉しく思うのだが、今は響子もいるため、なおさら顔に力を入れ、ファン魂を力ずくで押さえるしかなかった。達也は、真夜がそんな心境とは知らず、ただ四葉家当主の仕事の合間に自分のアイドルキャラ設定まで考案していたとは思っていなくて、ここまで完成されたものを提示した真夜に対し、見直していた。…というのも、達也ははじめ、この任務を言い渡された時、真夜の私的な理由から任務が言い渡されたと思っていた。しかし、今この任務に力を注いでいる真夜の様子を見れば、今までの任務と変わらず意味あるものだと理解できる。まだ何か隠している事があるのは分かるが、既に達也の中ではこのアイドル活動に真剣に取り組む姿勢を持っている。(ただし、アイドルの活動内容全てに納得した訳ではない。)

 

 これからの任務をするうえで、真夜からの差し入れ(?)は達也にとって正直有難いものだった。

 

 

 その書類に書かれたRYUのキャラ設定は次の通りだった。

 

 

 ・基本クールで、熱くはならない。

 ・誰に対しても動じない。(言葉使いは敬語を使わない。)

 ・文武両道

 ・気心知れた人には笑う

 ・勝負事には遠慮しない

 ・不意に優しさを見せる

 

 

 ……等々。

 

 このほかにも、性格やその性格になったこれまでの人生や芸能界に入った本当の理由…といったRYUの生き様が記されていた。

 

 

 「…でもこのRYUの性格って、達也君と変わらないような気がするのですが?」

 

 

 同じくキャラ設定を見ていた響子が真夜に尋ねる。達也の性格と変わらないのであれば、もしもの時正体がバレてしまうのではないかと思ったためだ。

 その件に対して、真夜は余裕がある表情で答える。あらかじめ聞かれる事を分かっていたかのように。

 

 

 「ええ、あえてそのようにしたのですよ。元々達也さんには自分以外の誰かになりきるなんて真似は出来ませんから。かといって、まったく同じでは藤林さんがおっしゃったとおり、勘の鋭い人には気づかれるでしょう。そこで考えたのは、達也さんと性格は似ていても、生い立ちや背景を作りだせばいいと思ったのです。

  人は、例え人格や姿が似ていても、育った環境がまったく異なった人生を送った事を知れば疑いの目を向けなくなりますから。」

 

 

 つまり、達也が感情を持たない以上、例え演技するとしてもなぜその役が嫉妬したのか…、なぜ嬉しく思っているのか…、そういった当たり前の表現がうまく表現できないため、感情の起伏が激しい演技は出来ない。演技の才能がないと言えばそうなる。しかし、性格等は同じにして、違う人生設定を作れば達也も演技られると判断したのだ。普段の自分と同じなのだから、普通にできるし、言葉遣いを意識的に変えて話す事は、極秘任務で敵に素性を知らせず対峙する際に良くしている事なので、苦難もない。

 

 真夜が考えた中では、最善の策でもあった。

 

 

 この真夜の意図を理解したのか、響子も納得の表情を見せる。

 

 達也もこの案に文句はなく、受け入れる。

 

 

 こうして、新たに”RYU"としてのアイドル活動を始める事になり、御茶会はこれで閉幕となった。

 

 

 




達也、良かったね。一番の難関が払拭できただろうし、…いや、一番の難関は深雪だよな。

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