魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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ついに”RYU"の下地が出来上がる~。


”RYU”としての確立

 

 

 

 

 

 

 

 

 歌番組への出演は既に番組プロデューサーに返事を送ったため、これは連絡事項だ。達也も明後日の出演は覚悟を決めた。………というよりは、投げやり感が少しあるかもしれない。

 

 

 「達也さん、それともう一つお願いがあるの。」

 

 

 「はい、なんでしょうか、叔母上。」

 

 

 「これからの任務ではこうしてほしいのよ。葉山さんがまとめおいてくれたので、受け取っておいてくださいな。藤林さんの分もお渡しさせていただきます。」

 

 

 葉山さんが紙に文字が綴られている書類を達也と響子に渡す。ついでに言うと、風間さんはこの応接室と連なっている隣の控室で待機している。今は、響子に用があっての事だし、風間を呼んでいた理由は、この任務を依頼する際の立会人として見届けてもらうために呼んだからだ。部下を借りるに当たり、上司に無言で借り受けるのはマナーに反すると判断があったからでもある。

 だから、響子がマネージャーをしてくれると断言した後は、打ち合わせは秘密理に進めるため、風間には少し席を外してもらう事にしたのであった。

 

 その中で行われているこれからの任務の確認の際、真夜から達也へ要求がなされた。

 

 達也と響子は葉山さんから手渡しで書類をもらい、目を通す。

 

 

 

 そこに書かれていたのは、達也が芸能界でアイドル活動する際の”RYU”としての振る舞い方…、言うならばキャラ設定が事細かく書かれていた。

 

 

 「これは………?」

 

 

 「見たとおり、達也さんが”RYU"として振る舞う際、ボロが出ないようにあらかじめ決まり事を書き出しておきました。

  達也さんにはこれが必要だと思いまして。」

 

 

 「達也君は私達が見ていた時もしっかりとアイドルをしていたと思いますけど…。」

 

 

 響子が躊躇しながらも真夜にキャラ設定がいるのかと言外に話す。響子たち、独立魔装大隊は知らなかったとはいえ、達也の監視を行う上で、達也のアイドル活動を気づかれないギリギリのラインを行き来しながら見てきた。その上で達也が秘密を吐露する様な真似もしなかったし、役割を果たしていた様子を見ているので、この書類が今になっているのか、口から思わず出てしまった。

 

 しかし、当の本人である達也は、書類に書かれているキャラ設定を速読で読み上げていく。

 

 

 「そうね…、確かに達也さんは仕事をこなしていましたわ。しかし、与えられた仕事をこなすのは当たり前、問題なのは……」

 

 

 「俺の演技力…という訳ですね。」

 

 

 真夜の言葉を受け取る形で、達也が自分の欠点を吐露する。

 

 

 「仕事はこなしても、俺は”RYU"という人物の性格も言動も決めかねていましたし、自分なりに見た目に合う様な性格にしたつもりなのですが、どうしてもぶれてしまったり、素の俺に戻ってしまう事が何度かありました。

  慣れない事をしているからという事もあるとは思いますが、一番は俺が演技に必要な『感情』を理解できないのが、”RYU"のキャラがぶれてしまう原因だと思います。」

 

 

 ずっと思っていたのであろう、今まで抱えていた小さな悩みを打ち上げる達也の言葉を聞き、響子も納得した。

 

 つまり真夜は、達也の任務状況を把握する上で、達也の演技が未熟なのが分かった。しかし、達也の感情の部分はどんなに魔法を駆使してもどうにもならない。それができるとすれば、もうこの世を去った達也たち母である深夜の特異魔法、精神構造干渉魔法しかないだろう。……ただたとえ深夜がまだ生存していたとしても、元に戻るとは言えないが。

 

 そんな訳で、真夜は応援するファンの一人として(ここは四葉家当主としてではない。)達也が気を病む必要がないくらいアイドル活動に専念できる秘策としてキャラ設定を作り上げたのであった。

 

 

 …ちなみにこれを作成する時の真夜は、模索しながらも数々提案するたびにキャーキャー言って、妄想した達也のキャラっぷりに萌えてしまう出来事もあった。

 

 

 こうして、”RYU"のキャラ設定は(真夜の溢れんばかりのファン魂で?)無事に本人の同意もあって、確立した。

 

 

 




どんなキャラ設定になったのかは……明日で!

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