「ではどういう意味でお二人を招待されたのですか、叔母上。」
鋭い視線が真夜に向けられる。真夜はそれを正面で受け取り、冷ややかな笑みを浮かべたまま、顔を正面で固定して話を切りだす。問いかけた達也に向けたものではなく、この場に集まった全員に向けて。
「達也さんも気づいている通り、貴方に今与えている極秘任務の事で新たに付け加える事にしたので、その件でお二人をお呼びしただけです。
そして彼らは私達の任務については既に知っています。」
「……それはどのような経緯ですか?」
「あ…、いつも通り達也君を監視していただけよ? だって国防軍の重要な戦力であり、世界でも数十人しかいない貴重な戦略級魔法師の一人ですもの。しっかりとフォローするなり、力を暴走させないように警戒するのは私達の仕事でもあるから。
……言っておきけど、断じて四葉家から情報をハッキングしてはいないわよ?たとえ私の腕でやってみたところで、すぐに私だとバレてあなたに消されるのは分かりきっているもの。自分の命を終わらせるなんて馬鹿はしないわ。」
達也の質問に答えたのは響子で、すぐに誤解だと真実を告げる。風間も響子が本当の事をいう事に反論しない。円滑に話を進むためには必要な事だと割り切っているからだ。そして達也は、去年の横浜事変で、同級生がテロリストと接触し、スパイとして自分に近づいてきた時も、自分の監視をしている事をほのめかせて、しかも自分にも気づかせる事なく行っていた事は聞いていた。だから響子が話している事も真実であると表情や声色からも考えて、納得した。納得すれば、さっきまで抱いていた疑念も警戒心も殺意も嘘のように消す事が出来た。
「そうですか、分かりました。
……それで国防軍に対して何をさせるつもりなのですか?叔母上。」
前半は響子に対し、後半は真夜に話しかける。
二人がこの任務…アイドル活動について知った経緯は納得したが、一体国防軍に何をさせるというのが意味が分からない。アイドル活動と言っても、基本はテレビや雑誌に姿を見せたり、踊ったりするだけだ。国防軍が介入し、武器を扱うような事態があるというのか?
(もしかして、更なる人気獲得のために、ハイジャックに見せかけた立てこもりを国防軍にさせて、俺に解決させようとしているのか?
………いや、いくらなんでもそこまで考え過ぎか。
しかしほかに考えられる事と言えば………)
達也の頭の中で、国防軍の有効な役割が見込めそうな策が展開されていく。しかし意識半分は真夜の言葉を聞き、その真意を知ろうと向けていた。
「いえ、国防軍に依頼するつもりはありません。あくまで独立魔装大隊に、ですよ、達也さん。これは極秘任務です。国防軍にまで知られると、極秘とは言えません。それに………」
一度言葉を切り、紅茶を口にする真夜の表情を見て、達也は引っ掛かりを覚える。
「……それに彼らには物騒な事をお願いするつもりは今のところありません。あくまでお手伝い…といったものですわ。」
「お手伝い…ですか。具体的に何をすればよろしいのですか、四葉殿。」
風間はようやく本題を切り出せたという事もあり、待っていた分の気合も入った声色で真夜に問い掛ける。
それを微笑ましい様子で受け取ると、真夜はまさかの共同任務依頼の内容を口にした。
「そうですわね、貴方方には達也の…、いえ、RYUのマネージャーとしてアイドル活動をサポートしてもらいたいのです。」
「………………」
「え…?」
「………は?」
真夜の言葉を疑う三人はそれぞれ固まって、思考停止をしばらくするのであった。
そうきたか~~!!?
真夜も考えますな~。それでそれで?続きは明日~!