魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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選択ラグが来た…。


決別か、杞憂か

 

 

 

 

 

 

 

 

 達也が風間と響子に抱いている疑問や警戒は、真夜も理解していた。頭の回転が良く、遠慮せずに核心を突くような会話もできる達也の物分かりの良すぎる部分には真夜が心の中で褒めるくらい、好感を抱いている。

 そのため達也なら自分が同じような境遇に遭遇した場合どう考えていくのかを事前にシミュレーションしていた。だから達也の国防軍に対して裏切られている事を仮定する事は想像しやすかった。

 

 そして達也が今後どんな流れになるか、考えている事も見通していた…。

 

 

 いや…、見通すよりも意見が一致した。

 

 

 (さすが達也さんね…。私と同じ予測をするなんて。本当にこの子には気兼ねなく本気で話せるから、無駄な話をしなくて済んで嬉しいわ…。)

 

 

 達也が風間や響子に向ける訝しげな視線を面白そうに眺める真夜の頭の中では、ある光景が広がっていた。

 

 

 もし達也の言うとおり、国防軍が無断で四葉家内の情報網にアクセスし、ハッキングで情報を入手していたのなら、国防軍と結んでいた、いや独立魔装大隊と結んでいた契約を破棄し、決別を選択していただろう。

 

 そうなれば、独立魔装大隊の処分も実行するだろう。

 

 まず、四葉家の情報網は強固なセキュリティーをいくつも網を張っていて、更に独自の防衛システムを仕組んで大事な情報にはたどり着けないようにしている。ただの天才ハッカーでは太刀打ちできない。しかし、魔法的な面でも天才的なハッキングなら多少の情報を搾り取るくらいはできる。そのハッカーとして可能なのは、響子だけ。他にもオペレーターは何人もいるが、響子ほど証拠も残さず情報を抜き取る事は出来ない。だからまずは、響子を一番目に入る場所に連れ込む。そして端末妨害装置を張った部屋に押し込み、連絡不能にする。そこで息の根を止めれば、問題はない。

 

 敵に回せば厄介だし、四葉家に危害をもたらそうとすれば、四葉家の力を削のみで味わう事になってしまう。

 

 達也は身体に開いた無数の穴から血が噴き出し、床に倒れて動かない響子や風間の姿を想像する。その二人の屍を自業自得だと言って、見下ろす自分の姿まで想像した。

 

 

 (当然といれば当然か・・。自ら危険な目に飛び込んでいけばこうなる。理由はなんであれ、深雪に危害が降り注ぐなら、例え響子さんや少佐でも許しはしない…。)

 

 

 はっきりとした仲違いを考え、分解魔法を構築するのに、準備をしておく。予測では真夜がこの部屋だけで『流星群』を発動する感じだが、二人とも古式魔法師の家系に生まれている。現代魔法では対抗できない昔ながらの魔法で真夜の阿呆を万が一塞がれれば、逃げられてしまう。達也はそうさせないために、精霊の眼を使って、二人を監視し、臨戦態勢をいつでも取れるにするのであった。

 

 

 そこまでして、決別だった時の事を考える達也に対し、真夜は想像以上に予測が一致しているため、笑いが込み上げてきたが、鉄壁の作り笑いで封じ込め、やんわりとした声色を使って、達也の疑念を晴らす。

 

 

 「達也さん、問題ないわ。 彼らを呼んだ理由はそうではないから。」

 

 

 決別かと一時は思考が流れたが、それは杞憂に終わるのであった。

 

 

 




危ない、危ない!! 杞憂でよかったんだよ!
四葉家の恐ろしさが~!! ちょっとした情報でも粛清の対象にされてしまう。仲が良くてもあっさりと斬る捨てられてしまう関係って怖いわ!

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