短い間で真夜の意図を読み取り、本題に入るように視線で問いかける。だが本来だったらこのような態度を取れば、四葉家の使用人達から罵声を浴びる事になるのは必須。特にこの場に青山がいれば、真夜がいる事を忘れて、罵声を浴びせ続け、『欠陥品っ!!』と鼻で笑うだろう。…まぁそうなれば命を縮めるのは自分に降りかかる事になると思うが。
だが、そんな心配はせずとも、この場にいるのは達也と真夜、そして葉山さんだけ。葉山さんは青山や他の使用人達のように達也を出来損ないだと見下すことは無いため、この様な態度を取ったとしても、見た目は平然として対処する。達也が真夜や四葉家に忠誠心を持っていない事は心得ているし、見下すなんて愚かな真似をするより、最も侮れない戦闘魔法師だと警戒しているのだ。使用人序列一位だけあってそこは弁えている。
だから気を使う必要もない。
「それで用件とは、今朝の手紙の件でしょうか? 」
「ええ、葉山さんから受け取っているとは思うけど、早速明日の昼に魔法教会関東支部の応接間に来て頂戴な。ちょうど明日、そこへ行く事になっていますから。」
「それは構いませんが、学校は早退してもよろしいでしょうか?」
明日は土曜日で、午前中だけ授業が設けられている。そして午後からは部活に入っている生徒達は部活動を行ったり、風紀委員や部活連に所属している生徒も当番制で巡回や責務に時間を当てている。当然達也も学生の身分である上、明日も登校する。そして達也は生徒会役員なので、生徒会業務を片付けないといけない。午前中で授業が終わると言っても、すぐに帰れるわけではない。達也が早退すると申し出たのは当然の流れでもあった。
その達也の言葉を真夜は笑みを浮かべて、やんわりと否定する。
「そこまでしなくてもいいわ。達也さんの考えている通り、学生の本分は勉学ですもの。しっかりと学んできなさいな。合流するのは授業が終わってからで構いません。」
つまり、生徒会業務はせずに、授業が終わり次第、帰宅部と同じように下校して、向かうように、ということだ。
「了解いたしました。」
「この事に関しては深雪さんには言っては駄目よ? せめて『会議がある』…とでも言っておきなさい。間違ってはいないのですから。」
「そう伝えておきます、叔母上。」
「ええ、……ところで達也さん、この前のCM出演の事だけど、凄い人気ですよ。これなら任務も上手く進みそうですわね~。」
「……正直に言うと、非常に困っていますが、任務上慣れるべきかと思う事にしました。」
「ふふふ、そうよね、今日は達也さん、大変だったそうね~。さっきも帰宅途中で絡まれたのでしょう?」
「あまりにしつこさにさすがの俺も消してしまおうかと思ってしまいました。」
「あれは仕方ないわね。限度というものを通り越しているもの。安心しなさいな、ちゃんと手を打っておきましたから。」
「了解いたしました。」
「では、任務終了まで頑張ってくださいな。それでは今日はこれで。明日は楽しみにして待っているわ。」
達也はモニターに向かって一礼すると、それと同時に真夜とのテレビ電話回線が切れる。既に切れているかを確認してから達也は顔を上げる。
そしてソファに腰を下ろし、身体を背もたれに預けた時、深雪と水波が着替えを済ませて、急いでリビングのドアを開けて真夜の謁見を受けようとしたのであった。
眠い~~! だけど今日の魔法科スクマギイベ、頑張る。