魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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一方では陽気ですが…。


陽気な電話 (上)

 

 

 

 

 

 

 

 電話回線のコールが鳴り響く。

 

 達也は自分のある葛藤と心の中で闘い、結局電話に出るために靴を脱いでリビングへと向かって行った。その間二階で忙しなく動き回っている足音が聞こえる。恐らく、電話を掛けてきた相手の名を確認した水波が慌てて深雪に声を掛けているのだろう。動揺を隠せないほど慌ただしく準備し、それを深雪が咎めないという事は、そうなっても仕方ないと深雪でさえ思う人物…。

 達也はこの情報だけで電話の相手が誰だかすぐに気づく。すると、余計に出るのは嫌になったが、理屈では出た方が自分の理にかなっていると理解しているため、軽い反発はなしで電話に出る。

 

 リビングのモニターで早速映ったのは、達也が予想していた通りの人物だった。

 

 

 『御機嫌よう、達也さん。あら、深雪さんはいらっしゃらないのね~。」

 

 

 「申し訳ありません、ただいま帰宅したばかりですので、今着替えに行かせています。」

 

 

 どこからという事は言わない。言わなくても達也の服装はまだ一高の制服のままだ。学校から下校していたというのは目で見ればわかる。

 

 

 『そんなに気を使わなくてもいいのですよ? あなた達が生徒会での責務で帰りがこの時間帯になる事は知っていますから。』

 

 

 「そうですか、夜分までお待たせいたしまして、申し訳ありません。」

 

 

 二人とも形式上の挨拶を交わす。

 

 

 「…それで、一体何の御用でしょうか?深雪達が降りてこない内に終わらせるつもりなのでは? 叔母上。」

 

 

 モニターに映る人物に対して、達也は鋭い視線をぶつける。それを受け、作り笑いを面白そうに笑ってみせる真夜だった。

 

 

 『達也さんはやはり頭の回転がよくて、助かりますわ。』

 

 

 「大したことではありません。」

 

 

 真夜の一応褒め言葉をさらりと受け流す達也。

 

 だって達也にとっては難しい推測ではなかったのだから。電話が鳴って、達也が出るまでコールは鳴りまくっていた。一度も途切れることは無く。普通なら達也が出る前にすぐに水波が電話に出る事が今では当たり前なのだ。メイドである水波が雑用は自分がしますと言って、電話が鳴れば必ず水波が最初に出て、相手を確認し、深雪か達也へ回線を回すと言ったスタイルが定着しつつあった。それなのに、水波が出なかった事が達也には引っかかる出来事だった。

 水波が自分で決めた事を放っておく性格でない事は分かっている。だからもし出ないなら、それは故意だと思った。

 

 ではなぜ出なかったのか?

 

 事前に出なくてもよいと命令されていたとしたら話は通る。今の水波は深雪が主である。しかし深雪よりも上の人物なら、その人物の命令に従う所もある。つまり、水波が真夜に出なくてもよいと命令されたのなら、達也が出る前に水波が出なかった理由が説明できる。

 

 そして真夜が自分達の行動についてリアルタイムで情報を手にしているという事を知った。今日の帰りも色々あって、帰りがいつもより一時間以上も遅くなったのだ。それなのにタイミングよく電話がかかってきたし、先程真夜が自分達の帰りの時刻まで把握していると意味ありげに告げていたのを思い出し、自分達が帰宅するタイミングを見計らっていた事が理解できた。

 

 これによって、達也は真夜が自分に用事があって、それは深雪にも秘匿の物だと結論付けたのであった。

 

 

 




達也の頭の良さをうちの脳にも欲しいぜ~。

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