魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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やばいって! 達也がアイドルってばれたら~!!


気分の切り替え

 

 

 

 

 

 

 

 

 色々あった通学も一高の門を潜り抜けると嘘のように激減した。

 

 やっと少しは気を紛らわせることができると、安堵する達也は深雪を教室まで送迎し、自分の教室へ赴き、午前中の授業や実習を受けていくのであった。

 

 その間、達也の意識は課題に集中する事で、今朝の出来事を頭の片隅へと追い出す。

 

 

 今年新設された魔工科の授業のカリキュラムもある程度固まった事で、実習も増えてきた。今日も実習があり、実習内容は『ランダムに指定された魔法をパートナーが難なく使用可能できるように起動式を書き換える』である。

 

 課題の内容は達也にとってさほど難しくもない。しかしこれを行うのは、親睦を見据えた実技指導教員であるジェニファー教師の意図が入り混じっているからだ。

 

 元々魔工科のクラスには、元二科生だけでなく、元一科生もいる。

 

 割合で言うと、元二科生の方が少し多いくらいだ。転科する理由として、大半は魔工師を目指す者が集まった結果だが、やはり魔工科が開設されるまでの一年の間に根付いた互いに持ち合わせている優劣感によって、いざこざも多少あったりするのだ。四月はそれが授業中でも見られていた。

 

 この状況にため息を吐いたジェニファーは、まずは互いの事を分かり合えるようにと、ダッグを組ませてみる。それからダッグで協力しないと成功しない課題やどちらか一人でも課題が終わらなければ道連れにするなどといったやり方をする事にしたようだ。

 

 ジェニファーのこの考えは功を成し遂げ、徐々に生徒間であったプライドや尻込を取り除く事に成功し始めていた。

 

 達也としても、課題になればすぐに周りの声をシャットダウンできるので、無視はできるが(さすがにうるさかったら、一喝するかもしれないが。)、パートナーの方はそうはいかない。心優しい性格を持っているため、どうしてもいざこざがあれば、気になってしまう。

 

 

 「………美月、肩の力を抜け。あと、あいつらの事はほっといても平気だ。」

 

 

 「え…っ? は、はい…! ……ふぅ~。」

 

 

 出席番号順でのパートナー選びなので、隣同士の達也と美月は去年に引き続き、互いにパートナーとなって、実習を受けていた。

 今は、課題用のCADに提示された魔法を美月が使えるように、詳細なデータを取っている最中だ。いつものようにモニターに表示されている高速で流れる数字列を観察しながら、データを頭にインプットしている達也が、美月に注意する。

 身体的疲労もあるが、精神的ダメージというものは、身体的ダメージよりもCAD調整に影響を与えやすい。今、それぞれパートナ-と一緒に課題に取り組んでいる最中だが、納得いく調整がされなかったらしく、それがもとで喧嘩するクラスメイトに他のクラスメイト達が視線を一斉に向け、様子を窺っていた。もちろん美月も喧嘩しているクラスメイトが気になって、何度も振り向いて様子を窺い見る。その結果、精神状態に乱れが現れ始め、動揺からのデータの変化が起きたのであった。

 

 達也は美月も無理なく、最小の起動式で最高の魔法執行ができるようにするために、CADデータを真剣な表情で見つめ、キーボードオンリーの打ちこみを開始する。

 

 

 この時の達也の意識は完全に美月の魔法使用に対する調整をあっという間に施していた。すっかり気分転換も終わり、出来上がったCADを優しく美月の手に置き、美月は息を呑んで真剣な顔になって、頷くのだった。

 

 

 




精神安定しておかないと、魔法執行はまた今度って事になるぞ…。

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