魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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一風変わった達也様を見てみたいな~。


ヒヤヒヤ登校前

 

 

 

 

 

 

 

 

 テレビをつけて早々、その行為を後悔する達也と違い、深雪と水波は放送されている内容に見入る。

 

 

 「あ、この方は最近女性の方々から大人気の”RYU”さんですわ。…そうよね?水波ちゃん。」

 

 

 「はい、深雪様の仰られる通りです。最近では彼が出演したCMが大人気でして、CMで紹介されている商品の売り上げが鰻登り…とのことです。

  デビュー曲のダウンロード数も日を跨ぐことに増えていまして、ダウンロード曲ランキングではトップをキープしているまさにアイドルの流星と言える方かと。」

 

 

 そこまで詳細に説明するように入ってないはずなのだが、意気揚々として”RYU"に関する情報を答える水波の瞳は輝いていた。更に、深雪も水波の説明を聞きながら、うんうんと頷いている。いつもと変わらないように振る舞ってい入るが、達也は深雪が自分以外の男子と接する時の普段とは違う事に気づいた。明らかに”RYU"に興味を持っている。

 

 

 「そうなの? 凄い方なのね。この方って謎だって言われているみたいだけど?」

 

 

 テレビに流れているのは、ちょうどRYUが出演するCMだった。それを横目でチラチラと見る深雪を見て、達也は頭を抱えたい気持ちでいっぱいだった。深雪から言えば、達也が隣にいるのに、他の男性の話をするのはいかがなものかと思いながらも、水波が事細かく説明したために歯止めをかけるタイミングを逃してしまったのだ。そのために話を続けるしかなく、かといって興味のある様子を見せるのを嫌なので、その反対の興味がないけど、水波の話に付き合う形を取る事にした。…達也にはバレバレなのだけどね。

 

 

 「性別や芸名以外のプロフィールは公開されていませんので。ただミステリアスでもそこがいいという反応もありますし、クールなところがいいという意見も上がっていて、”RYU”様の人気へとつながっているようです。」

 

 

 (……ん? 水波、今、”さま”をつけていなかったか?)

 

 

 「確かに水波ちゃんの言う通りかもしれないわね。そこがまた魅力を引き出しているのですね。…さすが”RYU”様ですわね。」

 

 

 (…………深雪、お前もか。)

 

 

 興味がないと言う態度を取りながらも、興味がないと知らない情報や様付をしている深雪や水波の話を聞いて、達也は心ここに非ずの状態を作っていた。二人が話をしているその”RYU”が実は自分だという事を隠しながら、客観的情報を口にする二人にアイドルの自分がどうとらえられているのかを知った。それがなぜか一定以上の感情を持てない達也が恥ずかしく思うほど、むずかゆい事この上ない。

 

 もう心の中で二人の会話に呟くしか、達也に余裕はなかった。

 

 もしかしたらこの二人は自分がその”RYU"だと知っていて、話しているのかと恐れて冷や汗を掻く。そんな達也に深雪が話しかけてきた。

 

 

 「ふふふ、この方、御顔がお兄様に似ていらっしゃいますね?」

 

 

 「は!? …あ、……そ、そうか? 俺は……こんなにかっこよくはない。全くの別人だろ?」

 

 

 ドキッとする事を無邪気に語ってきた深雪の言葉に過剰に反応した達也は何度もどもる。その反応に深雪は軽く目を見開いて驚く。その顔を見て達也も『しまった!!!』と焦る。しかしこれ以上慌てると、自分が崩壊するような嫌な気分になったため、平常を装ってこの場の空気を変える作戦に出るのであった。

 

 

 「さぁ、二人とも、そろそろ出るぞ。このままだと遅刻してしまうかもしれない。」

 

 

 「え?もうそのようなお時間なのですか?では、後片付けさせていただきます。少々お時間下さいませ、お兄様。」

 

 

 そう言うと、キッチンへカップを下げに行き、今回は水波と担当を分けて後片付けをする。

 

 

 そうして、達也はヒヤヒヤした登校前を過ごし、個人電車に乗って、最寄駅まで行き、今日も一高へと深雪と水波を連れて登校するのであった。

 

 

 ………心はまだざわついていて、達也にしては珍しく一時限目は動揺をして、ちょっとしたミスをしてしまう。

 

 

 (うかつだった自分が嫌になって来るな…。)

 

 

 ため息を吐いて、一時限目の実技の課題を終わらせる。

 

 

 




一風は変わらなかったか? 辛うじてどもりまくっただけだな。

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