魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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達観している達也が普通の人間のようになったらどんなことになるんだろうってたまに思うよ。


アツアツ兄妹の朝

 

 

 

 

 

 

 

 

 八雲との修行も終わり、帰路に着いた達也を出迎えたのは、満面の笑顔で兄の帰りを待っていた深雪だった。少し後ろでは水波が付き従った状態で一緒に出迎えていた。

 

 

 「お兄様、お帰りなさいませ。シャワーの準備は出来てます。どうぞ汗をお流しください。」

 

 

 「ああ、ありがとう。いつもすまないな、深雪。」

 

 

 「いえ…、そんな事はありませんっ!」

 

 

 深雪の頭を撫でながら申し訳なさそうに苦笑する達也を見て、深雪はその必要ないと申す。実際に深雪は達也の世話をするのが、神への最高の奉仕と同等の位置づけをしているため、他の者に取られたり、なくなったりすれば、相当なショックを抱えるのは必須と言える。深雪にとってそれほどの事なので、想いを訴えるつもりで、達也に必死に告げる。

 

 

 「お兄様が申し訳なく思う事なぞ一つもありません! 深雪はお兄様のお役にたてることが何よりも幸せなのです! 例えお兄様にとって些細な事でも深雪はとても充実した気分で過ごせます。ですので、どうか…、『もうしなくてもいい』なんておっしゃらないでくださいませ。」

 

 

 達也の胸元を掴んで、下から達也の顔を窺いながらお願いする深雪の姿は、とても正気を保って見られるものではなかった。目は潤っていて、見上げる形で上目使いしている深雪は、元々容姿が老若男女問わず惚れ込むほどの美貌を持っている。その美貌で異性がキュンとするシチュエーションランキング上位に入るこの展開をすれば、完全にコロッと堕ちるだろう。現に、傍から見守っていた水波はあまりにもピンクワールドに包まれた二人を見続ける事が出来ず、赤面しながら目をあらぬ方向へ向けて、視界から二人を入れないように尽力していた。

 

 この場面にもし一条将輝が遭遇したら、達也に羨ましいという根深い嫉妬が生まれ、かつあまりにも美しすぎる深雪に更に惚れ込み、しばらくは頭の中が深雪一色になること間違いなしだ。

 

 そんな状況で達也はというと、目をハートにすることは無いものの、目を疑いたくなるくらい、可愛らしい深雪を見て、見惚れていた。しかし、それも数秒くらいなもので、一定以上の感情を持つ事が出来ない達也には、それが救いにもなっていた。

 

 

 (この点に関しては、母や叔母上に感謝してもいいかもしれないな…。)

 

 

 などと考える達也は、目の前の深雪に優しい目をして笑い掛け、心配いらないと言うように頬を撫でる。それが気持ちいいのか、深雪の顔もほっと緊張が解け、潤った目でうっとりと達也を見つめる。

 

 

 「言わないから。深雪がそう思ってくれているのなら、俺はお前のその言葉に甘えさせてもらうよ。俺は深雪に必要とされていてこそ、生きていられるのだから。」

 

 

 「……もう、お兄様ったら。」

 

 

 達也から捨てられる心配はいらないと悟った深雪は、嬉しそうに笑う。それを見て、達也も一緒に笑みを浮かべる。

 

 

 「…じゃ、そろそろシャワーを浴びさせてもらうよ。終わったら、深雪の作ってくれた朝食を一緒に食べよう。」

 

 

 「はい、畏まりました。どうぞ行ってらっしゃいませ、お兄様。」

 

 

 そろそろシャワーも浴びておかないと、登校する時間に間に合わなくなりそうだったため、深雪がすっかり気分が良くなったのを確認し、汗を掻いた身体を洗い流そうと、シャワーを浴びに風呂へと向かうのであった。それを見送る深雪は、スキップでもするような鼻歌を歌って、朝食の準備をするためにリビングへと向かう。

 

 その二人それぞれの後姿を見送った水波は、ようやく甘い空間が終わって、安堵するとともに、まだ一日が始まって間もないのに精神的疲労が溜まってしまうのだった。

 

 

 




達也を改変するには勇気がいるな~。

でも、好奇心が消えない。明日はどうなる事やら…。

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