八雲との話し合いを終えた達也は、二人で親密な話をしていた後とは思えないくらい、この後二人で凄まじい体術修行を行うのであった。結果はいつものように八雲にあしらわれる形で終わったが、八雲もまた成長してきている達也との組手は本当に本気を出さなければいけない時があり、余裕がなくなってきていることを悟られないように、達也を見送る時もいつもより笑みを深めていた。
八雲との恒例の早朝修行も終わり、寺へと続く坂を来た時と同じように、魔法で速めたスピードで駆け下りていく。通勤のために、自転車で坂を駆け下りていく地元の住人が自分を通り越して坂を下っていく達也を見て、驚愕のあまり、二度見するなり、「心臓が飛び出るかと思った~! あれって魔法なのか? すげ~な。」…と達也の後姿を見続けながら呟くのであった。
そんな通行人達が驚愕するくらいの走りを見せている(いつものトレーニングなので毎日見ている人もいるが、それでも感嘆するほどなのだ。)達也が、不意に住宅街の狭い路地にいきなり滑り込んだ。目撃者がいれば、こつ然と姿を消した達也に更に驚愕し、『忍者だ~~!!』と子供なら騒ぎ出しそうな展開になりそうだが、あいにく目撃者もおらず、その展開はない。
しかし、目の前にふと見覚えのある人物が立っていた。達也は、この人物の気配を感じたため、急遽路地に入ったのだった。
「尋ねられるのでしたら、こちらからお尋ねさせていただいたのですが。朝からご苦労様です。」
労いの言葉をとりあえず送る達也は、気怠けな様子を見せながらも話しは最後まで聞くつもりで会話が可能な距離まで近づく。
「いえ、私めも達也殿の御時間をいただきまして、恐れ入ります。何分、このような早朝しか達也殿と話せるお時間はありませんので。」
「……手短に用件をお願いします。」
自分に用件があるのは明らかだし、八雲との話し合いが予想以上に長かったため、いつもより帰りが遅くなっている事を懸念している達也が、手短にするように頼む。
相手の方もその点に関しては同意のようで、すぐさま用件を伝える。…といっても、胸ポケットから手紙サイズの封筒を取り出し、達也へ向けて渡しただけだが。
「達也殿へ奥様からのプレゼントで御座います。ぜひお受け取りください。」
封筒を差し出しながら、受け取るように言うのは、四葉家当主に仕える使用人序列一位の葉山さん、その人だ。
その人物が、受け取る事を条件だと言わんばかりに強い視線で達也を見つめる。
その視線を受けて、ため息を吐いた達也は、淡々とした動きで葉山さんから封筒を受け取り、中身を確認するため、封筒を開けるのであった。
いつの間にか寝落ちして、日が変わってしまっていた…。
そして、葉山さんが登場してきた~~!!