魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

367 / 453
年は佐伯の方が上なんだけど…。


同胞の反応 サイドストーリー後編

 

 

 

 

 

 

 

 

 心臓がパクパクと動悸を起こしているが、それを軍人として生きてきた経験からその事を悟らせない堂々とした振る舞いで見事に隠す佐伯。

 ついに本心を突いた佐伯の問いかけに真夜がどう答えるか、神経を尖らせて返事を待つ。

 

 そんな佐伯を焦らして、精神的安定を乱すかのように、人差し指を顎において、少し首を傾げて話すかどうか迷う演技をしている真夜を見て、佐伯は苛立ちを感じたが、逆に自分の質問が問題なかったという事が分かり、内心でほっとする。そのタイミングを見計らってかのように真夜が口を開く。

 

 

 『いいですわよ。 佐伯さんが理由もなく我々に対し、貴方の駒達を使って探っていたのではない事は分かっていますから。』

 

 

 真夜の言葉で佐伯は口を堅くする。

 

 佐伯が風間に命令して行っていたのは、最近の達也の様子を監視強化して実態を知る事だ。別に四葉家に対して動いていたつもりもない。しかし、真夜は佐伯たちの真意を知っていてなお、対象を我々=四葉だと言い切ったのだ。つまり、達也は四葉家で重要な任務を与えられ、それでアイドルをしている事になる。四葉家の任務に国防軍が勝手に模索する事はご法度だ。その事を真夜は言っているのだ。

 しかしこれには例外もある。

 

 

 『この間、テレビ局の飛行船が何者かの手によってハイジャックされ、達也が片付けた事案がありましたわよね?』

 

 

 「ええ、テレビ局にあの後問い合わせた時、突然武装した者達に乗っ取られたと。彼の証言も合わせると、大亜連合の手の者の可能性が高いと見立てています。」

 

 

 『佐伯さんの見立ては正しいですわ。私共も同じ見解で動いています。』

 

 

 「もしやその犯人たちが達也君がアイドルをしている事と関係しているのですか?」

 

 

 正解とでもいうように、笑みを深める真夜。

 

 

 『飛行船をハイジャックした犯人は実行犯でして、それを命じた者がいます。その者は、今は芸能界で私達の平穏を破壊しようと模索しているのですよ。ただ、なかなか動きが掴めないので、達也にアイドルとなって、芸能界入りしてもらい、探ってもらおうと思ったわけです。』

 

 

 「………彼を囮にするという事ですか?」

 

 

 今度は佐伯が訝しく思い、眉を吊り上げる。 人権を尊重する傾向を持つ佐伯にとって、どこに潜んでいるか分からない敵の中に囮として入らせる事に憤りを感じる。

 

 

 『そのつもりはないですわ。そもそも達也は囮とも思っていません。例え囮だったとしてもあの子なら気にもせずに任務をこなすでしょう。

  それにまだこの任務の意図をあの子には話していないのです。』

 

 

 「……それはどうして、……いや、答えなくて結構だ。」

 

 

 達也に任務の意図を話していない事に驚いた佐伯は理由を聞こうとしてやめた。佐伯は真夜が何故言わなかったのか、瞬時に理解したからだ。

 

 

 「四葉殿の考えている事はあらかた理解した。しかしそれならそうと、私には話を通していただけなければ困ります。今後はこのような事は止めて頂きたい。」

 

 

 『ええ。今回だけだとお約束いたします。それでもそういう事なので、この任務ですが、佐伯さん達、独立魔装大隊にも協力していただきたいのですが、よろしいかしら?』

 

 

 「ふん、元々そのつもりで、連絡をしてきたのでしょう? ………それで私は何をすればよいのですか?言っておきますが、後始末だけというのは受け付けません。」

 

 

 ここまで騒がせていて、任務が終了した際に死体処理や現場確保等の雑務はさすがに佐伯にとって、メリットも感じられないし、これまで監視にあたっていた部下達にも申し訳ない。

 それに四葉からの独立魔装大隊への依頼は、軍や政府の上層部の連中には何としてもコネクションを繋いでおきたい絶好の機会だ。佐伯から見れば、何をバカな事を考えているのだと思うが、四葉の悪名やその実績等も知っている者からすれば、仕方ない事かもしれない。

 

 

 『いえ、せっかくですので色々とご協力いただければと。その事で今度、改めてお話しさせていただきたいですので、こちらへいらっしゃってくださいな。』

 

 

 四葉本家で待っていると告げる真夜を見て、どれほど秘密性を強いる任務なのか、佐伯は息を呑んだ。

 

 

 『ああ、ですがお呼びする方は佐伯さんの部下の風間さんと先生のお孫さんの二人だけでお願いします。』

 

 

 「ああ、分かった。二人には今の話を話してもよいのか?」

 

 

 『そうですわね~…、私がお二人を招いている事だけお伝えくださいな。今回の事情等はこちらでまたじっくりとお話しさせていただきますので。』

 

 

 「…理解した。それでは二人にはその旨を伝えておくことにする。」

 

 

 『お願いしますわ、佐伯さん。それではお話はこの辺で。

  今度はお茶でもゆっくり飲みながら、お話ししましょう。』

 

 

 最後まで作り笑いをしていた真夜が消え、モニターが暗くなる。

 

 佐伯は回線が切れている事を何度もチェックし、溜めこんでいた息を吐き出し、生気を味わう。

 

 それから、いつも通りの威厳がある、それでいて優しそうな外見を備えて、回線を繋いで風間を呼ぶのであった。

 

 

 




ついに明かされた達也アイドル計画の真相…。原作ともつながっていました~!!

それにしても、佐伯も階級の高い軍人のだけあって、真夜の思考を読んでしまうなんて、すごいよな~。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。