魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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早く達也、深雪を宥めてくれ~。


友人たちの反応 深雪&水波編その2

 

 

 

 

 

 

 

 

 日も暮れはじめた頃、やっと帰宅してきた達也が一番初めに視線に入ったのは、物凄く笑みを浮かべている深雪とその斜め後ろで控えている顔色が真っ青で、随分と疲れている水波の正反対の表情だった。

 この二人のあまりにも違った反応の出迎えにはさすがに達也も居心地が悪く、非常に気になったので、深雪に聞いてみる事にした。

 

 

 「どうした?深雪。 いつもと違って、楽しそうだが?」

 

 

 「…そうですか? 私はいつも通りです、お兄様。それよりもお兄様、玄関に立たせたままにしてしまい、申し訳ありませんでした。どうぞ、上がってください。」

 

 

 ほんの一瞬だけ間があったが、何もないと言って、達也の手を取り、リビングへ誘導しようとする深雪にされるがまま、リビングに入ってくる。

 

 

 (………ん? なんだ? この何とも言えない空気は…。)

 

 

 深雪の一瞬の間で、深雪が何かを隠している事は悟った達也だったが、深雪が言いたくないのならそれで良いと納得してしまったため、あっさりと白旗を上げた。それからリビングに入ったのはいいんだが、妙な感じがした。リビングの配置は全く変わっていない。今朝出かける前と同じだ。しかし、なぜか違和感を感じる。刺客的な意味ではなく、感覚的なもので。

 

 それがいまいちピンと来なくて、ソファで寛いでいてほしいと深雪に頼まれて達也は腰かけながら、考え込んでいた。深雪は達也が座った事を確認すると、キッチンの方へ赴き、コーヒーを淹れるために湯を沸かし、豆を挽き始めた。仕事を取られた水波はムスッとした顔をするが、一緒に暮らし始めて約一か月経ち、深雪のブラコンぷりには、諦めも肝心だと学んできたので、すぐに平常心に戻る。しかしまだ完全に譲った訳ではないので、お手伝いという名目で準備に携わろうとする。

 

 

 意を決してキッチンへと向かい、深雪とまた静かなる戦いが起きようとするのを、視界で確認しつつ、口出しはせずにまた先程の違和感の事を考え始める。普段ならそこまで気にするような性格ではないのだが、キッチンで二人が何か話している(穏やかではない雰囲気で)のを聞いていると、関係がまだ良好でないのではないかと思ってしまう。もしそれなら、休日に深雪を置いて、出かける確率を減らすしかない。つまり、水波が司波家へ訪れる前の頻度に戻すという事だ。達也は自分が出かけている間に二人で何かトラブルが起きているのではないか…、と思った。そしてその事を深雪は言いだせないのではないかと…。

 

 そう話が進むと、一旦は納得したが、やはり解決しておいた方が今後の動きを組立しやすくなると判断し、今に至って、絶賛思考巡らせ中である。

 

 

 足を組んで、ソファーの背もたれに身体を預けて深く考え事をし始めた達也の耳には、互いに譲る気を見せない深雪と水波の含みのある言い合いがBGMとなって入るのだった。

 

 

 




深雪と水波の編だけど、達也を導入してみた。だって、このままじゃ、水波一人で深雪の暴走を止める事になるもん。


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