「……お兄様、お帰り遅いわね。」
「そうですか? 達也様なら今日はFLTに行かれると仰っておりましたし、帰りは遅くなるとも、お出かけの際に仰られてました。」
学校が休みの休日で、深雪と水波は自宅で寛いでいた。しかし、達也の姿は何処にもいない。今日はFLTで完全思考型CADの実験検証をするために、朝から取り組んでいた。達也がシルバーであり、休日の際はFLTや独立魔装大隊の訓練に赴いている事は知っている水波は深雪が何を考えているか、分からなかった。
試しに時計を見ても、まだお昼の真っただ中。日も暮れていないし、遅いと言うほどの時間でもない。今までも大体帰りはいつも夕方だった。それを考慮してもやはり深雪の言った事が当てはまるほど遅いという訳でもない。
不思議で首を傾げたくなったが、主に楯突く様な真似はしたくなかったので、口元まで出そうになっていた言葉を呑み込む。そして別の言葉を上手く隠せるように祈りながら話しかける。
「もしかしたら、研究に集中していて時間をわすれているのかもしれないです。」
「それはないわね。お兄様はたとえ研究に集中していても、時間は厳守する方ですから。お兄様の頭の中のスケジュールはびっしり詰まっていますし、計画的に取り組まないといけないでしょう?」
「…………そうですね、失言でした。申し訳ありません。」
内心では、達也絶対主義を何よりも優先している深雪に対し、呆れを感じていた水波は、まだ帰ってこないのかと首を長くする深雪を見て、達也も大変だなと思うのであった。
そんな呆れかえっていつつも、水波に見守られている深雪はというと、胸の奥でざわつく謎のざわめきが分からぬまま、達也の帰りを待つ。
達也の帰りを待つには早すぎるのは分かっている。
しかし、妙な胸騒ぎがして、落ち着かない。
だから、いつもなら思わない事も想ってしまう。
(お兄様…、もしかして私に嘘をついていませんか? 本当はFLTに行っていないとか?
……まさかだと思いますけど。)
本当はFLTに行っていないのではないかと考え始めてしまう深雪。胸騒ぎの理由を達也と結びつけるのはどうかと思うが、実際にその通りなのである。
達也は今日は本当にFLTに向かって、研究を続けている。しかし、ここ最近は、FLTに行くと言って、アイドル活動に向かっていたから深雪の勘は鋭く当たっているのだ。その勘の鋭さに深雪に恐れを抱くかもしれないが。
もしかしたら今までの状況と似ていて、それが募って不安が爆発していたのかもしれない。
とにかく深雪は達也を求めて、塞ぎこんでいき、時刻が夕刻に近づいて行く毎に拗ねていくのであった。
その様子は水波が身の危険を感じて、こっそりと防寒具を傍らに用意するほどだと言ったらわかるだろう…。
すみません!! まさかの寝落ちで、投稿が間に合わず!
心地よく眠っていた少し前の自分を叩き起こしたい気分だぜ…!