「ほのか、どうだった?」
「うん…、一気に疲れたかな…。」
「そう? でも肌ぷにぷにしてる。まずはいい感じ。」
「んもう…、雫、くすぐったいよ~。」
エステも終わり、店から出てきた二人は、見違えるように肌が綺麗になっており、二人を遠目から見惚れている異性が多かった。(恋人連れている男性達は、恋人から嫉妬と蔑む視線を受けたり、足の甲を尖ったヒールで思い切り踏まれたりと災難に観まわれたが。)
そんな事が周囲で起きている事は知らず、雫とほのかは次の店に向かう。その間歩きながら、雫がほのかのほっぺもつんつんと突いて弄ぶ。それをほのかは先程のエステの際のマッサージで身体が敏感になっているため、ほっぺを突かれているだけでもくすぐったく感じ、笑いを溢していた。そのお蔭で、お腹が捻じれるくらい笑った事で披露を既に感じていたが、楽しい気分になって、次の店に向かっている間、雫とアイスを食べたり、ガールズトークをして精神を回復していった。(疲労困ぱいと言っても、マッサージのお蔭で身体的疲労は取れたが、エステの間ずっと笑いっぱなしだったために精神的疲労は溜まっていたからだ。)
楽しい時間を過ごしながら辿り着いた店は、美容院だった。
ここではヘアメイクだけでなく、ネイル、メイク、パーティードレスや着物の着付けまで行っているお店だ。
早速店に悠々と入る雫の後に続いてほのかも入店する。
「「「いらっしゃいませ~!」」」
店内に店員たちの声が重なって響く。そして一人の女性スタッフが声を掛けてきた。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなコースをお望みか、お決まりでしょうか?」
「うん、この子の髪を滑らかにして、毛先も整えてほしい。」
「はい、畏まりました。では当店の会員証はお持ちでしょうか?」
「はい、これ。」
雫が財布の中から黒いカードを出す。カード番号や店の名前等がゴールドで記されていて、見ただけでも一風違う雰囲気を感じる。それはカードを手渡された女性スタッフも同じで、会員証を見た瞬間、ごくりと息を呑んだ。すると次の瞬間、雫とほのかに腰が90度曲っているほど、かなり力の入った最上級の丁寧なお辞儀をした後、受付へと戻り、ゴールドの小さな鐘を数度鳴らした。
すると、奥から店員が続々と現れ、先程の女性スタッフが説明をする。その間他の客を担当していた店員たちは驚いた顔をしたと思ったら、背筋を伸ばし、スピードをアップさせ、真剣な赴きを見せ始めた。
突然客対応が真面目になったのを見て、ほのかが雫に話しかける。
「雫? 何をしているんだと思う?」
「ほのかの髪を煌びやかにするために、それぞれの担当と打ち合わせしているんだよ。あの様子なら間違いなく失敗はないから安心して。」
「そ、そんなに大袈裟にしなくて良いよ~! 私、雫と同じお嬢様じゃないんだから、払えないよ!」
「大丈夫。パパから既に了承済み。それに今からキャンセルなんてできない。」
「そんなの悪いよ! いつもお世話になっていて、申し訳ないのに…。」
「じゃあ、これが終わったら、下の階の喫茶店で美味しいケーキがあるみたいだから、そこではほのかのおごりで構わないから。」
「……それだったら、別にいいよ。」
「交渉成立。」
ピースサインを決めた雫は、準備が終わったと呼びに来た店員に連れられてほのかの隣の席に座る。今回は、ほのかだけで雫は見学だ。
ほのかは親友であるとはいえ、雫にずっと見られ続ける事に羞恥を感じたが、せめてシャンプーのときは視線から解放されると思い、スルーするように心がけるのであった。
「お待たせしました。それではカットの前に、シャンプーで髪を洗わせていただきます。」
優しそうな女性スタッフが声を掛けてきて、ほのかは礼を言う。
そしてこの後、ほのかの様子が急変するのだった…。
ほのかのテンションが上昇するのか!!?