雫に連れられてやってきたのは、最近できたばかりのショッピングモールだった。
「わぁ~! 素敵なお店がいっぱいだね!雫!」
「うん、なかなか品ぞろえも豊富だし、それに見合った値段で良いと思う。」
モール内の数多くの専門店に目を奪われながら歩くほのかと雫。休日の時に二人でショッピングしているため、すっかりいつもの気持ちで楽しむほのか。雫も楽しむほのかを見て、ポーカーフェイスの顔にうっすらと笑みを浮かべる。
しかし、雫がここにほのかを連れてきたのはこれだけではない。
ある程度洋服や小物を見終わった後、雫はほのかをあるお店に連れて行く。
「…雫? なんでここ?」
「女が自分を磨く過程で、これも必要な事があるから。」
ほのかの問いに応えながらも、二人の視線は店の前に置かれている看板に固定されている。
そこは、会員制のエステ&マッサージサロンだったのだ。
エステとか言った事もないほのかは、入る前から怖気着く。それを心配ないと言って雫がほのかの背中を押して、入店しようとする。
「ちょっと待って! 雫! 私はいいよ~! 」
「だめ。 ほのかは素材がいいんだから、もっとそれをアピールするべき。」
「で、でもこういう所って高いんじゃ…。」
「大丈夫。私も一緒にするから。パパからも了承済み。」
「い、いつの間に…。あ、お金出してもらうなんて悪いよ~!」
「諦めて。パパ、ああなったら何を言っても無理。」
ほのかは雫の父親である北山潮から少なくない小遣いをもらっている。本当に申し訳ないと思っているが、難なく断りづらいため、困っている。しかし、本当の娘のように接してくれるので、潮の気遣いにも応えたいと思っているほのかは、心が揺らぎ始めた。
雫は後もう少しだと最後の押しを口にする。
「それにほのか…。 肌もぴちぴちの綺麗になったほのかを見れば、達也さんから褒めてもらえるし、深雪から少しの間、達也さんを引きはがして話すことだってできる。
………さぁ、どうする? ほのか。」
メフィストフェレスのように、誘惑するような声音で囁いてくる雫。それによりほのかは夢のような達也との時間を想像し、陥落するのであった。
(よし、堕ちた…!)
ほのかに見えないようにガッツポーズを取った雫は、結審したような顔をするほのかと一緒にサロンの中へと入っていった。
「きゃ~~。や、やめ……!! も、もう……! 許し…て……。」
その後、サロン内から荒い息と笑い声、助けを求める言葉が飛び交う。
それに一方が、「がんばって。」「達也さんに綺麗になって会うんでしょ?」…という励ましなのか、気合入れなのか、掛け声も響くのであった。
肌ピチピチ作戦だな。深雪も手入れしているだろうし、雫の見方も間違っていないね!
…では明日は、ROSEの番外編として花見をするので、一旦戻りますね~。
此方も面白いので、ぜひ見てくださいな。