魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

35 / 453

 泥沼にはまっていく予感が…。


得体の知れない魔の手

 

 

 

 

 人型戦車との戦い後、シンバと食事しながら、帝都の事やシンバの故郷の話などを語って過ごした。あれだけの戦闘した後にまたイベントに参戦するような気分ではなかったし、友達となったシンバにもいろいろ話を聞きたかったからだ。そうして、夕暮れまで一緒に帝都を観光案内した後、シンバは知り合いの店に泊めてもらう事になっているというからとその店の前で別れ、くろちゃんとちゃにゃんは帰路につく。

 

 

 「思い返せば、今日はホント大変だったね、くろちゃん。」

 

 

 「そうだよね。でも結局誰があんな人型戦車を呼び出したのか分からないよね。」

 

 

 二人はあの後、駆けつけてきたイベントクエスト運営委員に事情を話し、救援要請が誰がしたのか聞いてみた。最初はくろちゃん達の説明に訝しく思っていた運営委員も残骸と化した人型戦車を調べる内に真剣で、眉間に皺を作り出したので、くろちゃん達の事情説明を信じ、本部に確認を取ってくれた。しかし、返答は意外なものだった。

 

 

 「確かに、君達には救援要請がされていたみたいだけど、要請者が不明だっただけでなく、君達と同じ距離にいた別の魔法師達には救援要請が届いていなかったらしい。普通は救援要請した者の近くにいる魔法師には必ず要請報告しているんだけどな。」

 

 

 説明しながら運営本部でもよく把握出来ていないと頭をかきながら答えてくれた。その答えにくろちゃん達は運営側の管理ミスという考えは頭から消した。そして、ちゃにゃんは確認のつもりで聞いてみた。

 

 

 「では、要請が何者かに故意に行われたという事はあれは運営側が用意したものではないという事ですね?」

 

 

 人型戦車の残骸を指さして、運営側がイベントクエストに出さなくても独自に製作した物かという意味も兼て問う。

 

 その意味を理解した運営委員は被りを入れ、全否定する。

 

 

 「あんなに戦闘面を重視し、強化した巧妙な設計や攻撃力を強めた起動式を取り入れた危ない人型戦車を作ったりしないよ。イベントクエストではあくまで参戦者の能力に合った戦い方をするようにプログラムしている。過度な攻撃をするようにはしていない!」

 

 話している間に怒りを露わにする運営委員。落ち着くように持っていたぶどうジューズをちゃにゃんは手渡す。それを受け取り、喉を潤わせた運営委員はイベントで呼び出した化成体や人型戦車の戦い方を教えてくれた。(極秘だが、特別に話してくれた)

 

 

 呼び出された化成体や人型戦車は呼び出した魔法師の顔認証を行い、運営本部が管理する参戦者のリストからその魔法師の得意魔法や不得意魔法、戦闘スタイル、分析力などのデータをピックアップし、それをもとにした戦いをする。ある時はその魔法師の得意な魔法を使える展開に持っていき、経験を積ませる。ある時はピンチを作り、不得意な魔法を使うように導き、撃退させる。そうする事で魔法師の向上を図っているのだと得意げに話してくれた。

 

 

 運営委員の説明を聞き、納得した二人は伝える事は伝え、シンバとこの場を離れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 ギルドに帰ってきた二人は今日の出来事をギルドメンバーに話した。それを聞いたみんなというと…

 

 

 「それはやばかったな。 」

 

 

 「戦闘にも慣れてきた成果だね。 よく頑張ったよ。」

 

 

 「そういえば、結局イベントクエストのポイントってどうなったんだ?」

 

 

 いつも通りにのんきに話すメンバーにあっけにとられつつも聞かれた質問に答えるくろちゃん。

 

 

 「うん、一応救援で参戦したし、人型戦車も倒したから、エクストリームレベル撃退分の戦闘ポイントはもらった。ただし、それに付随する報酬分はなしって。」

 

 

 「まぁ、そうだろうな~。運営本部も知らない人型戦車と戦ったんだから。本来はイベントとまったく関係はないから報酬どころかポイントさえもらえないけど、くろちゃん達は救援要請を受けて戦ったわけだから、半分融通させるしかなかったんだな。」

 

 

 運営本部の心の内を暴露するホームズは可愛そうにとここにはいない運営本部の人に手を合わせる。

 

 

 「わかった。私たちも同じイベントに参加している仲間だ。くろちゃんの話しっかり受け取ったから、今日はもう休んだ方がいい。ちゃにゃんも。私たちも気を付けてイベントに臨むからさ。」

 

 

 マサユキに体を休めるように言われた二人は確かに今日の予想外の戦闘で溜まった疲労で眠気に襲われていた。まだ言い足りない感はあったが、酷くなった眠気には逆らえず、部屋へと向かう。

 

 

 二人が階段を上がっていき、寮部屋へと向かったのを見送ったギルドメンバーはさっきまでのんきにしていた場の空気を変え、一気に重苦しい空気になった。

 

 

 「ついに動き出してきたっぽいね。」

 

 

 「狙いはROSEかな?」

 

 

 「だろうな。しかし、それだとターゲットがまだ判別で…」

 

 

 「それはもうはっきりしている。 みんななら相手を倒す時、まずどこに目を付ける?」

 

 

 「………そういう事か。 そう考えれば、全て納得するな~。」

 

 

 「今まで遠まわしだったけど、とうとう向こうも切羽詰ってきたって事ね~。」

 

 

 「むしろ、これは暴走に近いような感じがする。カンだけど。」

 

 

 「マサユキ、で、どうする?」

 

 

 みんなが口々にしゃべる中、暁彰がマサユキの意見を求める。

 

 

 「これよりただいまをもって常時、警戒していてくれ。ただし、あくまで隠密にだ。気付かれてはいけないからな。 何かあったらすぐに連絡するように!」

 

 

 「「「「「「「「「「「「「「「「おお!!!」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうしてこの場のギルドメンバー全員の意志がこの夜一致団結した。

 

 

 

 

 まだくろちゃん達には言えない秘密を抱えている仲間たち。果たしてそれはROSEにどんな未来を運ぶのか…。

 

 





 本当にどんな未来だろう? 覗き大会in温泉とか?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。