魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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エリカ、新たな道へ。


友人たちの反応 エリカ編その6

 

 

 

 

 

 

 

 当てもなく街中を歩いてたエリカはすぐ隣でいきなり騒ぎ出した同じ年頃の少女達に視線を向けてみた。一瞬、襲撃があったのかと横浜事変の事を思い出し、どうせならテロリスト相手にストレス発散するかと意気込む。しかしそれは自分の勘違いだという事を少女たちの言動で気づいた。

 

 

 「ああ~~!! RYUがCMに出てる~~!! キャ~~!! かっこいい~~!!」

 

 

 「あんな大画面でアップされるなんて~!! 生きていてよかった~~!!」

 

 

 「家に帰ったら、絶対に録画して、保存しとくんだ~!!」

 

 

 「あ、私も~!!」

 

 

 高層ビルの大型モニターに映るCM広告をうっとりとしながら黄色い悲鳴を上げる少女たちを見て、エリカは呆れている事を隠さずにため息を吐く。道端で立ち止まっていられたり、いきなり悲鳴を上げられれば驚くから、公共の場での配慮を考えるべきなんじゃない?…と、心の中で呟いた。

 これがエリカの燻っていた怒りを和らげる効果を出したため、興が冷めたという顔で歩き始めた…が、すぐに足を止める。一旦冷静になったお蔭で周りの視界が広がったと共に驚く。なんだって、エリカの見渡す辺り至る所で少女や女性達が足を止め、一直線で視線がモニターに集中していた。みんなの表情が同じ顔で、うっとりしていた。

 

 ここまでの光景を見ると、エリカも気になってくる。

 

 

 そこでついにエリカもモニターに顔を向け、CMを見て見る事にした。すると画面にはちょうどCMが始まったばかりで、美少女と青年が舞踏会で踊っていた。そして二人きりになって、告白された。(この告白シーンに入った途端、CMを見ていた世の女性達は失神を起こしたり、立ちくらみをするという現状に見舞われるのであった。)それからは二人で商品のシャンプーを紹介していた。そしてCMが終わり、もう一つのCMが始まり、こちらの方では世の女性達はうんうんと頷いて、頑張れ!…と応援を送っていた。

 

 CMを見終わって、未だにまたCMが見られないかと期待して立ち止まっている少女達から離れ、再び歩き出すエリカ。

 

 この時のエリカは若干顔が赤くなっていた。

 

 

 「確かにあれなら悲鳴あげても仕方ないかも…。あんな、どアップで髪にキスされながら告白なんて…私じゃないけどね! されたら…、ドキドキするだろうな~。」

 

 

 初めに見たCMの方が印象強く残り、動悸を落ち着かせようとするエリカ。しかし、エリカがドキドキしているのは理由があった。それは…

 

 

 (なんかさっきの青年…、達也君に似ていた気がしたけど? あの何もかも見透かして奥にまで入ってくるような目…。 それに大人な雰囲気も。)

 

 

 そう…、エリカはCMに出ていた青年が達也に似ていて、その達也に告白されたという妄想が働いたためにドキドキしていたのだ!

 

 

 「そんな訳ないのにね~! 私って馬鹿だな~!」

 

 

 達也が芸能界で仕事なんてするような人物ではないのは知っている。たまに美月と幹比古、レオ、達也と一緒に世間話をした際、芸能界でのネタになると興味ない素振りを見せていた達也を覚えている。それにパラサイトの騒ぎの際に達也の正体…(達也は答えていないが)気付いたエリカは、その正体を知られるような真似をするとはどうしても思えず、ふと浮かんだ考えを切り捨てた。

 (しかしエリカの考えは全て当たっているんだけどね。)

 

 

 エリカはCMから達也を思い出し、照れ笑いをこっそりと見せた。そして今まで怒っていた事が馬鹿馬鹿しいと思い始めた。

 

 達也と出会ってから、去年だけで色々事件があって、その度に達也たちと乗り越え、いつしか毎日が楽しくなっていた。それは修次とのことでいじけていて、稽古に力が入らなかったのに、また稽古に力を入れられるようになった事。再び剣と向き合うきっかけをくれた達也には心から感謝している。そしてそれは、新たなる密かな想いになった…。

 

 

 今は、達也たちと過ごす学校生活を大事にしたいから、このままの関係を続けたい。しかし放っておかれるような事はされたくないから、ちょっかいはするが。

 

 

 達也への密かな想いをCMを通して改めて実感したエリカは、それほど修次の事を意識しないようになる。

 

 すっかり気持ちに整理つけたエリカは、帰路に着く事にする。

 

 方向転換し、歩き始めたが、ふと達也に似ている青年の事を思い出したエリカは、近くのショッピングモールへ入り、寄り道するのであった。

 

 

 「確かあの達也君に似た人、あの子たちが”RYU”って言っていたわよね。…ちょっと私も新しいシャンプー欲しかったし、買ってみよっかな?」

 

 

 自分の紅い髪を一房抓み、それを視界に入れ、照れ笑いをするエリカ。その後、無事にシャンプー『プリンセス』MOONを購入したエリカは鼻歌を機嫌よく奏でて、帰宅するのであった。

 

 

 

 ちなみに、帰宅すると修次と摩利がいて、腕を組んで廊下を歩いていたため、さっそく注意するのだった。もう昔のように修次への想いはないが、尊敬する兄の不純交際を正すのは妹の使命だと捉え、修次への追及は止めずに続けていくのだ。これからも…。

 

 

 

 

 

 




よし、今日でエリカ編は終わり!!

達也のCMのお蔭で、エリカの機嫌は良くなったし、売り上げにも協力してくれたし、いいこと尽くしだな!

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