魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

342 / 453
女豹だったエリカが…!
そしてエリカのちょっとした過去を披露します!(自己解釈というか、こんな過去だったんだと仮定してみた)


友人たちの反応 エリカ編その5

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……という出来事があって、エリカが待ちへと気晴らしに来たのだが、あれから数時間ぶらりと歩いても怒りは収まらないのが現状だ。

 

 

 「ああ~、もう! 次兄上の目は節穴すぎる! あの女に現抜かすなんて…!!」

 

 

 今も独り言が止まらないエリカ。

 

 今の自分の状態はエリカ自身も十分に理解しているため、帰ろうともしないし、ショッピングしたいという気分でもない。(今帰ったら、修次と摩利のイチャイチャを見ないといけないから幸いかもしれない。)

 

 しかしいつもならこんなに怒り続けるエリカではない。エリカは物事には執着する事がない。だから怒ったとしてもすぐに興が冷めたという感じで突然白けるのがパターンだった。それが今回はなく、未だに修次や摩利に怒りを露わにしている。

 

 その理由は、今まで生きてきたエリカの人生に関係している。

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 エリカは幼少時、妾の母親と共に千葉家の離れで暮らしていたが、千葉家では冷遇されていた。実の父親である千葉家当主には父親として接せられた記憶はなく、制裁との間に生まれた長女も妾の子であるエリカに悪戯や見下す態度を取られ続けた。幼いながらも千葉家に歓迎されていなかったエリカは、それを受け入れる一方、もっと自分の地位を確固なるものにしようと剣術も自ら稽古し始めた。苦しい生活だったが、エリカが冷遇される千葉家で真っ直ぐに生きてこれたのは修次の存在があったお蔭だ。

 

 稽古で身体が傷だらけになるエリカにいつも優しく手当してあげたり、暇を見つければ離れまでやってきて、一緒に遊んだりとエリカを家族として接してくれた。(たまに長男の寿和もからかいながらも三人で庭で遊んだりした。)

 

 そんな日々がエリカには千葉家での一時の幸せの時間で、修次にはいつの間にか兄以上の感情を持つようになっていた。

 剣術にも優れた才能を持っているだけに強く、それでいて優しい修次に憧れたエリカは兄妹として過ごせるだけでも嬉しかった。

 

 しかし、エリカが中学生の時、それは壊れた。

 

 修次が剣術を習いに来ていた門下生と交際することになったからだ。仲睦まじく稽古終わりにタオルを差し入れたり、飲み物を渡して楽しそうにじゃれ合いながら話す二人を見て、胸がつぶれそうに痛みに襲われた。

 

 

 (それはいつも私が次兄上にしていたのに…。 何で私の時より嬉しそうに笑うの?…次兄上。)

 

 

 自分には見せてくれたことがなかった笑顔を他の女に向けている光景を見て、エリカはチクチクと胸が痛んだ。その夜は、私室のベッドでうつ伏せになり、枕で顔を強く押し付け、ざんざん泣きまくったエリカだった。

 

 これがエリカの初恋であり、失恋した時だった…。

 

 

 それからは必死に磨いてきた剣術も真剣味が弱まり、朝稽古もサボる事が増えた。…修次の顔をまともに見れないから。そしてあの女…摩利もやってくるから。

 

 とてもじゃないけど、二人を見て温かい目で見守る事はまだできなかった。

 

 それに、剣術をずっと続けていたのは、父親に認めてもらうためであるが、それよりも修次と一緒にいられる時間や褒め言葉が嬉しくて、それが折れそうになるエリカの心を支えてくれていた。

 それが今、失った事でエリカはどうしても目標を見つけられずに稽古にも顔を出さず、学校が終わっても当てのない散策をするようになった。

 

 しかし不意に態度が変わったエリカを心配して、修次が部屋を訪れるようになり、稽古に復帰できるようになってほしいという気持ちで、エリカのいない間の稽古の話を語った。ただ稽古の話というよりかは、「恋人が腕をまた上げた!」「この前はあの人を負かしたんだ!」…と、恋人の話が主な会話のネタになっていた。終いには、新しい剣術を編み出したと熱の入った声で語るほど。

 これが還って、エリカの心の傷に刺さった。

 

 

 (…次兄上は変わられてしまった。もう私の知っているあの頃の次兄上じゃない…。

  …許さない。……許さないんだから!)

 

 

 今日もいい話ができたと思い、修次がエリカの部屋を後にする。それを見送ったエリカは、断固として修次と摩利の交際を認めないと誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 そしてその誓いの証にと、長かった紅い髪をバッサリと切り、ショートヘアにしたのであった。

 

 

 ………失恋した修次への気持ちも一緒に綺麗さっぱりする目的も添えて。

 

 

 




今回は過去編になってしまったな~。
ずっといつかは書いてみたいと思っていたんだよ!幹比古が「エリカが長い髪を切った時はビックリした」と言った時から実はこういういきさつがあったのではという妄想が生まれてね~…。

よし、明日でエリカ編は終わり~!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。