魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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 友との出会いは最高の瞬間!


窮地での出会い

 

 

 

 

 

  絶対絶命のピンチに陥ったくろちゃんとちゃにゃんに人型戦車が散弾銃を豪快に撃ってきた。咄嗟にちゃにゃんが単一の移動系魔法で瓦礫を浮かし、盾にした。更に距離を取るために瓦礫を移動させ、積木みたいにして壁を作ったり、ジグザグに配置する事で接近する時間を稼いだ。

 

 

 「マジやばす!! ちゃにゃんが咄嗟の判断で魔法使ってなかったら、今頃は蜂の巣状態になってたね~。」

 

 

 「くろちゃん、それは笑えないから。せめてチーズって言って。美味しいから。」

 

 

 「私ら、食べ物かい!」

 

 

 危機を脱して冗談を言うほど精神面が回復した二人は再度挑戦しようとする。が、人型戦車の獰猛な攻撃は止まず、さらにヒートアップする。なんと、散弾銃の雨が終わったと思ったら、広範囲の火炎放射を放ってきた。あっという間に火の川となる。二人は瓦礫に隠れたまま動けずにいた。

 

 

 「ちょ! 反則じゃない! これ!」

 

 

 「反則も何も、存在そのものが反則だよ。くろちゃん、今更すぎ。」

 

 

 「これじゃ、近づけないよ~! 一歩でも瓦礫から出ると、豚の丸焼きだから!」

 

 

 「大丈夫! くろちゃんはそんなに太ってないから”豚の丸焼き”より”馬の丸焼き”だから。 まぁ、それはよこに置いといて。 多分武器自体の威力もそうだけど、あの火炎放射、魔法で強化しているんだよ。」

 

 

 「…ちゃにゃん。鋭い指摘ありがとうだけど、ほっとかれたら寂しいよ~。

  きぃあああああ~~~!!」

 

 

 遣り取り中に突然くろちゃんが悲鳴を上げながら瓦礫から出ないぎりぎりの距離を保ちながら走り回った。背中に手を添えて。

 

 

 「熱っ!! あちちちち! 背中が~!!」

 

 

 「ああ、そうか。瓦礫に背中をくっ付かせていたから、火炎放射で温まった瓦礫で背中が火傷したんだね。納得したよ。

  それにしてもこの光景、あれに似てるね。前にどこかの国の絵本を見た事があるけど、正しくそんな感じだったな~。なんだっけ?」

 

 

 「冷静な分析はいいから、冷やして~!! どんな絵本だったかは気になるけど!!」

 

 

 「そうそう!思い出した。 ”カチカチヤマ”っていうお話で、悪さをする狸をウサギが懲らしめるんだけど、その中で狸に薪を背負わせてそこに火をつけるんだよ!狸はおかげで背中を火傷して、くろちゃんみたいに走り回る。そしてウサギは最後の止めに味噌をた~っぷり火傷に塗りたくる。っていう場面があった!!」

 

 

 「私は悪くないから~!! 悪いのはあっちの火炎放射してる方だから~!!」

 

 

 「味噌はないけど、はちみつならあるよ。塗ってあげようか?」

 

 

 「今は断る! 火傷が治ったら、存分に塗ってもいいよ! はちみつたっぷりと身体に塗った姿で…。 ブヒィッ!(鼻血)」

 

 

 「こんな時にヘムタイ妄想はやめろ~!」

 

 

 戦闘中にこんな事をしている場合ではないけど、ROSEの持ち前の自由さが二人にも沁みついている事が分かったという事で、戦闘開始。

 

 

 ちゃにゃんは市街地に張り巡らされている水道管から移動系魔法『メイルシュトローム』で水竜巻を作り出し、火炎放射で熱せられた瓦礫や地面に突撃させる。一気に冷やされたため蒸気が発生する。それを利用して、くろちゃんが『冷却領域』を展開し、すぐ様火山自体のような熱地獄だったのに、氷が地面に張ってヒンヤリした冷凍庫のようになる。

 

 「よし!フィールドはこっちに味方にした! 後は厄介なアイツだけだね。」

 

 

 「じゃ、もう少し近づかないと視認しづらいよ。冷気で視界が悪いし。」

 

 

 蹴りをつけるため、瓦礫の上に登り、瓦礫から瓦礫へと飛びながら接近する。無論、地面は凍っているから滑って転ぶからだ。しかし、人型戦車の厄介さがまた起動する。くろちゃん達にピンポイントで火の玉を撃ってくる。躱しながら距離を縮めていくくろちゃん達は後10mの距離まで迫ってたが、火の玉の往来で魔法発動どころか躱すので精いっぱいとなっていた。そこに、人型戦車が火の玉をどんどん密集させていき、家一軒程の大きさへとなっていく。

 

 「あれは、やばす!」

 

 

 「あの大きさは確かにやばすだね~。 NST撃沈するために仕掛けた鉄球の倍以上ほどあるわ~。」

 

 

 「比べる余裕があるちゃにゃんはすごいね~。 また秘策があると?」

 

 

 「もちろん………、ないよ!」

 

 

 「ないんかい!」

 

 

 火の玉に未だ苦戦している二人に火炎の大玉がとうとう放たれる。これを喰らったら、豚の丸焼きどころか跡形もなくなるな~とくろちゃんが考えていた時、二人の前に突如現れた人影が火炎の大玉を真っ二つに切り裂いた。斬られた火炎の大玉は左右に飛んでいき、家屋に衝突して、爆発する。くろちゃんとちゃにゃんは見事な剣捌きに思わず拍手する。そして、振り返ってくろちゃん達に顔を見せた人影に二人は驚いた。

 その人影は先ほど怖気づいていた(くろちゃんにビンタされた)魔法師だった。

 

 

 「すみません! 僕、近接戦闘しかできないんで、僕が囮になります!

  その間に二人は安全な場所を確保した上で、魔法をお願いします!」

 

 

 そういうと、人型戦車に走り出す。手に持った双剣で散弾銃の弾を弾き、自らに加速系魔法をかける事で、スピードを最大限に発揮し、その威力で一撃を与える。くろちゃん達は大丈夫だと判断し、家屋の屋根に上る。そして、そこから人型戦車を対象にした『凍火』を発動。これで火機類は封じた。火機を封じられた人型戦車はさっきの火炎の大玉を作り出す。しかし、魔法発動に使われている腕を初心者の魔法師に斬り落とされ、不発に終わる。

 そこに損傷が治る前に、くろちゃんが小銃型携帯CADを取り出す。くろちゃんは改良型の『フォノンメーザー』を発動。任意の座標に発射ポイントを作り出す改良型。超高振動により量子化し熱線と化した音が人型戦車の顔面手前の地点で生じる。更にループキャストで足元から頭上までの回りに多数の地点を生じさせ、一気に撃つ。大量の熱線を受けて、人型戦車の原形が分からなくなるほど、損壊した。そして、動力を失ったそれはバラバラに崩れ去った。

 

 

 息キレを起こしながら瓦礫と化した人型戦車の前で立ち尽くす魔法師にくろちゃん達が駆けつけ、話しかける。

 

 

 「君、あの時は助けてくれてありがとうね。後、ナイスアシスタントだったよ。」

 

 

 「なかなかいい剣捌きを持っているんだね。」

 

 

 二人に話しかけられて、照れる魔法師。さっきの戦いとは印象が違う。二人はオンオフの差が激しいんだな~っと思った。

 

 

 「とにかく、難は無事去った事だし。まだ、自己紹介していなかったね。

  私は、ギルド”ROSE"のちゃにゃん。」

 

 「同じくギルド”ROSE”のくろちゃんだよ。…さっきはビンタしてごめんね。」

 

 

 「うううん、大丈夫だよ。僕は…、僕はシンバ!今日この帝都に着いたばかりの戦闘魔法師(見習い)だ!」

 

 

 「「よろしくっ!!」」

 

 

 こうして、くろちゃん達は窮地の戦闘の末に戦闘魔法師(見習い)のシンバと友達になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…ちっ! 後もう少しだったのにな~。 設計、甘くしずぎたのかな?

  でも、いいデータは取れましたしね。 次の計画に移行しましょう!」

 

 

 くろちゃん達をドローンから送られてくる映像で観察していた怪しげな男はふてぶてしい笑いをするのだった。

 

 





 まさかお前の仕業か!
 って、誰だ?

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