「ふふふ…♥
さすが達也さんね♥ この髪にキスとか堪らないわ~!」
私室へ小型の情報端末を持ってきて、一人で映像を興奮気味に、そしてうっとりとした表情で鑑賞している真夜。
先程まで葉山さんと話していたが、今日は仕事を切り上げて就寝すると言って、私室にいたのだ。しかし寝るのではなく、手作りのハチマキと達也の顔写真入りのうちわ、RYUのアップした顔写真を使ったうちわも両手で持ち、ベッドに正座した状態で無線で送信された映像を見始める。…RYUの初CMを。
いつの間にコピーしたのか、DVDから映像を抜き出し、それを真夜飛び切りお気に入り達也ファイルの中に、送信して永久保存した後、そのデータが入った小型情報端末を袖の中に隠していたのだ。
一刻も早く見たかったから。
ただそれだけで、仕事を放棄するのもどうかと思うが、真夜にとって、それほど達也のCMは意味のある宝物だった。本当は葉山さんの疑問を、「それを私が答えないとお分かりにならないのかしら?」と質問を質問で返し、話を終わらせたかったが、榊が達也を狙っているというのに、大人しく見物するほど無視するわけにはいかなかった。だって、真夜は達也をカッコよく魅せたりできるのは自分だけだと自信があるし、ファン一号として、榊に達也を思い通りにできる操り人形なんてさせたくなかった。(自分だったら操り人形にしても問題ないと思っているあたり、同じ穴のムジナと言えると思うんだけど。)
だから、榊のこれからの行動に警戒するように葉山さんに告げるためにも必要な時間だった。
「ああ~~!! 達也さん! 止めて~~!! するなら私にしなさい!!この子ずるいわ!達也さんに膝乗りさせてもらえるなんて!しかもあんなに顔を近づけちゃって~~!!
達也さんもここは断ってもよかったのに~!!
……でも許しちゃう♥ だって、かっこいいんだもの~~!!
それにあんな告白されると思うと、もう…、胸がドキドキよ~!!
悶えて死にそう~♥ はぁ~…。」
色っぽい表情で何度もCMを繰り返し再生する。
「ああ~、良いわ~!! さすが達也さんね! これなら、シャンプーも売れて当然ね!!
…あ、そう言えばこのCMで投票があるって葉山さんからの報告で聞いたわね。どちらのCMがよかったかで、優れたアイドルかを決めるって…。
一応、もう一つのCMも見て見たけど…。
やっぱり~! 達也さんのCMの方が憧れが強い分、大人な雰囲気で言い寄られているみたいでずっとドキドキしっぱなしだし~、女性達の指示はますます上がるわ!
発売日は明日だし、発売されたら、すぐに葉山さんに爆買いしてもらわないと♥
ふふふ♥ 達也さんのシャンプー使ってたら、今度会った時、達也さん、分かってくれるかしら♥」
恋する乙女のように自分の髪を一房抓み、くるくると弄って浮かれる真夜は、明日が楽しみで仕方がなかった。そしてその夜は、100回以上CM映像をリピートして、あまりにも達也が魅惑的に撮影されていたため、葉山さんが起こしに来るまで、鎮静剤を片手にじっと映像を直視するのであった。
(良い子のみんな、大人は真似はしないように。睡眠はしっかりとりましょう~!)
余談だが、後日シャンプー『プリンセス』が発売された途端、MOONの爆買いが発生し、それが火種となり、次々と売れ、瞬く間にニュースになるほど売り上げが爆弾と上がり、数日のテレビ報道でもこのニュースが取り上げられる結果となる。
こういう時になると、ニヤニヤが止まらなくなるくらい萌えてくるんだよ。真夜ちゃんは。そして、実際に爆買いするとは…。
…あ、そう言えば今日エイプリルフールだから、久しぶりにROSEネタの番外編やろうと思っていたのに、先進めちゃった…。(汗)