魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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何を考えているか、今の時点で分かる人っているのだろうか?


真夜の真意

 

 

 

 

 

 

 

 真夜から渡された書類を目に通し、葉山さんは口を閉ざした。

 

 その書類にはRYUへの大量の仕事のオファーがびっしりと記載されていた。しかもその半分はあの榊社長がパイプを繋げている会社や映画監督、音楽プロデュ―サーによる依頼だった。

 

 

 「本格的にRYUに対して接触を図りに来たわ。まぁ、計画でも彼との接触は計算に入れていたのだけど。彼は芸能界ではかなり顔が効きますし、彼に見込まれた者は輝かしい結果を持ち、今も人気絶好調のアイドルや俳優、タレント、アナウンサー……、数え出したらきりがないほど多くの活躍を約束されます。それを利用するのが当初の予定として組み込まれていたわね?」

 

 

 「はい、短期間での任務遂行であるため、地道に活動してもインパクトを与えられるかは正直微妙でした。ですので、多少の危険はありますが、彼を利用する方が得策ではないかと判断した次第です。」

 

 

 「ええ、葉山さんの判断は間違っていないわ。私達四葉は秘密主義を布いてますし、芸能界については一般の方々より知識は低いでしょう。そこへ達也さんをトップアイドルとなるように仕込んでいくのですから、一番効率よくできるこの人物の有効利用は適切です。ですが…」

 

 

 一旦言葉を切り、葉山さんが流れ仕事のように真夜の空になったカップに紅茶を注ぐ。そして再び紅茶を口にし、喉を潤した真夜は、ついに確信を語る。

 

 

 「どうやら私達は彼を少々甘く見ていたのかもしれません。」

 

 

 気怠けに、しかし冷たい視線を持って、葉山さんを見つめる。真夜は決して葉山さんに対し、怒りを感じている訳ではない。寧ろ自分の命令を忠実に実行に移すべく、計画や人員配備、情報収集等を行ってくれている葉山さんに感心している。それに今回限りでもなく、四葉家に関わる仕事の事は実行前に必ず真夜が目を通し、最終判断を決定する。だから、真夜は榊社長の情報を目にしていながらも、それを見ぬく事が出来なかった自分に対し、若干の苛立ちを覚えており、それが態度に現れただけだ。

 

 葉山さんは長年仕えているだけに真夜の心境を理解していた。そして自分も同様にやるせなさを感じるのであった。

 

 

 「葉山さん、確か報告ではその榊という男は達也さんとは一度しか対面していないのよね?」

 

 

 「左様でございます。それも達也殿は不快に思う態度を見せていました。あれなら気を悪くしてしまうかと思っておりました。」

 

 

 「でも実際はその逆で、興味を持たれたようです。だから姑息にも部下を使って探りを入れたり、達也さんを尾行させたり指示しています。この行動を見る限り、ただの興味を越えていると私は考えているのだけど、葉山さんはどうかしら?」

 

 

 「私も奥様と同意見でございます。彼の今までの行動ではここまで探りを入れる事はありませんでした。………表の住人にはですが。」

 

 

 「そう、達也さんは普通の一般人だけど、個人情報を開示したくないという表向きの理由でRYU を演じているのです。つまり表の住人として彼とは会っているはずなのですよ。

  それなのに、達也さんに会う前から仕事依頼をしてきましたし、金星さんから送られたその書類の仕事依頼からしても、やけに達也さんにこだわりを見せてきてます。」

 

 

 葉山さんはここでようやく真夜の真意にたどり着いた。

 

 予定より早くに接近してきた榊の意図を知るために、計画を変更して、仕事の依頼を受けたのだと。そして更に執着にも似た大量の仕事依頼で裏があると考えていると。

 

 

 「これ以上は言わなくても良さそうね。では葉山さん、引き続きお願いします。もしかしたら私達が求めている展開かもしれないけど、状況が状況ですので警戒はしてくださいな。」

 

 

 真夜はこの話はおしまいという態度で葉山さんから書類を返してもらうとまだ手につけていない当主の仕事を再開した。

 

 

 

 

 

 

 




榊の達也の勧誘はまだ知らないからね。任務の本当の目的は徐々に~!
あ、今日でアンケート終わります!残り少ないですがどしどしお答えください!

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