魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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やはり人間関係はもちろんですが、達也だからね~。厄介事を入れとかないと。


欲の影

 

 

 

 

 

 

 

 

 達也が深夜になっても研究に没頭している頃、最高層ビルの最上階のオフィスにて極上のワインを飲みながら、部下からの連絡をつまらなさそうに耳にしていた。

 

 

 「……つまり、お前達は尾行に気づかれただけでなく、あっさりと見失ってしまったという訳だな?」

 

 

 『も、申し訳ありません!! もう一度近辺を探してみます!!』

 

 

 「もういい…! お前は馬鹿か? 姿を見失った場所にいつまでも居座っている奴がどこにいる? その辺りに住んでいるのであれば、お前達を撒くためにもう少し早めにするだろ?そんな事まで理解できないのか。」

 

 

 『い、いえ! 滅相もございません! 次は必ず…!』

 

 

 「ああ…、ご苦労だったな。もう休んでもいいぞ。」

 

 

 『はい!! 失礼いたします!!』

 

 

 終始一生懸命に返答していた部下の電話を切ったこのオフィスの主は、クッションもある最高級のレザーが使用された椅子の背もたれに身体を預け、そのまま再び電話回線を結ぶ。相手は、自分の第一秘書にだ。

 

 

 『…はい、このようなお時間にご連絡とはどのような用件でしょうか?』

 

 

 今度の電話の相手は、先程の電話越しからも分かるくらい頭を下げていた印象があった部下ではなく、どこか冷静に物事を把握しようとしている出来る人物といった印象を感じる。まさにその印象は当たっていて、頼まれればすぐに実行する機械的な人物だ。

 

 

 「ああ、今回はそんなに難しくはない。全く使えない奴が出たから、お前の方で処理しておいてくれ。今日付けで斬り捨てておけ。もう奴の声も聴きたくないからな。」

 

 

 『はい、畏まりました。そのように手配させていただきます。』

 

 

 「……理由は聞かないんだな。」

 

 

 『はい、ある程度の予測は出来ていますから。恐らく失敗したのでしょうから…。』

 

 

 何を言っているのか互いに話していないが、言いたい事は伝わっている事は分かっていた。その秘書もまた、同じ穴のムジナだという事だ。

 

 

 「本当にお前がいてくれて助かるぞ。 」

 

 

 『そう言っていただけると、幸いです。

  …ところで、どういたしますか?新たな人材を派遣いたしますか?』

 

 

 「そうだな…、今までのようにはいかない相手だと分かったんだ。今度はその道に通じた奴を向かわせろ。それから依頼する際は、俺の事は伏せるんだぞ?」

 

 

 『ええ、心得ています。何重もの細工を施しておきます。…それにしてもそれほどまでする必要性を感じないのですが、本当によろしいのですか?』

 

 

 主の命には従う意思を見せる秘書であったが、やはり疑問というものは残ってしまう。今回の件はそこまでするような用件には思えない。ましてや調査する相手が新人アイドルだというなら。

 

 秘書の言外の疑問を理解した男は、不敵な笑みを浮かべ、面白がっている事を匂わせる口調で答える。

 

 

 「そうだな…、いつもならこの程度で終わってもいいんだが、あいつには何かがある…。俺の勘がそう言ってるんだ! あいつには底知れない興味が沸き起こってくる!あいつを俺の手に収めれば俺の力がもっと膨れ上がるはずだ…!絶対にものにしてやるッ!

 

  わ~~~~~はっはっは!! 」

 

 

 高笑いが収まらず、そうなった未来を想像し、更に欲が刺激される。それを電話越しから感じ取っていた秘書はしょうがないと言わんばかりのため息を吐き、言葉を続けた。

 

 

 『畏まりました。それでは、こちらもそのように準備いたします。社長の欲する未来が実現される事を祈っています。』

 

 

 そうして、秘書は電話を切ったのであった。

 

 

 

 

 秘書との電話も終え、ワインが入ったグラスを片手に持って、ネオンが輝く夜景が広がる光景をガラス張りした壁から鑑賞する。そのまま、笑みをこぼして優越感に浸る。

 

 

 (…ここまでぞくぞくしたのはいつ振りだろうな!)

 

 

 アドレナリンが体中に巡っているのではないかというほど興奮しながら、脳裏に配下に入れたい男を思い浮かべる。

 その男は会って間もない自分に対し、刃向ってきた。それだけでなく、情報を手にしようと少女にさりげなく仕込んだ小型盗聴器を見抜き、破壊した。更に今日は撮影が行われると聞き、帰宅する所を尾行するように命令出したが、それも見抜き、撒いて逃走した。徹底的に正体を秘密にしようとしている彼が、もう気になりだし、ますます欲しくなった。

 

 

 「…RYU…か。 君は一体何者なんだい? 」

 

 

 答えが返って来ることは無いと分かっているが、つい独り言が出てしまう。それでも楽しみでしょうがない気持ちが勝り、独り言にも気づかない。

 

 脳裏に浮かんでいる男…、新人アイドルRYUが隠そうとする秘密を握り、それを脅しに自分の芸能事務所の一番稼ぎ頭にしようという野望が更に彼の欲を燃え上がらせる。

 

 

 夜景を見下ろし、ワイングラスを掲げ、不敵な笑みを浮かべた男…、大手芸能事務所『パーフェクトゴッド』の敏腕社長、榊寛人が自分で作り上げたRYUの幻影に話しかけた。

 

 

 「RYU…、お前はおれのものだ…!!」

 

 

 グラスに入っていたワインを一気飲みし、オフィス一帯に広がるほど、高笑いが充満する…。

 

 

 




そうか、達也を尾行していたのはお前の指示だったのか! 
登場時点で気に入らない奴だとは思っていたけど、更に気に入らない感が上がったよ。
(うちがつくったオリキャラなのにね~。)


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