想像してくださいな。ただし人によって好みとかあると思うので、もしかしたら…という事があるかも?
撮影現場に用意された衣装で現れたRYUは、女性スタッフやエキストラとしてパーティー会場にいた女性達、そして鈴蘭の視線を一身に浴びていた。あまりにも凝視され、内心訝しく思い、眉を潜めそうになったRYUだったが、身体にしみついた見事なポーカーフェイスで乗り切る。しかし表面上は切り抜けても、やはり彼女達の好意的なのか非難めいたものなのか判断つかない視線を大量に浴びているため、落ち着かない気分が続く。
この何とも言えない視線がRYUは、改めて自分の衣装をざっと素早く見渡す。現場に着いてすぐに用意された衣装に着替えるように言われ、慣れた手つきで着替えたわけだが、姿見で確認した自分といつものスーツを着た自分の姿とは違い過ぎて、戸惑ったものだ。それでもこれが仕事だと割り切れば、着れなくもなかったから既に意識から除外していた。しかし、未だに続く彼女達の視線を向けられていると、本当に似合っているのか、不安を覚えてくる。確かに今の自分なら合うだろうが、美的センス等は持ち合わせていないため、どこか悪いのか分からないのだった。
(深雪に関してはそのセンスは発揮されるが、自分の事となると無関心と言えるほど著しくセンスが劣る。だから身支度等をする際、深雪が『お兄様、とてもお似合いです。』と顔を赤らめ、見惚れている表情を見て、初めて納得する…というシスコンぶりを見せつけるくらい、鈍いのだ!)
そんなRYUだが、理解できる視線も合った。
それは現場入りしたRYUを睨む男性達だ。彼らの視線に込められた感情は、嫉妬や妬み、怒りといったものだ。RYUにとってはお馴染みの非難めいた視線だったため、敏感に反応できた。しかしその理由をRYUは、やっと撮影に現れた自分に対して、怒っているのだろうと受け取っていた。それから急に人気者として芸能界へ現れた事への不満…ともとらえていた。
実際は、RYUに見惚れてしまっている女性達のハートを向けられているのが、羨ましく嫉妬していただけだが。
RYUの衣装は本人が思う以上に似合っていた。
灰色の癖毛がある髪と紅い眼に合うように、白いスーツに黒灰色のシャツを着こみ、胸元の襟は鎖骨が見え隠れするくらいで開かれていた。ジャケットはボタンを留めずに前が開かれている。そして、右手首にはシルバーアクセサリーが付けられていた。
衣装が似合いすぎるというのもあったが、何よりジャケットが開かれている事で、シャツの下からでも分かる鍛えられている筋肉の形にドキッとする。
それにミステリアス感があるが、セクシー感が漂っていて、もしRYUがプレイボーイだと告げられたら、絶対に猛アタックする事を厭わないと女性達に決心させるほどRYUは輝いていた。
そして鈴蘭もまたRYUに魅了され、前回逢った時はかけていたサングラスを外しているRYUの紅い眼を見て、動悸が激しくなるのを実感していた。
鋭い目つきの奥にある紅い眼に、まるで全て見透かされているように見られているような感じ…。
背中にぞわりと神経は走る感覚を感じた。思わず恐怖も感じた。しかしそれと同時にそして同じくらいに惹かれる自分を自覚した。
怖いと思うのに、目を話す事も出来ずに愛おしく思ってしまう…。
この真逆な想いに思わず苦笑がこぼれそうになるが、自分が今だけ持てる特権を思い出し、苦笑から勝ち誇ったような笑みが浮かび上がる。
しかしそれは一瞬で、すぐに愛想笑いの領域を作りだして、RYUに近寄るのだった。
やべ…、イメチェンした達也を想像したら、萌えて軽く天に召されてしまっていたぜ。
その達也とこれから仲睦まじげにいられる鈴蘭が羨ましく思うよ…。