帝都のとある店の奥部屋にて、再び、不気味な会話が行われていた。今回もモニター越しの会話だったが、気さくな男は今、じわじわと追いつめられていた。
「…また、失敗したようだが、いつまで遊んでいるつもりだ? 私はお前が思っているほど、寛容ではないぞ?」
モニター越しの男性は鋭い瞳孔をし、部下に威圧する。モニター越しでも伝わる殺気が男の身を縮ませる。冷や汗を搔きながら、それでも笑顔は崩さない。
「それは申し訳ありません。まさかあそこまで力をつけていたとは想像しませんでした。かなり鍛えてあげたんでしょうね。本当に、喰えない連中ですよ~。」
「あ奴らの動きを抑え付けとかなければ、こちらも容易には動けまいぞ?
…もしや寝返ったわけではあるまい?」
「それは決して、断じてありえませんね~! 私はね、あなたと同じで幸せそうにして生活している者達を恐怖のどん底に突き落とし、永遠の苦しみを味わらせるのが、至上の喜びなんですよ。それが堪らないんで、こうしてあなたの計画に賛同して表では健全に商売をして、裏で実験をしている訳ですから。自分からこんな最高で、贅沢な日常を手放したりはしませんよ。」
不気味で狂った笑いを漏らす男。彼は次なる計画を企てていた。そんな彼を察し、モニターの男も計画を思いつく。
「なら、そのお前の働きを今度こそ示せ。これ以上、見苦しい結果を報告すれば、お前のその首が地面に転がっているかもしれないぞ。心得とくんだな。」
「…畏まりました。 確かに一層心得る必要がありそうです。では、そろそろあの計画を行いたいのですが、許可をいただいても? 」
「ああ、許可する。 不必要なモノは吾輩にはゴミと同じだ。 構わんさ。」
「ありがとうございます。 では、さっそく取り掛からせていただきます。この前は失敗しましたからね~。腕に振るって最高のショーをご覧に入れましょう!」
気さくな男はわざとらしくお辞儀する。それを確認すると、モニター越しの男は回線を切った。その後、静かになったこの部屋でこの男、カバリン・サイは歯切りをしながら、モニターを睨みつけた。
「まったく…。あの方もそうだが、一番気に食わないのは私の計画を悉く妨害するあ奴らです。 こうなったら、許可も受け取ってますし、あれを導入しましょう。
もしかすると、私が直接手を加える事もあるかもしれませんね。それも悪くはない…です。 …フフフ、ガハハハハハハハハハ!!!」
高笑いをするカバリンの瞳には怪しげな光が宿っていた。
★★★
その頃の帝都中では、新たなイベントクエストが開催され、多くの魔法師達が参加していた。もちろん、くろちゃんとちゃにゃんも例外ではない。今日も張り切って、参戦していた。
「よし、倒した!! 」
「なかなかの強敵だったね。 でもその分、高ポイントゲットできたんじゃない?」
「いや~、助かった! 救援要請に応じてくれてありがとう! 」
「いえ、大丈夫です。 此方こそポイントいただきましてありがとう!」
「じゃ、また救援要請した時、近くにいたら応援に来てくれ。逆の場合も駆けつけるからな!」
そう告げると、さっき共闘した魔法師は別の場所へ向かった。それを見送り、清々しい笑顔でちゃにゃんに話しかける。
「ミナホの言うとおり、戦闘イベでよかったよね。こういうイベの方が私たち合っていると思わない!?」
「うん。これの方が、報酬もがっぽりだしね。」
今回のイベントクエストは救援要請型の戦闘イベントだった。
参加する魔法師に事前に参戦ポイントと救援ポイントを配布する。配布といっても、イベント記憶キューブにデータ情報をインストールするだけなんだけど。
一人の魔法師に与えられる参戦ポイントは実績が高いほど多くなる。言い換えると、その魔法師に見合ったポイントを与えられるのだ。その参戦ポイントを使って、戦闘をしたいレベルを決め、ポイント配布時にもらったレベルボールで、その化成体や人形を呼び出す。レベルにはEASY・NORMAL・HARD・V.HARD・EXTREMEに分かれており、ノーマルまでは自力で戦えるレベルで救援は出来ない。救援が認められるのはハードからだ。しかし、エクストリームだけは、一定の戦闘による経験値を貯めないと呼び出すことはできない。
一人で戦ってみて、倒せなさそうなら、救援信号弾を空に撃ち、応援に来た魔法師と標的を倒すというものだ。見事倒すと、救援要請した者、された者も報酬ポイントが与えられ、貢献度によってはアイテムさえもらえる。
ただし、気を付けるのは、参戦ポイントも救援ポイントもレベルによって、消費ポイントが違うという事だ。レベルが難しくなるほど、ポイント消費が激しい。だから、化成体等を呼び出す時や救援に行く時はポイントの確認が必要となる。ちなみに、これらのポイントは時間経過によって回復していく。24時間回転しているため、どんな時でもイベに参加できる。
今回のイベントでは、帝都中をフィールドにしているため、自分に合った場所で戦闘可能。倒す化成体や人形も不参加者には攻撃しないようにインプットされている。だから、安心して、帝都中で暴れられる…、いや、魔法師向上ができるのだ。
ROSEメンバーも朝からこのイベントに参加して、夢中になっている。夕食まで参戦して、互いに報告し合う事を予定としている。くろちゃん達も負けないように、次の化成体を呼び出すため、参戦ポイントを確認する。その時、パァ~~~~ン!!という信号弾の音が辺り一帯に響く。信号弾を見ると、赤色で光っていた。
「くろちゃん! あれは、エクストリームだよ! こんな市街地であれを呼び出したの!」
「いくら不参加者は怪我はしないって言っても、建築物は一応壊れるんだけどな。よっぽどの自信家かあるいはおっちょこちょいとか?」
「でも、さすがにこのままではやばそうだよ? 向こうから地響きや土煙が上がっているし。」
二人は顔を見合わせ、救援ポイントを確認する。救援ポイントは何とかギリギリ応援できるポイントだった。
「ちゃにゃん、行こうか!?」
「うん、行こう!」
こうして、二人は戦闘が行われている市街地まで飛行した。
次回はサブキャラが出るかも?