魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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オーディションがやっと終わりましたな~!!

では、これから活躍というか、登場してくるであろうこのキャラを視点に今日はやっていきましょうか!


本当の一時の中で…

 

 

 

 

 

 

 

 

 怒涛のオーディションを終え、その後の雑誌取材やドラマ撮影を終え、都心にある高層マンションの上層階にある自宅でシャワーを浴び、バスローブを羽織ってリビングに現われたのは、この部屋の主である鈴蘭だった。

 

 タオルで濡れた髪を拭いて、冷蔵庫からオレンジジュースを取り出し、コップに注いで何度も飲み干す。こういう時のシチュエーションでは、「ここは牛乳だろ!?」と外野は思うだろうが、あいにく鈴蘭はそう言った世間一般の捉え方は苦手な方で、敢えてオレンジジュースを飲むといった思考の持ち主だ。

 

 と、それは横に置いていて、水分補給し終わった鈴蘭は、ソファに座りこんで足を組む。そしてソファの前に設置されているテーブルに置いておいた情報端末を手に持つと、それをじっと凝視しなら物思いにふける。

 

 

 (……結局お礼も言えなかったわね。)

 

 

 鈴蘭は残念な気持ちが膨れ、小さな溜息を吐く。手に持っている情報端末こそ、鈴蘭が置き忘れていた情報端末だった。

 見つかってよかったと安堵はしたが、これを確保していてくれていたのは、RYUだったのだ。

 

 RYUが廊下を歩いているとロビーで情報端末がぽつんとソファに置かれているのを見かけ、スタッフのものだと初めは思い、翔琉から逃げつつ、廊下を歩くスタッフの誰かを探していた。そこへ偶然鈴蘭と出くわしたのだ。そこから話が大きくなり、喫茶店で雑談しようとなったが、さすがにFLTでの実験に間に合わなくなるため、情報端末をどうするかと再び眼にして、持ち主が鈴蘭だと知ったRYUは、鈴蘭とどうしても友好関係を築きたい美晴の意思を尊重して、美晴に情報端末を渡して別れたのだ。

 

 

 美晴から「ロビーで置かれていた情報端末をRYUさんが拾ってくれてました! 鈴蘭さんので間違いないですよね?」と、探していた情報端末を渡されながら言われた時に詳しく話を聞いて、知った鈴蘭はRYUに対して抱いていた気持ちがさらに膨れ上がるのを感じた。…なんか胸が熱くなる感覚を。

 

 

 情報端末を見ながら、苦笑する鈴蘭はもっと話したかったという気持ちを飲み込んで、テーブルに再び置いた。

 

 

 「次に会えるのは、撮影の時か~。」

 

 

 言葉遣いを少女らしくした鈴蘭。仕事に関するときや人前の時は基本丁寧な言葉遣いや仕草を心掛けているのだ。子役時代から芸能界で仕事してきている鈴蘭は、競争が激しいこの世界で一生懸命に演技を身に着け、力をつけてきた。その中で大物と呼ばれる役者との共演も少なくなかった。だから、大人たちと仕事をするうちにしっかりしていなきゃと、大人な雰囲気をいつの間にか身に着けていった。すると、この大人な自分が本当の私だと共演者やスタッフ、事務所の人たちもそう捉えて接してくるようになった。それがさらに弱音を言わないように、ボロを出さないようにしないとというプレッシャーに変わった。しかし、これが苦になったりは今まで感じなかった。同年代の役者の子から嘗められることが少ないし、今までの業績が味方してくれて、陰口叩かれるのは捻くれた心を持つ人間ぐらいだ。

 

 しかしいい面もあれば、仕事の内容によって朝から夜までずっと気を張っていないといけないという悪い面もあって、やはり疲れるものなのだ。それでも疲労感はついてくるものの、それ以外特に何も感じて来なかった。

 

 

 …そう今までは。

 

 

 「あんなに魅力的な人は初めてだったな~…。 このドキドキ…、なんだろう…?」

 

 

 胸に手を当てて、彼を思い浮かばせる鈴蘭は頬を赤らめて、呆けていた。

 

 

 




大人たちに囲まれて育ったものだからね、鈴蘭は。

次回は鈴蘭の言葉にならない気持ちが明らかになったりして!

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