魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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今日は美晴視点でいくか。


絡まる関係の前兆

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人部屋に残された美晴は、先程の鈴蘭の言葉を思い返して俯いていた。

 

 

 「そうだったんだ…、RYUさまが私を推薦してくれてたんだ。…実力ではなかったんだね。それなら鈴蘭さんの怒りももっともだと思う。鈴蘭さんの演技は私も見惚れていたもん。”鈴蘭さんみたいに人を惹き込むような演技をしたい!”って思うくらい。

 

  私のはまだまだだって実感したな~…。」

 

 

 誰もいないからか、独り言が口に出てくる美晴。

 

 鈴蘭の怒りに満ちた台詞を、理不尽な言い分を突きつけられたとは受け取らずに、鈴蘭の気持ちになって、不快感を与えてしまった申し訳なさが込み上げてくる。

 もしここで自分が辞退すれば、鈴蘭は心が晴れて自然な笑みを浮かべてくれるのではないかとも思ってくる。

 

 

 「うん……、私も努力してみたけど、まだ足りなかったんだ。…今からでも遅くないよね?大澤監督に直接会って辞退の話を。」

 

 

 そう思い口に出した時、ふと頭の中で思い出す。

 

 

 RYUと一緒にダンスレッスンした事。遅くまで自分のために可能な限りのレッスンをしてくれた。そして今日もわざわざ予定があるというのに、その間を使って応援しに来てくれた。送迎もしてくれた。更にはこの仕事にも自分がうっかりとRYUの事を話してしまったためにオファーを受ける事になってしまった。明らかに嫌そうな態度もしてたし、はっきりと断っていたのに。それに泣いている私にハンカチを貸してくれた。

 

 

 『オーディション…、頑張れよ。』

 

 

 …って、慰めてもくれた。

 

 

 

 ここまで自分を励ましてくれていて、親身になってくれたRYUが審査員の権利を使って自分を合格にしようと、尽力するだろうか?

 

 まだRYUの事を知らない事は多いが、同事務所だからという理由だけで、審査に口出すような人間ではないと信じている。

 

 美晴は、自分に笑顔を向けて応援してくれたRYUを思い出し、俯いていた顔を力強く上げて、ドアを勢いよく開けて廊下を駆けていく。

 

 

 (RYUさまに真意を確かめてみないと!!)

 

 

 美晴は、RYUと最後に会った会場に向かって走るのだった。

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 

 一方その頃、帰ったはずの鈴蘭は、オーディションの際には見せていた余裕さもなくし、非常に焦った様子で廊下を走らない程度の早歩きで進んでいた。傍から見ていると、走りたいが必死に堪えているという雰囲気が表れていた。

 

 なぜそこまで焦っているかというと、美晴への怒りがなかなか収まらず、しばらくロビーの休憩スペースで一服して気分転換したのだが、その際にスクリーン型の情報端末を落としてしまったのだった。

 その情報端末には、自分が受け持つ仕事のスケジュールや仕事の概要、ありとあらゆる知り合いのデータがたくさん入っている。個人情報等のロックはしているものの、入っているデータが漏えいしてしまっては今後の芸能界活動が危うくなる可能性が濃厚だと確信できるほどものだ。それを落としてしまったというのだ。鈴蘭が焦るのも無理はない。

 

 

 (早く、回収しないと、危ない!)

 

 

 若干胸が苦しくなってきたが、そんな事を考えている余裕もない。

 

 目的のロビーは、会場があった近くにある。誰かが拾っている可能性も考慮して、見られていない事を祈りながら歩いていると、曲がり角で現れた人とぶつかりそうになった。

 

 

 「キャッ!」

 

 

 早歩きでそれなりにスピードも出ていたため、その勢いを止めきれず、足が絡み前に倒れそうになる。もう踏ん張りも効かない体勢で、固い廊下に身体を打ち付ける事が想像できた鈴蘭は、咄嗟に壁から現れた人物に助けを求めようと、目を向ける。

 

 

 しかし、その瞬間、助けを求める事を忘れるくらい、その人物に見入るのだった。

 

 

 

 

 

 




最後は鈴蘭だったな~。 ここから徐々にオリキャラ達を達也と絡ませていこう…。ふふふ…

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