魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

312 / 453
無事に合格できた~!


威圧と魅惑の狭間

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 かなりの競争率を勝ち抜き、CM出演が決まった美晴と鈴蘭は、別室でCMの概要を改めて説明を受けていた。一部変更した所もあり、オーディションが終わるまでは簡単な説明で終わっていたからだ。

 

 美晴はスタッフの説明に真剣に耳を傾き、頷きを入れながら、渡された書類に書き込みを入れていく。一方、鈴蘭は冷静な面持ちで書類に目を通しながら説明を無言で聞く。ただし目の輝きは真剣味を帯びていた。

 

 

 「…………という事になっています。ですので、お二人にはそれぞれのCMに分かれて撮影していく事になります。テーマや商品のコンセプトもあるので、どちらをどのCMに起用するかは撮影が始まる際に大澤監督から決定が出ると思いますので、ご了承お願いします。

  ………以上となりますが、何かご質問はありますか?」

 

 

 「わ、私は大じょ……」

 

 

 「なら、遠慮なく言わせていただきますが、……本来ならこのCMで採用されるのは一人だったと思うんですが、なぜ直前になって二人になったのですか?」

 

 

 美晴の言葉と重なって鈴蘭が問いかける。それにどう答えようかとスタッフが困った顔で返答する。

 

 

 「そ、それは…審査員の方々が決めた事ですので。私はその決定を伝えるように言われただけです。」

 

 

 「ではその審査員のどなたが提案成されたのでしょうか? 」

 

 

 更に問い始める鈴蘭の威圧的な視線に怖気るスタッフ。隣に座る美晴も彼女から発せられる苛立ちを感じ、口を挟めずにいる。

 

 

 「どなたでしょうか………?」

 

 

 再度問い掛けられ、有無も言わさない声色にとうとうスタッフも口を開くしかなかった。

 

 

 「り…RYUです! RYUが提案したようです! それぞれ別のテーマでCM撮影するなら、それぞれのCM毎に分かれて採用してもいいのではないか…と!」

 

 

 「え!? RYU…さんがそう仰られたのですか? あの…監督さんはそれを受け入れて…?」

 

 

 「はい、大澤監督もRYUの提案に賛同し、お二人の採用を決定したんです。」

 

 

 RYUが提案したと聞き、美晴は驚いた。一役人気アイドルとして名を知られるようになったとしてもまだ自分のように売出し中だ。芸能界でも徳のある大澤監督と意見を交わし、同じ立場のように話す事が出来たRYUの力量にただ驚く。新人ならなおさら上の指示に沿って行動するように言われる。それを軽々と飛び越えていかれたような感覚を感じた美晴だった。

 鈴蘭も同じく驚いたのか、目を見開いている。さすがに人前であるため、口元には手を当てて、最小限の驚きに留めている。しかし、その驚きから脱出した鈴蘭は、さっきまでとは違って甘い声でクスッと笑い、見惚れるほどの微笑みをスタッフに向けた。

 

 微笑みを向けられたスタッフは、鈴蘭への怯えも忘れて、頬を赤らめて照れ始めた。そしてこう思い始めた。

 

 (これは鈴蘭ちゃんが求めていたものを提供した僕への褒美なんだ!!)

 

 

 ………と。

 

 

 デレデレ感を隠しきれないでいるスタッフに鈴蘭が話を続ける。もちろん、魅惑の微笑みのままで。

 

 

 「ところで、さっきの説明で変更箇所を教えていただきましたけど、初めはCM一本だったのに、二本撮影する事になったいきさつを良ければ教えていただきたいんですけど? もし理由を知らなかったために、撮影に支障をきたしたらいけませんから。」

 

 

 「さすが、仕事に対して熱心な志です! 鈴蘭ちゃ………、ごほん、天童さんのために話しましょう!」

 

 

 完全に鈴蘭の虜になったスタッフは、CM二本取る事になった理由を鈴蘭に話していく。隣に座っている美晴も話を聞いているが、スタッフの視界には鈴蘭しか入っていなかった…。

 

 

 




鈴蘭はどうやら飴と鞭の使い分けを心懸けているのかな?

もしできているなら、将来魔性の女?にもなれる予感。

そして今回のスタッフ……、おいおいおいおいおいおいおい………、残念な男じゃないか!?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。