魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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サブたちは…申し訳ないが、スルーさせてもらいましょう!(笑)


選考結果…

 

 

 

 

 

 

 

 

 鈴蘭とRYUのダンスは映画のワンシーンのように煌びやかなものだった。

 

 もしここが舞踏会場のように高い天井やシャンデリアがあれば、更に二人の作りだす空間に華が持たせられるのに…、というほどの出来だった。

 ダンスも終わり、互いにお辞儀すると会場中に割れんばかりの拍手喝采が起きる。鈴蘭は少し照れた様子で笑顔を浮かべる。RYUは、さっさと審査員席へと戻り、電子ペーパーで評価をつけ始める。あまり好意的な感情を向けられたことがないため、抱かなくてもいい居心地の悪さを感じていた。それに褒められるほど自分のダンスは上手くないと思っていた為でもある。相変わらず社交ダンスをするような環境を持っていないのと練習する必要性を感じなかったため、去年の九校戦の後夜祭パーティーと同じように、ステップを頭の中で再生し、それを身体で再現しただけに過ぎない。はっきり言って、良い雰囲気を作りだした覚えは全くない。表現力というものは鈴蘭に任せていた。RYUにとって、流れる曲に沿って、ステップを合わせ、更に鈴蘭をリードしているように踊る事で一杯だった。表現力をもっと向上しようとしてもいきなりこれはハードだったのだ。

 

 RYUは評価をつけながら、既にかなりの疲労感を感じ、椅子の背に身体を預けるほど脱力する。

 

 それと反して鈴蘭の方は、参加者たちの方に戻って、自分の手を凝視したと思ったら、不意に可愛らしく、愛らしい微笑を浮かべていた。その頬には若干赤みが見える。

 

 

 こうして、鈴蘭のプリンセスとしての演技は終わり、次々と他の参加者たちが自分の演技を披露していく。

 

 

 しかし、美晴と鈴蘭の演技を見た後からか、なかなか自分なりの演技ができなかったり、二人の演技とインパクトがありすぎて演技が色褪せて見えたりと、平凡…と語りたくなるような演技が繰り広げられていった。

 

 

 その結果、全ての参加者たちの演技が終わり、大澤監督が二次オーディションの終了を告げ、控室で待機しておいてほしいと伝えた。それは、選考結果を発表するという事。皆、会場を後にする時、緊張の面影を見せながら、後にする。

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 「………さて、これから合格者を決めていきたいと思うが、皆の意見をある程度聞いておこうか。」

 

 

 大澤監督がまずはじめに口を開き、皆の意見を聞く姿勢を見せる。

 

 

 「今回も凄かったですね~。天童鈴蘭! やはり他の子達とは一線違うと思いましたよ!」

 

 

 「そうだな、あの子は格が違う! 天童鈴蘭の合格は確実だと私は思います!…いえ、採用するべきです!」

 

 

 真っ先に鈴蘭を押してきたのは、CMで宣伝する商品会社の広告課の社員二人。圧倒的な存在感を見せた鈴蘭なら絶対に商品アピールに繋がると二人で盛り上がる。

 大澤監督は深く頷くと、まだ意見を出していない翔琉とRYUに顔を向ける。

 

 

 「二人はどうかね?」

 

 

 「俺も天童鈴蘭が起用されるのは問題ないぜ。商品のコンセプトである”プリンセス”にもぱっちりと当てはまるし、良いCMになるのは間違いない。」

 

 

 「君が真面目に評価するなんて…、雪でも降るのかい?」

 

 

 「俺を馬鹿にしてるだろ? 俺だってこれくらい考えるっての!」

 

 

 派手で、やんちゃなイメージの見た目をしていて、熱くなりやすい言動から馬鹿だと思われがちだが、何事にも一生懸命に生真面目とも言えるほど取り組むためにそうみられるだけである。…ただたまに的外れな言動もするために一介に馬鹿ではない………ともいえない。

 

 

 「分かっているさ。翔琉君は人を見る目があるから信じよう。で、RYU君はどうかね?」

 

 

 「…俺も異論はありません。一人目は天童鈴蘭で問題ないです。姫としての資質は十分に見せてもらいましたので、彼のように良いCMになるのは確実だと思います。」

 

 

 「一人目だと?」

 

 

 「……もう忘れたのか?」

 

 

 RYUは呆れからのため息を隠さずに翔琉を見つめる。それを見て、からかわれたと知り、苛立ちを見せる翔琉。

 

 

 「今回のCMでは俺と……彼が勝負する事になってます。CMも全く違うバーションを作るという事で折り合いがついたと思いますが…。」

 

 

 RYUは確認も兼て大澤監督に視線を向ける。大澤監督は頷いて認めた後、続きを促す。

 

 

 「二つのCMを作るなら、視点を変えた内容でした方がより印象も分かれ、勝敗も点けやすいと思います。そこで、CM別で俺と彼がそれぞれ担当するなら、相手役のプリンセスもそれぞれ別で担当した方がいいのではないかと。」

 

 

 「…つまり、RYU君は採用する人数は二人がいいという訳だな?」

 

 

 「はい、天童鈴蘭を両方のCMに起用したとしても、彼女が魅せるものは根本的に同じなので、まったく違ったバージョンを作るには難しいと思います。」

 

 

 鈴蘭のこれまでのダンスや演技を見て、RYUはどれも表現力が高く、人を魅了する美を上手く使用していた。しかし、華麗さが増して驚いたりはしたが、全く異なった表現(たとえば元気で明るいイメージなど)を披露して驚いたということは無かった。

 

 

 このRYUの提案は、大澤監督も考えていたようで、二言返事で二人の採用を決定した。

 

 

 「それで、あと一人だが、誰かいい子はいたかい?」

 

 

 「……はい。」

 

 

 大澤監督が誰を採用するかはもう決まっているという事を隠さない笑みを浮かべながらもRYUにもう一人の名を話してもらおうとする。RYUは自分が言えば推薦したと捉えられると気づいていた。しかし、自分から提案した分、答えをはっきり言わないと厄介な事になる事も分かっていた。だから、監督の誘いに乗る。

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 連絡事項を告げるスタッフが控室に訪れ、選考の結果発表…、合格者の名をついに告げる。

 

 

 残った参加者全員が息を呑んで、祈る。

 

 

 「お待たせしました。今回のCMに起用させていただく事になりました合格者は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  天童鈴蘭さん……と、日暮美晴さんに決定しました!」

 

 

 

 

 名を呼ばれた鈴蘭と美晴は、驚きと嬉しさで緊張していた表情から笑みがこぼれるのであった。

 

 

 




しっかりと審査していたRYU…達也~~!! だからこその合格者の提案は納得!

だって全員鈴蘭押ししていた所に流れを切り裂く真似は…ね~。敢えて二人の起用とする事で、上手く物事を運んだ達也の考えは素晴らしいですよ!

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