魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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今までこんなことは無かったからね。達也の焦りからの警戒マックスは当然なのかも?


姫の資質

 

 

 

 

 

 

 

 

 警戒心を抱く達也は、鈴蘭を隅々まで視る。サングラスをかけていなければ、じろじろと少女の身体を見つめる変態に、嫉妬深い者なら思うかもしれない視線を投げかける。例えそう思われたとしても、達也は気にも留めないだろうが、今は警戒心の方がこれからの芸能界での人気よりも勝っていた。それにずっと視ていなくてもいい。達也が鈴蘭を視ていた時間をいうなら、鈴蘭が歩み寄ってくるわずか数秒間だ。その間に達也は判断する。

 

 

 (………構造上を視ても、魔法特性があるような遺伝子もなかった。魔力もない。…非魔法師であるのは間違いないようだな…。)

 

 

 問題が見つからなかった事で、達也は警戒心を抑える。それは、テロレベルから傷害事件へと引き下げられるほどの落差のあるもので、通常通りの警戒に戻る。武器類も隠し持っていない事は既に視て分かっているし、暗殺能力を叩き込まれていない事は筋肉の構成を視れば分かる。鈴蘭を視る前に、自分自身を『精霊の眼』で確認して、精神干渉を受けていないのは分かっていたから、この情報は確かだ。達也は精神干渉を受けたとしても、誰よりも早く認識する事は出来るし、すぐに魔法の構造を理解して、打破する事が出来る。

 

 達也はここでようやく鈴蘭に抱いた危機感も解除した。それと同時にしみじみと思う。

 

 

 (表現だけで魅せるとは、な。 魔法を使用する事もなく…。 深雪と同じ英才教育を受けていただけではなく、今までの演技の経験で身に付けた動作と言動…。見事としか言えないな。もしかしたら姫としての資質があるかもしれない。…まぁ、そう言った教育は受けていない俺が言うのも間違っている気はするがな。 それにしても、初めはこの仕事を受けるつもりもなかったが、今後の事を考えるといい勉強になるかもしれない…。)

 

 

 …と、鈴蘭の表現力の高さに、学ぶ要素を見出した達也は興味を抱き、研究者の意識が垣間見える。

 

 そんな達也の前に鈴蘭が笑みを浮かべたまま、立ち尽くす。

 

 何かを待っている様子なのは見ればわかるが、自分からは一切何も言わない。

 

 

 審査員の何人かは何をしているのか理解できず、首を傾げている。しかし、達也は鈴蘭が何を考えているか、理解できていた。そして、ため息を吐きたい気分になる。

 

 

 (…………これは、俺から誘われるのを待っているんだろうな?)

 

 

 達也は鈴蘭がダンスの誘いを達也からしてもらう事に期待している。それは、達也も経験済み(去年の九校戦の後夜祭パーティーでのこと)で、状況とあの時のほのかと鈴蘭の様子が重なる。

 達也はデシャブ感をひしひしと感じるが、それを口に出す事はせず、ついには自分に覚悟を決め、席を立つ。

 

 そして机を回って、鈴蘭の隣に立つと、腰を曲げ、手を差し伸べる。

 

 

 「………ご一緒に踊りませんか?」

 

 

 「………はい。」

 

 

 鈴蘭の手が達也の手と重なり、二人は、審査員席から少し離れて、互いにお辞儀した後、手を取り合う。それからどこからかクラシックな音楽が流れ始め、一分間の社交ダンスが始まる。

 

 

 この一分間の間、オーディション会場は舞踏会へと雰囲気を変え、二人の踊りに参加者たちも審査員たちも魅入るのだった。

 

 

 




達也にとっていい刺激?になってよかったね~! そして鈴蘭が達也と一緒にダンスを~~!! 
良いな~~!!

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