魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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 ゲームのイベントにはこんなものかっていうものがあります。

 今開催されているイベを題材にしてみました。


イベント参加!?

 

 

 

 

 

 先日の魔法試合が自信につながり、くろちゃんとちゃにゃんはその後の魔法試合でも、順調な滑り出しをしていった。そして、記憶キューブからの報酬で手に入れた魔法式・コスチューム強化アイテムや魔法アイテム・CAD等の点検、交換等をギルドのホールでワイワイとしていた。

 

 

 「ただいま~。ふぅ、今回のイベントクエストはやばいねぇ~。」

 

 

 「ああ、でもまだこの前のイベントよりはマシだと思えば、何とかなるさ。」

 

 

 「うちは完全無課金で行くから、どうしてもイベント記憶キューブを貯めたいんだよね~。じゃないと、ウルトラレア魔法式が手に入らん!」

 

 

 愚痴を言いながら、帰ってきたミナホとルー、剣崎兵庫は今開催されているイベントクエストから帰ってきた。話を聞くだけでも、かなりの鬱憤が溜まっているらしい。

 

 

 「お帰り~。 どうしたの?そんな顔して。 なんか納得できませんって顔しているよ。」

 

 

 「そうだよ、まさに納得できませんよ!」

 

 

 さらに後からhukaがギルドに帰ってきて話に加わる。どうやらみんな思う所があるらしい。この際だから、イベントクエストについて聞いておこう。いずれは出る予定だし。

 

 

 「イベントクエストって実際に何をするの?優秀なみんなから聞いておきたいな~って。」

 

 

 くろちゃんはみんなの機嫌を損なわないように気を付けて問いかける。それを集まったみんなはよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりの勢いで身を乗り出してきた。

 

 

 「イベントクエストって甘く見ない方がいいよ!」

 

 

 ルーの一言でイベントクエストの概要説明が始まる。

 

 

 イベントクエストは帝国ギルド連盟が定期的に行うイベントの事で、イベントの内容によって趣旨がガラッと変わる代物だ。様々なイベントもあり、体力だけを使ったイベントもあれば、限られた魔法力を使いながら敵魔法師や仲間内と戦ったり、他の魔法師と協力して戦闘したりとその時に応じて求められるものが違ってくる。

 様々なバリエーションでイベントを行う上で、多種多様な面でも対応できる魔法師になれるという売り文句で参加者を募ったりしているが、時には『これは遊びだろっ!?』と言いたくなるものもあったりするのだ。それが、今まさに今回開催されているイベントクエストだった。

 

 

 「今回のイベントは題して”プリンスのカレ食材調達”ってやつなんだ。」

 

 

 「違うよ、フカっち。 ”プリンスのカレ―食材調達”だよ。恋人を食材にしたり、ハーレムしたりしてどうするんだよ~。」

 

 

 フカっちの何気ない間違いをミナホが想像して突っ込む。

 

 

 「そんな事するイベントならとんでもない事になるね、この帝都は。ハハハハっ!!

  まぁ、それはさておき、このイベントはいわゆる”買い物”なんだよね。」

 

 

 「何でも、”俺はカレーというものを作った事もないから買い物ができないのさ。そこで、食材の選び方が分からないから、参謀に任せるよ。”ってことで、カレーの食材を買ってきて、それを持ってきた量と品質でポイントを手にしていき、イベント用の記憶キューブにデータが記憶されるんだ。」

 

 

 「何その、俺様感満載な理由は。」

 

 

 「つまりプリンスは楽をして、カレーを食べる事ができるという事?

  それはあまりにも非常識だわ~。」

 

 

 今回のイベント内容を聞いたくろちゃんとちゃにゃんは呆れるしかなく、イベント運営する帝国やギルド連盟へ怒りや講義を念で飛ばしまくった。

 

 

 「俺達も出たくはないが、一回出ると、個人やギルド別のランキングに自動的にランキングインしてしまうから、最後までしないといけないし、何より次回のイベントは参加表明してからの発表になるからな。取り消し無用のため、出るしかないんだ。」

 

 

 暁彰も加わり、どれだけイベントの内容に高低差があるが、思い知ったくろちゃん達。イベントに出ようとしていた気持ちが後ずさりする気分だ。だが、希望がミナホの言葉で持ち上がる。

 

 

 「でも明日で今回のイベは終わるし、うちらもそこそこの順位で維持しているし、大丈夫だよ。その翌日にはもうイベが始まるし、今回みたいな後には協力連携戦闘がある可能性があるから参加する価値があると思うよ!」

 

 

 「ほんとう!? ミナっち!」

 

 

 「うん、あくまで予想だから当てにはしないでね。」

 

 

 「それなら、参加する! 手強くても断然力が沸くってもんさ!」

 

 

 まだどんなイベントになるか分からない内に意気込むくろちゃんに、剣崎兵庫が一つアドバイスする。

 

 

 「あ、でも最下位に近い順位は絶対にとってはだめだよ! 場合によってはギルド脱退命令や魔法師のランク下げもあるし。」

 

 

 「「なんと~~~!!」」

 

 

 驚きのあまり、見事にシンクロするくろちゃんとちゃにゃん。

 

 

 「でも、この二人はいい順位を出すと思うよ。それこそ、今回のイベに今から出ても、1000位以内には入るよ。確か5000位ほど出てるから。」

 

 

 「そうだね。 大丈夫だよね。 ぶはははははは!!」

 

 

 冗談交じりで今回のイベの事を話し、みんな今日は解散にしようとしたところ、マサユキが玄関のドアを勢いよく開け、笑顔満面で最悪な報告する。

 

 

 「くろちゃん、ちゃにゃん! 君達、まだイベント参加した事がないって言ってたよね!? だから、イベント参加表明してきたよ! 相談役としての仕事をしてきたから!」

 

 

 「えっと、その参加表明というのは次回のイベントの事だよね…?」

 

 

 おそるおそるちゃにゃんがマサユキに問いかける。そうだと言ってほしいとこの場にいる誰もがそう思った。しかし、運命は残酷だった。

 

 

 「え~、違うよ! 今回のイベント、カレー食材調達の方だよ! 楽しいよね、買い物するだけで、プリンスに会えるんだよ!」

 

 

 この場の全員に稲妻が落ちたような衝撃が走った。そしてしばらくみんな固まった後、無邪気な笑顔を今も続けるマサユキに駆け寄り、怒りを爆発させた。

 

 

 「何てことしてくれたんですか~~!?」

 

 

 「そんな勝手な事をするな! それは有難迷惑っていうんじゃ~!!」

 

 

 「あのイベが何で楽しいんですか~! 日頃から買い物なんてしないのに!」

 

 

 「ていうか、プリンスに会えないからね! プリンスなんていないんだから!」

 

 

 「「「そうなの!!?」」」

 

 

 猛攻撃を受け、杜撰な顔になっていくマサユキは何かなんだかさっぱり分からないまま、ただみんなから縛られ、身包みをはがされ、簀巻きにされ、外にぶら提げられ、夜を明かしましたとさ。

 

 

 なお、くろちゃんとちゃにゃんは寝る間も惜しんで、カレーの食材の調達に出掛け、何とか1000位以内で終了する事が出来ましたとさ。

 

 






 意味不明なイベントがあったもんだ。

 …まぁ、実際にあるんだけど。

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