魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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深雪と似た雰囲気を出した鈴蘭がどんな演技をするのか…。でも、今日は達也視点で。


高まる警戒心

 

 

 

 

 

 

 

 

 鈴蘭が前に躍り出て、スタッフの合図がかかる事なく、そのまま演技が始まった。…というよりは、既に会場中の人達が鈴蘭に引き込まれていたからだ。

 

 洗練された動きで歩み、審査員席の前に来て、そこで止まる。

 

 正確には、ある人の前で…。

 

 その人物に向けて煌めいた笑みを少し首を傾げて窺うようにする。本当なら座っている相手にこんな仕草をすると、少し威圧しているように見えると思うが、これは仕方ない。それに相手の方は、鈴蘭の態度を不愉快だと思うような心の狭い人物でもなかった。寧ろ、「何で俺なんだ?」という疑問が出てくるばかりだった。

 

 鈴蘭は何も言わない。

 

 しかし、鈴蘭が何かを求めている事は、鈴蘭が期待するような視線で見つめる相手には彼女が欲する物が理解できていた。なぜ理解できたのか…。

 それは同じ状況に遭遇した事があるからだ。

 

 

 (困ったことになった…。)

 

 

 心の淵で如何するべきかと判断を誰かに譲りたい気持ちと物凄い警戒心との狭間で悩みながら、鈴蘭の無言のお願いを向けられている相手…………の、RYUであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 深雪と似た面影があったからか、鈴蘭と深雪が重なった事にやっと気づいた達也は、鈴蘭をサングラスの奥から鋭い視線を投げる。サングラスがなければ、どんなに威厳のあり、英才教育を受けたお姫様のように歩く鈴蘭でも直感的に後退りするほどのキレのある視線だ。

 

 達也は、鈴蘭が実は精神干渉系の魔法に優れた魔法師ではないかと、警戒心を最大化させて『精霊の眼』を凝らす。もしかしたら自分自身でも認識できないほどの腕を持つ魔法師ではないかと警戒して…。この世界に”情報”として存在する限り、達也に視えないものはない。だが、達也はそれですべてを視る事が出来ると自負しているつもりもない。穴もあるし、使用するのにも深雪に半分のリソースをしているために十分に視る事は出来ない。その事を知っている…、つまり達也が魔法師である事だけでなく、『精霊の眼』を持つ事を知っている…という可能性も考えられる。

 この任務を遂行する以前に自分の正体を知られてしまうのはまずい。もし達也の想像通りなら、どんな危険に深雪が巻き込まれるか分からないし、正体を知られたとしたら、四葉本家直々に処分の手が回ってくる事もあり得る。

 

 だから、達也のこの警戒心の強さをやり過ぎだとは言えないのである。

 

 

 達也は鈴蘭の動きに注意しながら、『精霊の眼』で鈴蘭の構造を視ていく。怪しい動きや構造があれば、すぐに記録し、人知れずに捕縛するために…。

 

 場合によっては、荒い展開も想定して…。

 

 

 




あれ?なんだかヤバい雰囲気になってきた?

命の奪い合いをしてきた達也には警戒心も相当跳ね上がっているのかもしれないな…。

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